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世継ぎの姫君と花婿  作者: 如月瑠宮
第一章
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逃亡生活

「え?」

 目の前の光景にリンファは絶句する。

 自分は確か、王宮の中に居た筈なのだ。しかし、彼女が立っているのは外側・・だった。

「・・・此処は?」

 リンファは傍らに立っているイオンに問い掛ける。

「そうだなぁ・・・特に決めてた訳じゃ無いから・・・とりあえず、外かなと思って出ちゃったし」

「・・・つまりは、分からないんだな」

「ごめんね?」

 思わず、息を吐き出す。リンファは脱力するのを抑えられなかった。

 本当は分かっているのだ。彼が心を砕いてくれたのだと。本来なら、彼がこんな事をする必要など無いのだ。

(・・・しかし、何処か分からないのは困る)

 恐らくはイオンも町には詳しくないだろう。リンファは言わずもがな、分かる筈が無い。

 そんな状況で、何時まで持つだろう。

(とりあえず、逃げるしかないか)

 リンファはセイラム王国にとって、厄災になってしまった自覚はある。直ぐに、捜索の手が伸びるだろう。

 せめて・・・イオンは何とかしなければ。リンファは決意を胸に逃亡生活を始める事となった。




 まずは王宮から離れる事にした。イオンが魔法・・を使えるとは言っても、それはセイラムの王族には当たり前の事。彼らに見つかる可能性は高い。

 イオンの魔力がどれ程の物なのかは分からないが、強くても数が多いセイラム側には敵わないと思う。

 一度、王宮を振り返る。あそこにはまだ、自分に付いて来てくれた侍女達が居る。

 しかし、戻る事は出来ない。

 リンファは小さな声で侍女達に謝った。聞こえたのはイオンだけだろうが、リンファの耳には侍女達の呆れながらも、仕方ないと笑う声が聞こえた。

「・・・イオン、すまない」

 謝罪にイオンは笑うだけ。その笑みはリンファの荒れ出しそうな心を落ち着かせる。

(自分にも、魔力が有ったなら・・・)

 そうだったなら、自らの力で逃げ出せた。誰かを巻き込む事も無かったのだ。

 ・・・ロヴァーナが花嫁に指名されたのも、魔力が理由だった。魔力が強かったが、自ら扱う事は出来なかった妹。そういう者は子供にその魔力を引き継げる。

 リンファは弱くても、僅かながらに扱う事が出来た。火を灯す、水を出す程度には。でも、所詮はその程度だが。

 先程、イオンがしたのは空間を飛び越える物。遥かにリンファを凌駕している。

「イオン」

 僅かに恐れを滲ませ、彼を呼ぶ。

「お前は、何者なんだ?」

 イオンはリンファの疑問に答えをくれなかった。


 日がその姿を半分隠した頃、二人は宿を見つけ出した。歩き続けた身体は疲労を訴える。

 リンファはベッドに入ると直ぐに眠りに就いた。

 その頃の王宮は、静かな怒りに満ちて・・・何時もより、暗く見えたと言う。




 リンファが王宮から姿を消した後、侍女達は安堵していた。大切な姫君がこの魔窟から逃れたのだ。

 後は、彼女達が逃げられたら良いのだが・・・その必要は無かった。王宮の者達は何故か、彼女達の存在を忘れていたのだ。

 三人は話し合った。

「ねぇ、逃げた方が良いかしら?」

「そうね・・・でも、折角だもの、気付かれないのだから・・・ね」

「じゃあ、見て行きましょう。役に立つ事も有るでしょうし」

 三人は目の前を何度通り過ぎようと、耳元で大声で歌ってみても、何をしても気付かれなかったのを利用する。

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