レース強襲 裏
ども、かつどんでーす。
storyシリーズが何か増えちゃいましたね~
afterはどうするのかって?多分しばらく更新はないと思います。
ホームルームが終わると男はカバンを持ってトイレに向かった。
トイレの個室に入り、携帯を取り出した。
携帯の画面の表示される文字を見て、
「傍観者さん、配置完了、下手任務完了と」
と呟いてトイレを出て、一階の別校舎へ続く廊下へ向かった。
別校舎へ続く渡り廊下に着くと、そこに一人の男子生徒がいた。その男子生徒の制服はこの東尾乙高校とは別の制服だった。
「あ、裏切り者先輩、一応僕の任務は完了です」
「そうみたいだなアンダー、ご苦労」
と言って男はカバンからこの東尾乙高校の制服の学ランを取り出し、アンダーに渡した。
アンダーは着ていた学ランを脱いで渡された学ランを羽織ると、脱いだ学ランを男に渡した。男はそれを受け取り、カバンにしまった。
「アンダー、お前は屋上へ行け、そこにルッカーがいるから合流して連絡係りをしておけ、俺も後で向かう」
「了解!」
アンダーが屋上へ向かうと男は二階のトイレへ向かった。
トイレに行くと我らレースのリーダー、エンがいた。
「ってなぁんであんたがここにいるんですかー!」
「えっ?だって漏れそうだったし、戦いに行く前に用を足しておきたいじゃん?」
「それを何故この学校でやっているんですかねえ?家でやったら良かったんじゃないですか?」
「ごめんごめん、遅刻寸前だったから…」
「はぁ…まぁ、仕方ないですか…」
「ん、じゃあ行って来るね」
「行くってどこに?」
「えっ?向こうの校舎」
「何故あんたが向こうに行く必要があるんです?」
「え、そりゃ仲良くなる為には当事者の僕が居なくちゃ始まらないでしょ」
「いやいや確かにそうですけど…って仲良くなるってやっぱり本気なんですよね?もちろん本気だと思ってますけど」
「安心して、君の思っている通りだから」
「しかしリフと鏡は戦う気ですよ、あの二人は変なのを写さない限り大丈夫ですが、特にあんたの弟の最後と最終はガチで戦うと思いますけど…」
「大丈夫大丈夫、そのために無意味を向こうに付けたんだし、それに堂土達が戦う相手はあの天使だし」
「確かそうですけど、もしこっちが勝ったらどうするんです?」
「その時はその時さ、あの是碓って奴も殺しちゃえば俺を殺しに来る奴はいなくなるだろ?」
「それこそ上手くいかないと思いますけどね」
「だから僕が向こうの校舎に向かうのさ、こっちが勝ちそうだったらその場を無茶苦茶にしちゃうよ」
「はぁ、まあ頑張って下さいね」
「うんありがとう、じゃあ行って来るよ」
そう言ってエンはトイレを出て行った。
しかしすぐに戻って来た。
「ねえ!向こうの校舎ってどう行けばいい?」
「そこの階段を降りろ!」
「ひぃ!スパイなんか怖いよ」
やっとエンが別校舎へ向かうと、男は携帯を取り出し、屋上にいるルッカーに電話した。
「もしもし?」
「もしもしルッカーさん、戦況はどうです?たった今エンさんが向こうの校舎に向かいましたが」
「戦況はそうね、一階は有利、二階は不利って感じね」
「二階が不利…ですか」
「ええ、何か変な騎士の鎧が動き出しちゃってね」
「あ、あれですか、でもあれは」
「ええ、あなたが念のために縄を結んでいたからそれを殺し屋が利用したけど」
もしキラーが男が結んだ縄で動きを止めたなら確実に仕留められるだろう。しかし利用したにも関わらず仕留められなかったのだ。
「どうやらあの騎士の鎧中は空っぽの様ね」
「空っぽ?」
「ええ、その後キラーは窓から落とされて戦闘不能よ」
「へぇあのキラーを…」
「で、後は五人のナッシングの内一人をさっきやつけたわ」
「………はぁ、そうですか(何だろう、何か俺たちの反応がおかしい様な気がする)」
「んで、ダーリンはどこへ向かったのかしら」
「多分向こうの校舎の一階ですよ、ってかルッカーさん、ダーリンって…っ‼」
その時男は窓を見た。
「どうしたの?ダーリンは私のダーリンだからダーリンなのよ」
「ルッカーさん」
「?」
「気を付けて下さい、俺もそっちに行きますから…」
「へぇ、何かが来るのかしら」
「ええ、一瞬ですが何かが屋上に行きました」
「そう、ってか来たわ」
そこで電話が切れた。
男はツーツーとなる携帯に語りかける様に、
「そうか…」
と呟いて、窓の外を見た。
先ず、この校舎は四階建てだ。そして男がいるトイレは二階である。そしてさっき窓の外に一瞬だけ見えたのは上に向かう何かである。
つまり、何かが地上から四階までジャンプしたのである。
「あの身体能力は…いや、分からんな」
男は解析しながらも階段を走っていた。向かう先は屋上である。
屋上に着くと、案の定アンダーが捕まっていた。
そして、アンダーを捕まえているのは長身でスーツ姿の女性であり、ルッカーがその女性に質問をしていた。
「私はこの学校で理事長の秘書をやっている荒木 静香という者だ、まぁ知っといてくれよ」
「秘書の荒木 静香さんね、じゃあ三つ目の質問、アンダーを捕らえてどうする気?」
(どうやら後ろの俺には気付いてないか、まぁ気配をけしているから当たり前だけど、そしてもう逃げているアンダーにも気付いてないな)
