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大人ってずるいよ。

作者: ダック

大人はずるいし、意地悪だ。

知っている事を子どもには説明してくれない。

偉そうな事ばかり言うけど、都合が悪くなると、すぐに逃げてしまう。

それに子どもの方が大人よりも優しいんだ。

大人になると、自分が大事になってしまうけど、ぼくらは友達を守れるんだ。

だから、ぼくたちはそんな悪い大人に立ち向かっていくんだ。

大人は本当にずるいんだ・・・・


事件が起きたのは1時間目の理科の授業だった。

授業では先週におこなったアルコールランプの実験についての話をしている。

安全な使い方についての項目をみんなで順番に立ち上がり読んでいる。

先生が読む人を指名している。

ぼくは心の中であたりませんようにと思っていた所、後ろの席のダイキが指名された。

ダイキは立ち上がるが、中々読まない、不思議に思っていると、教科書を忘れていたようで、ぼくの背中をちょんちょんと叩いてきた。

「ごめん、教科書無くしちゃって、見せて」

「うん、いいよ」

僕は振り返り、教科書を貸した。

その様子を見ていた先生は、ダイキが読むのを妨げた。

「どうした、教科書忘れたのか?」

「すみません、見つからなくて無くしちゃったみたいです」

「学校は勉強する為に来ているのだから、教科書とノートくらいはしっかり管理しなさい。じゃあ続きを読んで」

その後は特に問題なく、授業が進んだが、授業が終了後、ダイキは呼び出しを受けて注意されていた。


ダイキが戻って来ると、僕は思わず声をかけた。

「何か言われた?」

「授業中と同じこと、来週忘れたら掃除の当番を1週間多くするって」

「教科書なんて置いていけばいいのに」

「持って帰ってないよ」

「だよな」

「とりあえずオレ教科書は持って帰ってないから、どこかで無くしたとしか考えられないから探してみるよ」


その日の授業が全て終わった。

後ろの席のダイキは休み時間の度に席を離れて教科書を探しているようだった。見つかっていないようで、少しずつ焦っているのが分かる。ダイキは水泳をやっている事もあり、同世代の中では体もガッチリしている。それでいて率先して動くタイプな事もあり、男女問わず人気がある。

その為、周りの人間も一緒になって探している。ぼくも幼稚園からの付き合いという事もあり仲がいいので探しているが、見つからなかった。

一番可能性のあった理科室にも無かった。

明日も理科があるのが皆分かっていたから、だんだんと焦ってきた。

ほぼクラス全員で探しても見つからないとなると、誰かが盗んだのではないかとさえぼくは思っていた。

だが、その考えの前にも、もう1つ案が浮かんでいた。そしてそれが口にでてしまった。

「忘れ物BOXかな」

僕が言葉に出すと、周りがざわざわしてきた。

「それだ!それしかないよ」

「ああ、忘れていたよ」

「早く言えよ」

僕の考えに皆が同調してくれたようだ、周りに安堵感が漂ってきた。

ダイキも宛ができてほっとしているようだった。

けれどぼくは思いついても口に中々できなかった理由も口にした。

「でも、忘れ物BOXの担当って山岸なんだよね」

そう、担当は今日ダイキを叱った先生、山岸先生だった。先生が忘れ物BOXの管理をしているのだから、教科書が届いたら、持ってきてくれるはずだと思っていたから、考えても口には出せなかった。

でもこれだけ探しても見つからないという事は誰かが盗んでいない限り、忘れ物BOX以外は考えられなかった。


とりあえず大人数で行ってもしょうがないのでぼくとダイキで行くことになった。

職員室の中に、忘れ物で持ち主が見つからないと入れられる箱があった、その中にあるものを取り出す時には先生に声をかけるルールになっている。

「失礼します」

ぼくは職員室のドアを開けながら、声をだした。

職員室に足を踏み入れ、奥にある忘れ物BOXを目指した。

ダイキも後ろからついてきた。無くしたら親にも怒られるから不安で仕方がないのか、足取りが重い。ダイキのお父さんの怖さはぼくもよく知っているので気持ちが分かるのが辛い。

