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世継ぎの姫君と花婿  作者: 如月瑠宮
第二章
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優しい侵略者

 リンファはぞわりと背筋に這い上がった寒気に身体を擦った。イオンが居ない今、彼女に出来る事は少ない。

(こんなに不安なのは初めてだな・・・あいつが居ないだけで私はこんなにも頼りない)

 溜息を吐く。頼りない自分に嫌気がさす。

 リンファは弱い自分を叱咤する。ここにイオンは居ないのだ。ならば、自分がしっかりしなければならないのだから。役に立てるとは思わないのだが。


「こんにちわ」

 柔らかな声は聞いた事があった。

「貴女は・・・何故ここに?」

 彼女は王女だ。こんな所にやって来る目的は自分ではないか?リンファはそう思った。そんなリンファに彼女は微笑む。彼女に似合う、この場に似合わない笑みだった。

 リンファの背筋に嫌な汗が流れた。逃げなければ。本能がそう告げる。

「あら?なぁぜ?私は・・・私はこの国の、王女なのだから」

 エミアーナは自身の白い髪を掻き上げる。彼女の赤い目に暗い闇を感じたリンファは後ずさった。彼女から離れたい。しかし、エミアーナはリンファが下がる毎に一歩進む。リンファは壁際に追い詰められた。

「くっ・・・」

「大丈夫よ・・・リンファ。貴女に危害を加えるつもりは無いの、そう・・・貴女には」

「・・・エミアーナ」

 リンファはエミアーナを真っ直ぐ見詰める。恐らく、彼女は何かを抱えている。大きくて重くて暗い何かを。それがリンファには分からない。

 それでも、それが恐ろしい闇なのだと・・・深い傷跡なのだと、リンファは感じたのだった。




 イオンは目前の者達を排除し終えると空を見上げた。赤く染まっていく空は恐ろしく、美しい。まるで、彼女のようだと呟く。だが、自分が好きなのは爽やかな青空なのだと確信する。イオンはリンファの元へと急いだ。最悪の事態にはならない。そんな事はさせないのだと。

「彼女を止めてくれるかな」

 リンファは強くて優しいから。イオンは期待を胸に駆け出した。

(君なら、きっと)

 救い出せると信じる。だから、今はまだその時では無いのだ。


「エミアーナ・・・」

 リンファは禍々しい物を感じた。それは目の前の彼女から溢れているように思える。彼女の心の中の澱んだ物が溢れている。そう思えてならない。

(これは・・・きっと、いけない物だ)

 本能でその気配を察したリンファは自分を叱咤する。彼女にはこんな物は似合わないとリンファは思うのだ。エミアーナにはもっと柔らかで温かな物が似合う。

(だから、そこにいちゃいけない)

 リンファはエミアーナに手を差し出す。エミアーナはリンファの手に戸惑った顔を向ける。

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