2:最悪の第一印象
ーーーバン!・・・カラン♪
本屋から道を挟んだ向かい側にある喫茶店へやってきた。
特に急いだつもりはなかったが、いつのまにか加速していった足は止まる事をしらずあろうことか店の扉にぶつかる事態に。
ドアノブに上手く手がかけられずまさかの空振りが原因だ。
かるく息を切らせながら、かつ額をさすりながら店内に入った。入るなり凉しい空気が私を包み込んでくるようだった。
私はあくまでも平静を装った。
近くにはありながらも一度も足を運んだ事はない。そもそも私は喫茶店すらほとんど入った事はない。片手で数えられる程度だ。
店内はもちろん凉しく、木材を使った机や椅子ばかりで木の良い香りがする。清掃もきちんとされていて、喫茶店に行かない私でもここは良い店だ、と思う。
ただ・・・。
客が一人もいないのはどうしてだろうか?
不思議そうにキョロキョロしていると、カウンターで本を読んでいたらしい一人の男性店員が目をまん丸にしてかなり驚いた様子でこちらを見ていた。
そりゃそうだ扉に激突だもん。
「あ、えーとすいません。ちょっとドアノブに上手く手がかけられなくて・・・」
頭をカリカリとかく。
第一印象、最悪。
バカな女と思われたぁ。
「い、いらっしゃいませ。よかったらカウンターへどうぞ?」
促されるまま私はカウンター席へ座った。
「あー、紅茶お願いできます?」
「わかりました、そちらから種類をお選び下さい」
私はメニューをなるべく顔の前に持っていき、店員と顔を合わせないようにする。きっと今、顔は真っ赤だ。
そして私はメニューで顔を隠したまま
「だ、ダージリンで」
ぼそりと呟いた。




