レースの敗北
ども、かつどんでーす。
この小説はレースメインですが主人公はスパイですからね!
明日羅が裏切り者に時間を取られている一方で、レース達は明日羅を攻略する、突破する手段を皆で考えていた。
「というわけでだ、あの絶対防御の天使ちゃんをどうやって攻略する?」
「攻略ってエンさん、あんたああいうのが好みだったのですかい?」
「いや、別にそう言うわけじゃ」
「なぁんですって!」
「ほらー傍観者ちゃんがめんどくなる~」
「大丈夫ですよルッカー先輩、エンさんの彼女なんてあなた以外に務まりませんよ」
「そうよね、今日の夜のベットの相手は私で決定よね」
「ちょっと待て、なぜ勝手に話が決まる」
「それはそうと、あの絶対防御は俺から言えば運命的な奴だな、何がなんでも絶対に防御しやがる」
「全くだぜ、絶対にこの攻撃は当たると思った時に、俺の服の中に潜めてある防犯用具であるパッチんが何故か作動しやがった」
「ああ、だからさっき攻撃してる最中に何もしてないのにいきなりダメージを受けていたのか」
「ナッシングはどうなんだ?一回話し合っているんだろ?」
「もしもし?ナッシングや、君ならあの絶対防御をどう処理する?」
「そういや、ずっと通話状態だったのか…」
「ふんふん、なるほど、おおーそれはすごい」
「どうやら何かあるみたいだな」
「仕方ない、ここはナッシングの意見で…」
「みんな聞いてーナッシングにも全く思い付かないみたいだよ」
「「なんでやねん!」」
「なにこのダブル関西弁ツッコミ」
「いや、ちょっと待て!だったら何でエンさんは驚いていたんだ?」
「えっ、だってナッシングにも対処出来ないんだぜ?驚きだろ?」
「まぁそうだな、いや、それならその反応をしてくれよ」
「普通の反応をしただけなんだが、あ、でも試してみる価値はある事は言ってたよ」
「やっぱり何かあるのかよ」
「うん、絶対防御ならではの攻略法だよ」
明日羅がスパイを探していると、
「どりゃーーーーー」
殺し屋がスケボーに乗って突撃して来た。
これはつまり、
「絶対防御なら絶対に防御するって事だろ?だったら防御してもダメージを与える様な突撃をすればいいって言うのがナッシングの答えさ」
そしてキラーは得物のナイフを明日羅に向けて直進してきた。
だが明日羅は普通に横に避けた。
「うえええええええええ!!」
キラーとそのスケボーは真っ直ぐ直進し、壁にぶつかった。
「そういやあの天使ちゃんの絶対防御って攻撃してなくても攻撃しようと思った瞬間に何か邪魔が入ったりするんだよな」
「あ、それは確かに、スパイは縄を巻けなかったし、俺のハサミもつまずく事で上手くかわされたな、そして実際に今キラーがあっけなくかわされたし、そしてあっけなく気絶してやがる」
「思いっきりスケボーを押してスピードをつけたからな、それにあいつブレーキのかけ方知らなかったのか」
「どうする、こちらも一人やられたぜ?何か突破口ないのか?例えば絶対防御が効かないという例外の存在とかさ」
「それならあっ!………やっぱないね」
「おいエンさん、明らかに何か思い付いただろ」
「いやいや、何でもないよ~何も思い付いてないよ~」
「そういや兄貴ならあの絶対防御は適応されないらしいね」
「おいー!弟よ、何故それを知っている?」
「えっ、今ナッシングから聞いた」
「ナッシング~」
「そうか、だったら…」
「ちょ、ちょ!やめてー」
と言うわけで、ピリオドがスケボーをとって来て、そこにエンをくくりつけた。
「よし、完成だ」
「うおーい!まさか?まさかだよね!」
「五月蝿いな、いくぞ」
「ちょっ!待っ!」
エンの反抗も虚しく、エンがくくりつけられたスケボーは勢いよく明日羅に向かって直進した。
「うあーーーーーーー!!!」
そして、明日羅は横に移動してこれを避けた。
「でーすーよーねーーーぐほぉっ!」
エンはそのまま直進して壁にぶつかり、気を失った。