だが、先頭を歩いていたぼくは安堵した。箱の中に教科書があった。僕は手に取り裏の名前を確認すると間違いなくダイキの物だった。

そして一つ疑問に思い、怒りが沸いてきたが、まずはダイキに見せてやりたい感情が優先した。

「おい、見ろよ」

ダイキは恐る恐る名前の欄を確認していた。そして2度しっかり確認した後、心底ほっとした表情を見せた。

「よかった、親父に怒られるかと思ってハラハラしてたよ」

「お前の親父怖いもんな、俺も一緒に怒られた時泣きそうだったもん」

「いや、お前泣いてたから」

お互い、ほっとして冗談を言い合う余裕が出たが、まずは山岸に問い詰めなければならない。

あいつがしっかり仕事をして忘れ物に名前がないか確認していれば問題がなかった。

もしくは故意に嫌がらせをしなければ、こんな事にならなかったのに、自分だけ偉そうに説教していた事に怒りを覚えた。

「とりあえず山岸先生に報告しよう」

僕は努めて冷静に言った。ダイキは安堵したばかりなのか、まだ誰が原因で探さなければいけなくなったのか気づいていなかった。

もちろんダイキが一番悪いのだが、2番目は間違いなくあいつだ。

いつも大人は困っている人がいたら助けようとか言っているのに、自分のクラスの生徒を困らせる事をするなんて、何て酷いんだと思ってしまった。

山岸は席に座ってテストの採点をしていた。ぼくらは2人で並んで先生の机に向かった。ぼくは不満もあったので、先生の机につく前には若干後ろに立っていた。

「先生、忘れ物BOXの中に教科書があったので、持ち帰りたいのですが」

「そうしたらいつも通りそこのノートに名前と日付を書いて持って帰ってくれ」

ダイキが声をかけると先生は自分の机の横にかかっているノートを指さして、作業に戻った。

ノートを開くと項目が5つある、見つけた日、場所、発見者、持ち主、取りに来た日、そのうち前3つは埋まっていた。

日付と場所は先週の理科の実験をした日で、やはり理科室、発見者は山岸先生になっていた。


教室に戻ると皆が待っていてくれた。ダイキが高々と教科書を掲げると大騒ぎになった。お祭り騒ぎになっている中、誰かが口にした。

「でもやっぱり山岸仕事してなかったんだ」

この一言をきっかけに山岸の愚痴大会になってしまった。

「あいつ偉そうな事口にする割に何もしないよな」

「そうそう、口だけ口だけ」

「その上、臭いし」

「あいつ絶対風呂入ってないよな」

皆、悪口を言い合い、笑っている。一つのイベントとして今回の事を楽しもうとしているようだったが、ぼくだけは怠慢でなく故意におこなった事を知っていた為、笑えなかった。そして口に出してしまった。

「あいつ、知っていたよ。忘れ物ノートに発見者が山岸になってた」

この一言で雰囲気が変わってしまった。

「マジかよ。あいつふざけるなよ」

「あいつ女子に嫌われてるから、人気のあるダイキを妬んでるんじゃない」

「確かに、あいつ体触っててマジ気持悪いよね」

「私も触られた・・・」

「臭くて気持ち悪いのに近づいてくるなって思うよね」

女子を中心に先生への不満が続出する。僕はこのタイミングしかないと思い、教室まで戻る際に考えていた事を口にした。

「山岸の授業を受けるのやめないか?今回の件に関しては、正直許せない。人に困っている人がいたら助けなさいとか普段は熱く語っているくせに、今回助けてくれなかったじゃないか。クラスのみんなが団結して探しているのに、担任が手伝ってくれないなんて酷いと思う」

普段あまり声を上げないぼくがここまで怒っているのを見て、皆驚きつつも、共感してくれた。


そうしてぼくらは翌日から学校に出席しても授業に参加する事はなくなった。

先生が来ない教室を勝手に借りて、各々の得意教科をみんなで教えあうことで授業をした。そしてこの行為は即座に問題となり、学級会で先生とみんなで話し合う場を作ろうという事が校長先生の案で決まった。