男はそのまま足音を立たせない様にして女性に近づいた。
「別に捕らえた訳じゃねえぞ」
(捕らえた訳じゃない、そして今捕らえてもいない!なんちゃって………首に縄を巻いておこうか)
男は慣れた手つきで女性の首に縄を巻いた。
縄は方端が輪っかになっており、もう片端を輪っかに通せば簡単に巻ける様になっている。
ルッカーは質問を続ける
「そう…じゃあそのアンダーはどうしたのかしら」
「はあ?何を言って…⁉」
そこで女性はやっとアンダーが自分の腕から逃げ出している事に気付いた。
(さすがアンダーと言うべきか、触れている相手からも気配を消す事が出来るのはレースの中でもあいつだけだな)
男は感心していた。
すると、そのアンダーが、
「いいっすよ、スパイ先輩」
と、合図して来た。
男は女性の首に巻き付けた縄の先を思いっきり引っ張った。
「うお!てめぇ」
女性は踏ん張ろうとしたが、今度は足が動かせなかった。
「にゃろう、おっ⁉」
それは、ガムテープによって女性の足が固定されていたためである。
女性は態勢を崩して四つん這いの態勢になった。
その瞬間アンダーが女性の腕を持っていたガムテープで固定した。
アンダーのガムテープは粘着力最強の特性を持っているが、外側からめくれば簡単に剥がれる様になっている。しかし、今の女性の様に両手両足を固定していまえば剥がす事が出来なくなる。
(まあ、それでも剥がす事は簡単に出来たりするんだがな)
「くっ」
女性は力任せにガムテープを剥がそうとしたがガムテープはビクともしなかった。
「無駄よ、そのガムテープは外側からでないと剥がれないわよ、例え荒木の一族でもね」
「⁉おめえ荒木一族って知ってるのか?」
「名前くらいだけどね、友達に一人いるからね」
「ほおう、そりゃ面白え」
「それより私が知ってる理事長秘書って大人し目の性格って聞いているんだけど、これは完全に戦闘狂よね」
「いや、俺の知っている理事長秘書はもっと大人しい人だ、化けの皮でも剥がれたか?」
「戦闘狂とは失礼な、私はただ面白い奴と戦うのが…えっ?」
そこで男は女性、荒木一族の女性と目が合った。
(お、流石に俺の存在に気付いたか、だが今ので完全に俺の条件が満たされたな)
荒木は驚く様にこっちを見ていた。
「もしかしてお前ら気配を消す能力があるとか?」
「能力なんてないよ、ただちょっと得意なだけ」
「得意?能力じゃないのか?」
「ええ、私たちはこの世界の住民、特にディメンションハンターってわけでもないわ」
「そいつは面白い、私はこの世界の住民に負けかけているのか、もしかしてだが、さっき私に質問する時にこいつの事を聞かなかったのはこいつから意識を反らすためか」
「正確には違うけど、やってる事は同じだしそれで正解ね、と言うわけでそこでしばらく大人しくしてくれないかしら、ちょっと向こうの戦況が危ないみたいだし…」
「いや、あんたらにゃ向こうの支援をさせねぇよ」
「ん?」
「なあ、あんた言ったろ?例え荒木一族でもこのガムテープを取れないって、じゃあ荒木一族の、いや、私たちの世界の能力もちゃんと知ってるよな!」
「これは!」
荒木の身体中から黒いオーラが見えた。
(いや、オーラじゃねえな、あれをオーラだと一瞬でも思ってしまうのはレースくらいか、しかしあれなら多分)
男は横にいるルッカーとアンダーを見た。
「アンダー、ルッカー先輩、すいませんが、裏切らせていただきます」
その言葉はその場にいる誰にも届かなかった。
そして男は荒木が黒いオーラの様な虫を使ってガムテープを剥がしている間に屋上から姿を消した。
屋上から校舎の中に入る扉の向こうで、男はルッカーとアンダーが腹パンされるのを聞いた。
「ちっ、一人逃がしたか…」
(うわ、これ探しに来るパターンじゃん、あ、でも俺を見つける事は出来ないか…だって、見られたし)
アンダーが気配を消す条件、それは相手に見下されている事である。そしてルッカーが気配を消す条件は相手に見られていない事、視界に入れられた時点でその人物から気配を消すことが出来なくなる。
そして男、スパイの気配を消す条件、それは見られる事である。さらにスパイは縄の気配を消す事、相手に気付かれない様にする事が特技であった。
「あ、もしもし?みんな、ルッカーとアンダーがやられたよ」
男は別校舎にいる仲間全員に連絡した。
こうしてレース達の戦いは一気に終息へ向かった。
そして、この時男は完全に油断していた。絶対に見つからないだろうと思っていた、気を抜いていた。
そのため、後ろから扉が飛んで来るとは考えもしていなかった。
男がその扉、たった今男が通って来た屋上と校舎を繋ぐ扉に気付いたのは背中に当たった時だった。
「うぐっ⁉」
男はそのまま扉の下敷きとなり、頭に扉の衝撃を受けて気を失った。
その後、後ろから女性の声が聞こえて来た。
「ちっ、もう見えない所まで逃げやがったか、おもしれぇ追いついてやる」
そして女性、荒木はまっすぐ走って行った。
もちろん男は気を失っていたため何が起こったか知らなかったし、荒木は扉の下にいる男に気付かなかった。
こうして男はレースと神の戦いから脱落した。
次回は少し時間が戻ります。
大体一日くらい…