「何!絶対防御が神の力ならばエンさんの突撃は当たるのではないのか⁉」
「えーと、つまりこれは…」
「どうやら普通に実力で避けたみたいね」
「ありかよ、いやよくよく考えるとそれって普通だよな」
「確かに、ってそういや狙われている本人のエンさんを敵の目の前に晒して大丈夫なのか?」
「ああー今まさに天使ちゃんが剣をエンさんに振りかざそうとしてるね」
「ってゔぉい!」
見ると、明日羅は武器である聖剣でエンの首を斬ろうとしていた。
そして明日羅が聖剣を振り下ろすと、
「きゃっ!」
いきなり大はさみが横から飛んで来て、聖剣を弾いた。
「昔、漫画で自分へのダメージを他の所に押し付けるって能力を持っている奴は自分以外へのダメージは他の所へ押し付ける事は出来ないってのを読んだ事があるが、どうやら絶対防御にも同じ事が言えるな」
明日羅が聖剣を取りに行っている間に大はさみを投げつけた本人であるピリオドが昔を思い出しながら語った。
「絶対防御と言ってもそれは自分にだけだ、だからそこの沙汰はいきなり死んだし、その聖剣は弾かれたんだ」
「くっ」
明日羅にとってピリオドの言葉は深く刺さる言葉であった。
明日羅の心に刺さったのは絶対防御が完璧ではない事ではなく、沙汰を守れなかった事である。
「だが俺たちはお前を倒す事は出来ない、と言うわけでにげる!」
「えっ?」
「行くぜお前ら!」
「え、ちょっ!」
「スパイ!エンさんとキラーをよろしく!」
レース達はいきなり堂主館の奥に向かって走り出した。
明日羅が倒れてる二人を思い出して見ると、スケボーにくくりつけられたエンの身体にさらに縄がくくられていて、それをスパイが引っ張っていた。
キラーの身体はすでにそこにはなかった。
そして明日羅が動揺している間にもレース達は奥に走って行き、明日羅だけがその部屋に取り残された。
「えーと…あっそうだ!」
明日羅は奥で囚われていると言われた内気の事を思い出した。
「内気様を助けに行かなければ、絶対勝利の内気様なら大丈夫でしょうが、助けに行くのが私の役目ですもの」
明日羅はレースと戦って少し傷ついた心を元に戻す様に、自分に言い聞かせるように独り言を呟いた。
明日羅が内気を探すために奥へ向かうと、こちらに向かう内気とばったり出会った。
「内気様!ご無事でしたか‼」
「いやいや、無事じゃねえよ、かなり長い時間四つん這いの態勢にさせられてたんだぜ?」
「囚われていると聞きましたが」
「囚われているね、確かにあれは囚われているだ、なんたって動けなくされたんだからな」
「そんな事が…しかしそれでも逃げ出せたのは流石と言いましょうか」
「あん?流石だぁ⁉これはあいつらが解放したからここまでこれたんだよ」
「えっ、あいつら…というのは」
「レースだよレース、初めは俺を捕まえた下手って野郎一人だったんだが、いきなり全員走って来てよ、そしたら解放したんだよ、そういや生邪はなんかスケボーにくくられていたが」
「なるほど、奴らに逃がされたのですね」
「てめぇ、後で覚えておけよ」
「申し訳ございません」
「全くよーこんなの負けじゃねえか、絶対勝利の神の俺が負けるなんてあると思うか?」
「ありえませんね、何故でしょう」
「それがよ、あいつらにもそう言ってしまったんだが」
「彼らは何と」
「俺たちはここから逃げる、君達がここを占領したんだ、だから君達の勝ちだってよ、生邪がいなけりゃ俺たちに勝ちも負けも無いだろうがよ」
「多分これは逃げるから勝ちは譲る的な感じでしょう」
「はあー全く拍子抜けしたぜ、こっちは一人殺られたっていうのに、向こうはほとんど無傷じゃねえか、それで勝ちってか」
「まぁ、それよりどうします?帰りますか?」
「そうするしかねえだろ、なあ明日羅」
「なんですか?」
そして内気は言った。レースと戦った感想を…
「俺はもう奴らと戦いたくない」
実は絶対防御は絶対勝利に都合が良かったりする。(作者にとって…)