4:休憩室のチョコ
時間ができたら逐次ルビはふっていきます。
えへ、えへへ〜。
今日はニヤニヤがとまらなかった。仕事中はそんな顔できないが休憩室に入り、いざ人の目が消えれば口元はゆるんでしまう。
あぁ、私異常だ。
「おつかれさま〜」
休憩室に入ってきたのは、私と同期の女性店員、佐伯美希。休日もよく二人で出かけたりするし、趣味も合う。そしてとても頼りになる友達だ。
「薫?今日あんたさ〜」
机にチョコをだしながら淡々と述べた。
「なんか顔きもいよ?」
「んな⁉︎」
ば、ばれた〜⁉︎うそ!結構頑張ってたのに!なんでなんで?
私があたふたして顔を隠していたりすると
「なんかいい事あったね?聞かせなさいっ」
さっき私の向かい側に座っていたはずなのにいつのまにか隣にきていた。
さりげなく私の前にチョコを差し出してきたが、それは受け取らず私は話す事にした。決してチョコでつられた訳ではないと無言の訴えをしたのだ。
✴︎
「なるほど、そゆことね」
昨日あった出来事を美希に話すと頷きながらチョコの包みを開け、ぽいっと口に放り込んだ。私も机におかれたチョコを食べる。
美希はチョコを食べ終え、これまた淡々とこう言った。
「好きなのね」
はぁ⁉︎いやいや、ちょっと。それは・・・。
「なに?事実でしょ?」
美希はさらにもう一つのチョコを口に含む。どうなの?と言った表情でこちらを見てくる。
「そりゃ〜今朝、店長に何怒られてたかは知らないけど、怒られた直後にまで軽くニヤけてんだから異常だわ」
「まって!ニヤけてない!」
そんな事はない。決してない、かもしれない。
ちなみにだが、私は昨日本屋に戻るのを忘れそのまま帰宅。夜寝る前、本を読もうと思ったタイミングで搬入作業の事を思い出しやばいやばいと今日出勤してみれば案の定怒られた次第だ。
やっちまった!と叫んですぐに夜だったという事に気付き、慌てて小さな声でやっちまったとか呟くアホな事をしたのはまた余談である。
「ま、なんでもいいからいつかその人教えなさいよ〜」
美希は立ち上がって、チョコのゴミをゴミ箱に捨てると休憩室をでようとした。
私もゴミを捨てようと立ち上がる。
「あ、美希!」
「ん?」
扉を開きかけていた美希に話しかけた。
「今度、この本屋の向かいの喫茶店にいこ!」
なるべく動揺しないようにさりげなく。
「ん、わかった」
美希はそう返事をすると扉を開けてでていく。
「あ〜!まってぇ!」
扉が閉まりきらないうちに私も休憩室をでていった。




