レース急襲 裏
ども、かつどんでーす。
center story連日投稿最終日に間に合った…
そして明日も投稿します。
その男は東尾乙高校の三年生であった。
その日、その男はいつもより一時間早く登校していた。
男は自分の教室に荷物を置くなり、すぐに生徒会室に向かった。
生徒会室には生徒会長の双葉 葵がいた。
「あら、いつもより早いじゃない」
「ちょっと野暮があってな」
「で、ほとんど予想出来るけど、何の用?」
「向こうの校舎に行く許可証を貸してくれ」
「無理よ」
「即答だな」
この学校には二つの校舎がある、こちらの本校舎は一般の生徒が通学していて、別校舎は昨年より特待生が通学している。
本校舎の生徒は別校舎に立ち入り禁止であり、別校舎の生徒は本校舎に立ち入り禁止であるため、二つの校舎の生徒が関わる事は滅多にない。
「即答も何も私には別校舎への立ち入り許可を出す権利は無いわ」
「そうか」
「あ、でも、そこに許可証があるのはあるけど、私が渡すって事は出来ないわ、あなたが持っていくのは勝手だけど」
「そうか、助かる」
「私が渡したってことじゃないからね」
「分かってるさ、これは俺が勝手に持ち出した物だ」
そう言って男は生徒会室を出た。その後男が向かったのはもちろん別校舎である。
別校舎の入り口には特にセキュリティとかは無いため簡単に入れた。
許可証を貰ったではなく、勝手に取りに行ったのは念のためだ。もし、教師に見つかればそこで尋問される可能性がある、そこでこの許可証を見せれば見逃してもらえるかもしれない。そのために許可証が必要だったのだ。
しかし、新学年が始まったのは一昨日であり、さらにはこの別校舎の生徒は本日が初登校になるため、教師に見つかったとしても本校舎の生徒だと気付かれない可能性もある。
それでも念には念を、である。
別校舎に入ると、先ず一階の廊下を通った。この一階は二年生の特待生の教室が一室だけある。
「まだ誰も来てないか…」
男は教室を少し覗き込み、そう呟いてから廊下から外を見た。
廊下の外は本校舎がある。
別校舎は二階建てに対して本校舎は四階建てである。
「ここを狙うにはやっぱり本校舎からだよな、しかし、本校舎には生徒がいるからな、やっぱりあそこか…また後で行くか」
別校舎の廊下を歩いて行き、二階への階段に着いた。
二階には特待生の一年生、新入生の教室が一室だけある。
「ってかこの別校舎には職員室と教室で合計三室しかないのか…何故二階建てにしたんだ?」
階段の途中で振り向いて一階の窓を見てみると、ふと、ある事に気付いた。
「あれ?この窓は防弾ガラスじゃないのか?本校舎は全て防弾ガラスなのに」
この東尾乙高校の本校舎の窓は全て防弾ガラスであった。
そのため、別校舎も全て防弾ガラスだと思っていたが違った。
「別校舎は防弾ガラスではないと…」
全て防弾ガラスだと思っていたため、ここで男は勘違いをしてしまった。
別校舎の一階の窓が防弾ガラスでなくても二階の窓が防弾ガラスではないという事はない。男はそこに思い至らなかったのだ。
男が二階に上がると、男の先ず男の目に入ったのは騎士の鎧である。
「何だ?あの物騒なものは…」
騎士の鎧は教室前の廊下に立っていて、まるで教室を守るかの様にそこにあった。
男は少し君悪いと思いながらも、教室を覗き込むと、二人の生徒がいた。
「もう、登校しているのか、早いな」
と言ってもそろそろ本校舎の生徒は登校して来る時間である。
教室にいる生徒の様子を伺うと、女子生徒一人と男子生徒一人がいるのかと思ったが、制服は二人とも女子生徒の制服だったため、女子生徒が二人だと分かった。
「いわゆるボーイッシュか」
そして二人の会話を盗み聞きして見ると、
「高山様、本日の予定は…」
「別にいいわよ朝に一回聞いているわ」
「いえ、しかし、朝の高山様は少し寝ぼけていたかと、念のためです」
「寝ぼけていた?私が?」
「はい、朝起こしに行くといきなり…その…き、き、」
ボーイッシュの生徒が少し顔を赤らめていた。
もう一人の生徒は少しイタズラな笑みを浮かべた。
「き?何なの、そのきって?」
「えっと、だから、その…」
「何かしら」
「き、き、キス!キスして来たじゃないですか!」
「はい、よく言えました」
ボーイッシュの生徒が完全に顔を赤くすると、もう一人の生徒はその頭を撫でた。
(何だ、最高な話か)
「か、かわせたから良かったですけども!」
「ほんと、残念ね」
「何がですか!」
男は教室の外で少し興奮して聞いていた。
どうやらボーイッシュの生徒はもう一人の生徒の執事とか、いやこの場合はメイドか…まぁその様な部類だろう。
男はもう少し聞いていたかったが、そろそろ生徒が登校して来る時間のため、廊下を歩き出した。
「あ、そうだあの騎士、もしや中に人がいたりしないだろうな」
男はそう思って騎士の鎧のとこに戻った。
そして、持っていたしめ縄を首に巻き付けた。
「一応他の所も縛るか…」
男はさらに四本のしめ縄を取り出し、両手首、両足首に巻き付けた。
その後、男は別校舎を去って行った。
男が別校舎を出て、本校舎に戻ると、本校舎に入った所で一人の女子生徒がそこに立っていた。
「向こうの校舎に行ってたの?」
「酒々井か」
「質問に答えなさい、向こうの校舎で何をしていたのかしら」
「ただの探検だ」
「ふーん」
酒々井は不満そうな顔で男を睨みつけた。
「安心しろ、今回はお前たちは関わる事はない、と言うより、関わらないでくれ、その方がお前たちのためにもなる」
「そう、じやあそうしてもらうわ、でももし芦亜に何かあったら…」
「その芦…財府の事なんだが、さっき寂しそうな目でお前を探していたぞ」
「何ですって‼こうしちゃいられないわ!すぐに行くわ!待っててね!芦花ー!!」
酒々井は男との会話が終わる前に走って行った。
男はそれを見て、
「俺は今別校舎から来たのに芦花がどうしてるかなんて分かるわけ無いだろ、まぁ芦花も酒々井に会いたがっているだろうからいっか」
男はそう呟いてから今度は屋上に向かった。
屋上に着くと、男は別校舎を見た。
「やっぱり狙うならここからだな」
男は手を拳銃の形にして別校舎の一階と二階を狙う真似をした。
もちろん何も起きない。
その後男が別校舎の入り口を見ていると、別校舎の生徒らしき人達が通学して来た。
「コチお嬢様、靴は下駄箱でお履き替え下さい」
「うむ、分かっておる」
「コチお嬢様、教室は二階です、階段では足を滑らせないようにお気を付け下さい」
「…分かっておるわ」
「コチお嬢様、靴を脱いだ後はこちらの上靴を履くのですよ」
「お主さっきから私を馬鹿にしてないか?」
もちろんそんな会話は屋上にいる男には聞こえないが、その二人の行動だけで二人の関係が大体は分かった。
「別校舎にはお嬢様とその執事またはメイドという主従関係の奴らが二組もいるのか…もしかしたら他にもいるかもしれないな」
と、呟いて男は自分の教室へ向かい、朝のホームルームを待った。
hide storyはcenterと同時進行で進めます。ただ、時間軸がバラバラになりますが、投稿した順番に読んでいただけると幸いです。