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第十一話 駆け引きという存在その二

時系列が分り難いとの声がありましたので、前話の冒頭部分を切り取り第十一話に移しました。

ご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。

 ガタゴトと揺れる馬車の中でアレスは意識を取り戻した。

 油断してたとはいえ、まんまとさらわれてしまったのだ。


「ほう、気が付いたか」

 アレスの意識が戻ったのを見張りが気づいた。


 反射的に身をよじった。

 っ! 逃げられない!

 手は後ろに回され縛られている。力を込めてみたが緩みそうに無かった。

 しかもイネスとの繋がりがまったく感じられない。


「無駄だ暴れるな。何か出来るとも思えんが、おとなしくしていた方が身のためだ」

 声を荒げることも無くアレスを諭すように告げる。


 まだはっきりとしない意識を振り絞って考える。

 ええと、今日は朝からオルネ皇国と打ち合わせをしていたはずだ。内容は前日の夜にブレゼア公爵と話した確認みたいなものだった。

 場所は……。

 そう、出向いた場所は行政府の一室。

 そしてその足で皇宮にランディ皇子を訊ねた。

 皇子と会った後一人離され、イネスとローザは控えの間に。


 そうだ、皇王グレアムに呼ばれたからだ。


 そして、戻ろうとしたときに後ろから誰かが声をかけて来て……。


 コイツだ! コイツが声をかけてきたんだ。

 くそっ! 何かの薬か魔法で眠らされたときに目の前にいた男だ。見覚えがある。


 何が目的だ?


 そこまで思い出していると、男の声に引き戻された。

「しかし何だな? エルフって聞いていたが、やっぱり子供だ。持っているのはおもちゃじゃねーか」

 そう言った男の手には皮袋が。

 水晶の欠けらを取り出して眺めている。

「うっ! うー! うぅうう!」

 それ返せ! と、うなり声を上げた。

「へっ、いくら綺麗だからって、こんな水晶の欠けらを取ったりはしねーよ」

 と、笑いながらあっさりアレスのポケットに戻した。

「まあ、大人しくしていれば危害を加えるつもりはないから静かにするんだな」

 だが、この言葉をアレスは信じることは出来なかった。

 なぜなら……。

 顔も隠そうとしないって、見られても平気だって事だよね?


 どういう目的かは知らないが情報の少ないアレスは大人しくする事に決める。

 心の中でこんな事になったのも全部アイツのせいだと思いながら。




 あっ、道が変わった。

 規則的な振動が変化したことから気が付いた。それまでとは違って突き上げられるように馬車が跳ねた。

 意識が戻ってから二時間は経った。

 その間アレスは特に乱暴をされる事も無く、窓も塞がれた馬車の中で転がされているだけだ。


 心なしか森の気配が漂い始めた。それは時折現れる精霊達が増えた事で確信に変わった。

 何時しかアレスの身を案じるかのように、精霊たちがまとわり付く。


 そうか僕を案じてくれるんだね。

 顔を覗き込むように近付いた青い光はアレスに寄り添う。

 そのとき気づいた。

 んっ? 隅っこに見えるアレ? たしか……。ゆらゆらと揺れる闇精霊が見えたのだ。

 闇精霊はアレスに存在を伝えるかの様に姿を見せると影に身を沈めた。

 うん、大丈夫だ。僕には彼らたちが付いている。

 アレスはそう納得すると再び目を瞑って体力の消耗を防ぐ事にした。


「着いたようだな」

 男はアレスが抵抗しない事から扱いは丁寧だが、もしかすると誰かにそう言われているのかも知れないと思った。

 それを外からの声で確信した。

「おい、乱暴してないだろうな?」

「はんっ、当たり前だ! 俺を誰だと思っている」

 身なりの良い使用人の男がアレスの様子を気にしている。まるで壊れ物を扱うかのように丁寧だった。

「黙っていう事を聞いてください。危害を加えるつもりはありません」

 誘拐などと乱暴な手段に出た相手だが、傷つけるつもりは無いらしい。


 アレスはほっとすると共に警戒心を一段引き上げた。

 一応、馬鹿やろう! と目で抗議はしておいた。


 森の中にひっそりと佇む館は歴史を感じさせる。どことなく作りがローズウッドを思わせた。


「恐れ入りますがご辛抱を」

 連れられた場所は、ベッドが一つあるだけで窓の無い部屋。格子こそ無いが牢の様な使い方をするのだろうか? とても質素な作りだ。まるで慌てて用意したような感じだ。


 そこに入れられ口かせと手の拘束は外された。ただし左手首には腕輪のような物が付けられている。


 何だろう? 魔道具? なのか。


 イネスと繋がりが感じられないのはこれのせいなのだろうか?


