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「イオン」
リンファのイオンを呼ぶ声は変わらない。その事実にイオンは微笑む。
(私はこれが好きで堪らないのだ)
優し過ぎる笑顔にリンファは安堵するのだ。この気持ちは何と言うのだろうとリンファは考えようとする。しかし、エミアーナの悲鳴が聞こえた。
「お前はどうして私の邪魔をするの!お前さえ産まれなければ私達の計画は直ぐに終わったのに!私は・・・私は解放されていたのに・・・!」
悲痛な叫びだ。
(エミアーナ・・・貴女は、苦しいのだな)
その苦しさから逃れる術も知らず、知ろうとしなかった。
「貴女はそこに居るべきでは無いのだろうな」
そこは暗くて寒い。か弱い腕の女性が居るべきでは無いのだ。リンファにはエミアーナがもがき苦しんでいる様に見えて仕方ない。
「・・・貴女に何が分かると言うの・・・?私は、私の産まれた意味は『復讐』しかないのよ」
「復讐・・・?」
こんなに美しく産まれた人が復讐をする為に産まれたと言うのか。それは有ってはならない。リンファは大国の事情など分からない。だが、そんな悲しい事が有ってはならないのだと知っている。
イオンの目は真っ直ぐにリンファに向けられていた。
(必ず、助ける)
リンファは何故か彼が求めている事が分かった気がした。何故か確信していたのだ。理由は分からない。それでも、イオンはリンファが彼女を救えるのだと信じている。きっとそうなのだとリンファは思うのだ。
「私の母は無理矢理王の愛妾にさせられた。母は今は亡き国の王女だったというのに・・・滅ぼしたのはこの国なのよ。恥知らずな王が誇り高い母を・・・!」
その言葉は芝居がかっていた。
「貴女はこの国に復讐するのです」
彼女にそれを告げたのは母親の従者だと名乗る女だった。女は彼女の手を引き、ある場所に向かった。そこには多くの人が居た。彼女の生まれた国を罵りながら、母親の生まれた国が戻るのを願って。
苦しかった。押し潰されそうだった。
でも、それを言う事は許されないのだと理解出来た。彼女は一人になってしまったのだ。
「母は恨みながら死んでいった。だから、私がその恨みを晴らす・・・そして、取り戻すの」
優しい侵略者 完




