愛しい妹
やはり止められなかったかと彼女は嘆く。それでも、愛しい妹だと彼女は立ち上がった。
「諦める気は無いのよ」
私をしつこいと言ったのは貴女よ。そのしつこさを味わいなさいねと彼女は笑みを浮かべた。その瞳はここには居ない妹だけを見ている。
「ふふ・・・」
さぁ、終わりにしましょう。貴女の苦しみを。
恐怖に彩られた目には慣れている。その目を向けてこなかった人間は極僅かで母親にさえそんな目で見られていた。朧げな母の顔を思い浮かべて彼は笑う。これが当たり前なのだと思わなければ生きていけなかった。唯一、そんな目を向けなかった存在がリンファである。
「君は君が望むままに動けば良い」
そんな君を守るのが役目だから。イオンの言葉にリンファは息を飲む。自分の望むままに、それは自分勝手過ぎるのではないか?そう思ったがそれを問う事は出来なかった。リンファは分かっている。自分が今、何をしなければならないのかを。
だから、この不安で逃げそうになる背を押してくれるのは嬉しかった。
(私は・・・どうしたい?イオンの手を借りてでも何を成したい?)
「イオン・・・私は・・・」
(私は、誰かの役に立ちたいのだ)
リンファの視線に答えるようにイオンは頷く。その優しさに甘えよう。リンファは決心する。甘えてばかりだが、自分を曲げる事が出来ないのが彼女だった。そんな彼女の傍に居てくれるのはイオンだ。
「手を貸してくれるか?」
「喜んで」
さぁ、行こうか。お姫様。差し出された手を取って、リンファは前を向く。彼女は前に進む事しか知らないのだ。
「私は諦めたりしない」
決意の言葉に柔らかな笑い声がした。
「本当に素晴らしいわ」
「貴女は・・・何故、ここに・・・」
リンファの信じられないといった声に彼女は微笑む。美し過ぎる微笑みに息を呑むリンファを尻目に彼女は歩を進める。
「本当に貴女が来てくれて良かったわ」
貴女の妹では出来なかった事でしょう?だって、彼女は甘やかされてきたんだものね。貴女の様に後を継ぐような必要性が無かったから。だから、ダメなのよ。
「貴女は自分で立てるもの」
「・・・それが何の意味があるんだ」
艶やかに笑う彼女、ツィツィーリエはゆっくりとリンファに近付く。そして、細く美しい指先でリンファの顎を持ち上げる。落ち着かない気持ちになったリンファは居た堪れなくなって目を逸らす。それさえも彼女は楽しんでいる様子だったが。
「怒らないで頂戴ね。貴女の妹はお子様なの」
甘やかされて育ったのね、そうね、可哀想だもの。