当日を迎えると、先生がまず事情を話してくれると聞いていたが、しばらくは何も口を開かなかった。

「何か質問がある人がいたら聞いて下さい」

しばらく黙っていた後、ようやく口を開いて出た言葉が説明でなく、質問はありませんかという事に皆、不満に思っているのが伝わった。

そうなると女子の中でも生真面目ながら姉御肌なキヨミちゃんがまず、口を開いた。

「先生、どうして教科書の忘れ物があったのに、返してくれなかったのですか?」

冷静な質問だった。先生もこれには答えられない、本当の事を言ってしまえば校長先生も見ているから大きな問題になるとぼくらは確信した。

「どうしてだと思いますか?」

「先生、ごまかさないで下さい」

山岸が子ども相手だからってうやむやにして誤魔化そうとしているのを、タカシが遮った。タカシはクラスでも中心人物の一人で、ダイキとも仲が良かったので、内心怒っているのだろう、声がいつもより大きい。

先生が黙ってしまうと、僕らの声が大きくなった。

校長先生も敵なのか、先生が答えない事を注意しない、そうなると子ども達をどうにか誤魔化そうとしているようにしか思えなくなってきた。痺れを切らしてタカシが声を上げる。

「先生、ダイキにちゃんと謝ってくれ、悪いことをしたら謝るようにいつも言っていただろう」

「そうです、謝ってください」

キヨミちゃんもそれに続いた。そしてさらに周りが騒ぎ立てた。もう収まりがつかなくなるくらいに誰もが先生に怒っていた。

「俺に準備の大切さを教える為ですか」

そんな中1つの声が上がった。ダイキが立ち上がっていつもよりも小さい声で尋ねた。

「ごめんなさい。俺は先生にしっかり説明してもらっていたから、薄々気づいていたんだ。授業が終わった後に、呼び出されただろう。その時に事前に準備ができないと、何をやっても上手くいかないぞ、水泳のようなコンマ何秒で決まるスポーツを頑張ってるのだから、準備をする習慣をつけなさいって言われていたんだ」

周りは一気に静かになった。

「多分、返してくれてそんな事を言われても、俺、気づけなかったかもしれない。でもこんな大事になったらさ、俺が準備をしっかりしていれば、教科書を忘れた事を授業の前に気づく事ができたんだと思う。だから、ごめんなさい」

ダイキはそう言うと頭を下げた。

先生はようやく口を開いた。

「自分の間違っていた所に自分で気づけるなんてお前はすごいよ。俺がお前の年だったら絶対に気づけなかったよ。凄い。みんなにも謝らないといけない、確かに君らのいう通り俺も悪いよ。もっと良いやり方あればよかったのに、思いつかない情けない先生でごめんなさい」

そういうと先生も頭を下げた。教室は一気に冷え込んだ。

しばらく誰も口を開かないでいると、予想外の事態になった。

「そういえば、お前のせいだよな。お前がボイコットしようって言いだしたんじゃないのか」

隣に座っていたヒロキがぼくを名指しで非難した。

ついさっきまで、ぼくは革命家になった気分でいたが、一転して戦犯者になってしまった。

その一言がきっかけでぼくもきっと謝らなければいけない空気になった事は察していたが、周囲の視線が怖くて動けなくなってしまった、その上涙が出てきてしまい、何も言えなかった。もう何も考えたくないと思っていた所で助け舟がでてくれた。

「おい、誰が悪いとか言い出したとか言うべきではないだろう。自分たちの意思で授業に出なかったんだろう。それを一人の責任に押し付けるのは間違っているぞ。そして何よりちゃんと説明できなかった先生が悪いんだから、この話はこれでやめないか」