 ここまでアレスは黒幕が誰なのかを考えていた。

 顔を見られても平気なのにアレスの身を案じている。状況からアレスによって不利益を被る可能性が高いのは三人の皇子だ。その関係者と考えても良いのだが。

 邪魔なら殺せば良いんじゃないかな? 拉致監禁なんて手段をとる必要あるのかな?


 相手は誰で目的が何なのか? 意図が見えない。






        ※※※







 エルフの氏族はもともと十三あった。

 カーラが属する最大氏族の『サーガ』それに続くのが『ゴル』と『ゲイラ』だ。これが三大氏族である。その外は勢力としてそれほどでもない。


 エルフの氏族を勢力の大きい順に並べると。

 サーガ  知識

 ゴル   騒動

 ゲイラ  槍

 スクルド 未来

 スカルド 剣

 フルド  棘

 フレック 騒音

 シグル  勝利

 ソドン  沈黙

 スリト  戦闘

 ルーズル 力

 ヒルド  戦

 エイル  慈悲

 の順に成り、それぞれ名前に意味を持っている。

 だが現在ダルマハクにあるのは十二である。

 その十三番目。『エイル』から使者が来た。

 捨てられた種族、『エイル』は慈悲の意味を持つダークエルフだった。エルフ社会でダークエルフは一段下に見られていた。特に闇精霊の眷属として忌み嫌われてもいる。

 彼らはダルマハクから外に、生きる世界を求めた種族でもあった。

 ブレゼア公爵邸の一室。


「これはローザ様。お久しぶりでございます」

 俯いた三人組みのうち中央のエルフがそう言った。

 名前をヨーゼという『エイル』の次期族長だ。

「挨拶などけっこうよ。用件を言ってちょうだい」

 ローザは苛立っている。

 アレスがさらわれたのだ。

 すでにカーラには連絡をとって動いてもらっているが、一刻も早くランディ皇子らの捜索に加わりたいのだ。

 ここで、闇の一族になど関わっている暇は無い。実際ヨーゼがアレスの行方を知っていると聞かなければ、とうに飛び出していただろう。


「お探しの『卑しい人族の血が入った者』の行方を知っております」

 ヨーゼは見下した目で舌打ちした。まるでアレスのことなど話題に出したくないと言わんばかりに。

「どういう意味かしら?」

 ローザのこめかみがぴくぴくと動く。駆け引きの暇は無いと思いながら我慢した。

 心の中では、もうすでに何度か相手を引き裂いていたのだが。


「とくに意味などございません。我らは誇り高きダークエルフなのです。カーラ様の子であろうとも我々はアレスなる者に、ローズウッドを与えたことを認めてはおりませんから」

「ほう? そこまで言うのね」

「ふっ、いくら慈悲深い『エイル』でも譲れないものがあるのです」

「良いわ、これ以上のやりとりは意味無いようね。お引取り願おう「まって! ください!」」

 慌てたように言葉を挟んだ。

「アレスなるものの行方が分らなくとも良いのですか!」

「黙れ! 闇の眷属よ! 汚らしい駆け引きなど許さん!」

 イネスが叫ぶ。怒りからか髪の毛が立ち昇り、しっぽが逆立っている。

「くっ! では情報など必要ないと? 仰るのですか」

「──っ! 良い、今はアレス様の無事を確認するのが一番だ」

 情報を扱わせたら『エイル』の右に出るものは無いだろう。それくらい裏の世界に浸透していた。


「条件を言え。聞いてやる。だが、裏切ったときは一族すべての命は無いと思えよ」


 ローザの焦りを見て取り「ふふふ、なに、我々もエルフの仲間。いささかの手伝いなりとも致しましょう」そう言って不敵に笑うのだった。


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