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世継ぎの姫君と花婿  作者: 如月瑠宮
第一章
6/25

 リンファは目覚めた。柔らかな朝日が降り注ぐ。

(良く眠れた気がする)

 そう思ったリンファは起き上がろうとして、異変に気付いた。

「・・・・・・」

 リンファの腰には何かがある。それが何であるか気付いた瞬間、思考は停止した。

(なっ・・・!?)

 体が硬直するのがリンファ自身にも良く分かる。

 混乱と驚愕が占めていく。何とかしようと頭は思う。だが、身体は思う様に動かなかった。

(何で・・・隣で寝てる?ベッドは二つ有るだろ!)

 リンファは何時の間にか隣で、しかも、自身の腰を抱いて眠るイオンによって困惑の淵に立たされている。

 眠る時は別々だった筈で・・・いっその事、部屋も別の方が良かっただろうか。リンファは考えるが、自分達は余裕が無いのだ。

「・・・イオン」

 すやすやと眠るイオンに呼び掛ける。しかし、眠りが深いのか反応が無い。

「・・・・・・」

 リンファは腕を振り上げる。ただ、無言で。

 考える事は放棄していた。握った拳をイオンの頭に振り下ろす。

 ・・・リンファの耳に良い音が聞こえた。




 宿から出たリンファの後ろを涙目のイオンが歩いている。

 その様子をこっそりと見たリンファは溜息を吐く。

(やり過ぎたか?でもなぁ・・・調子に乗らせるのは・・・)

 今後の彼への接し方を決めかねる。

 イオンを婚約者に似ていると思っていた。実際には全く違うのだと、今、痛感したリンファである。

「イオン」

 仕方無いと、声を掛ける。笑顔を向ければ、飼い主に許しを貰った犬の様に笑う。

 一緒に過ごす事になるだろう相手といがみ合うのは得策では無い。仕方が無いのだと、リンファは自分に言い聞かせた。

 ほだされていると思いながら。

 そして、二人は王都を出た。外から王都を見るのは二度目だ。リンファは二度と見ないと思っていた景色に見入る。

(生きては出られないと思っていたんだが、どうなるかは分からないものだな)

 リンファは一先ず無事に王都から出られた事を安堵した。

「リンファ」

 イオンの声で自分が立ち止まっていた事に気付く。

「すまない・・・行こうか」

 リンファは振り払う様に王都から去ったのだ。後悔を残して。


「・・・リンファは本当に・・・」

 小さな呟きは誰の耳にも入らない。ただ、ぽつりと零れた。




 王都から一番近い街に向かう。そこは、別名を「水晶の森」とされる程に水晶が採れる。勿論、ただの水晶では無い。

「クリスティナ、魔法水晶が大量に採れる唯一の場所、か・・・」

 リンファは先に見える透明感のある輝きに呆然とした。

 魔法水晶の放つ光は遠くまで届くと言われる。しかし、それは誇張だと思っていた。魔法水晶と言う、一般人・・・魔法との関係の薄い人々の持つ憧れからの。

 今、リンファはそれが誇張で無い事を知った。

 輝く街にリンファは向かって行く。

 だが。

「遠いな・・・」

 遠いのだ。一番近い街でも、かなりの距離が有る。

 小国出身のリンファには初めての距離だ。

「そうだね。セイラムは広いから」

「・・・・・・」

 リンファは湧き上がった苛立ちを抑えた。

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