先生の一言で周囲はぼくに責任を押し付けるのをやめてくれた。要は最後に誰かが責任をとって話を終わらせたかったのだ。

ぼくは惨めな思いをしたが、心底安堵した。


そうしてその話が蒸し返される事がなくなり、数日たった時だった。

3者面談があり、母さんと先生とぼくで話す機会があった。

母さんはボイコットの件を周囲に聞き、先生に謝らねばと思っていて、ぼくは直前まで酷く怒られていた。

ちょうど僕の前のタカシとタカシのお母さんが教室から出てきてしまった。

「ほら、行くよ」

母さんがぼくを無理やり引っ張って立たせる。

嫌々ながらも教室の扉を開けた。

先生は椅子から立ち上がり、どうぞ、と一声かけてぼくらを席に案内した。

「よろしくお願いします」

そう言って僕らが座るのを確認して、自分も座った。

まず口を開いたのは母さんだった。

「この度はうちの馬鹿が迷惑をかけたようで申し訳ございません」

母さんは僕の頭を手でつかみ一緒に下げさせた。

「いやいや、非常に良いお子さんですよ。彼は悪くないですよ。むしろ褒めてあげてください。普段から真面目でルールを守る事の大事さを分かっている子なのに、友達の為にルールを破ってでも動いたのだから、凄い事ですよ」

ぼくはビックリした。てっきり母さんもいる場で注意を受けると思っていたからだ。あの場では何も言われなくても、いつかは個人的に注意を受ける場が作られると思っていたからだ、そして今日はその恰好の場だと思っていたからだ。

「積極性が足りないと心配してたけど、タカシから聞いたよ。最初に立ち上がってくれたのはお前だったんだろう。凄い嬉しいよ。それだけ友達を心配できる子になってくれたのは嬉しい。今回の事でお前が反省する事はないぞ」

その後は普段の生活や授業態度などに触れながら、順調におわった。

母さんは先生に褒められた事でぼくにそれ程注意することなく終わった。

ぼくだけが謝らないまま終わってしまった。

このままじゃいけないと思う。明日の朝に時間をもらって絶対に謝ろうと心に決めた。


そして翌日、先生が時間を作ってくれ、謝る事ができた。もっと冷静にルールの中で戦おうと先生は言ってくれた。

世の中、正しいこともルールや倫理観を守らないと理不尽な事に認められないと説明してくれた。

先生はまだ少し早いかななんて言いながらも、子どもだからといって誤魔化さず、しっかり説明してくれた。

ぼくは借りばかり作ってしまった。

今日の給食はそういえば、先生の好物のカレーだ。ぼくは幸い配膳班だった事も、あり少し多めによそった。

そんな事でしか借りをかえせないぼくはやはり子どもなのだろう。先生は気づいたのか、にこっと笑ってくれた。

やはり大人ってずるいよ。

子どもの前で楽しそうに笑える大人、こんな大人になりたいなって思えるような大人にぼくもなりたい。

そうして子ども大人ってずるいよ。ぼくも早くなりたいと思わせたい。


最後まで読んでいただいた方がいらっしゃたら、時間を無駄にさせてしまい大変申し訳ない気持ちとそれ以上に感謝の気持ちでいっぱいです。ありがとうございます。


何かドン・キホーテ的な作品を書いてみたいと思っていたら思いついた作品です。

またも愚作になってしまいました。

当人達は本気なんだけど、周りからみたら何やってるんだと思われるような人達を書きたかったのですが、実力不足でテーマどこいった状態になってしまいました。プロット意味ない!


第二テーマだった。自分たちは正義だと思い込んで、周りに迷惑をかける話だったのだけど、徹底できなかった気もする。この辺りはもっと書いていって力をつけてリベンジしたいです。


とりあえず登場人物を魅力的にかけるようになりたい・・・

みなさんの作品を見て勉強します・・・・

次は学園乙女ラブコメ物か支離滅裂な感じの素の自分を出せそうな作品に挑戦予定です。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 大人になるとこういった感情を忘れてしまうので、こんな感情私にもあった気がするなと懐かしみながら読ませていただきました。 私はちゃんとした大人になれているのかたまに不安にもなりますが、この作…
[良い点] 前より好きです。 テーマが見えた。 [気になる点] 登場人物に魅力がないのは変わらず。 [一言] 地の文が好きかも。
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