表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
43/66

閑話 森の聖地

本日二本目の投稿です。

カーラの幼少時代の話。

「はあはあ、ここまで来たら大丈夫よね」


 口うるさいサーガの族長の目をくぐりぬけ森に隠れる事にした。

「いくらハイエルフだからと言っても限度があると思うわ。成人の儀もまだだし本当なら遊んでいられるのに、毎日お勉強とか、少しは手かげんしてくれなきゃ身がもたないっうの! まったくあのジジイは、融通が利かないんだから」


 そうよ、生まれてからまだ二十年も経っていない私は本来ならまだ子供なの。


 この森はエルフにとって特別の場所だ。

『光り輝く神』が返って来る場所とされているからだ。女神の加護で祝福された純粋な魔力が満ち溢れた聖地。


「うわぁああ」

 いつ来ても喜びが沸き起こる。行く手を導くように魔木が枝を開けて歓迎してくれた。


「やあ、良く来たね」

 一本の大木の樹洞じゅどうから声がした。

「こんにちは、リーヴ様」

 エルフの祖であり、神の国からの彷徨い人でもあるリーヴ様。

 遥か昔にこの森にやって来た。

 いつかやってくる『光り輝く神』を待ち、もう何年もこの洞で暮らしていた。それこそ私が生まれる、ずーと前から。


「カーラ、その美しい顔を見せておくれ」

 そう言ったリーヴ様は目が見えない。でも心できちんと分かるのだと言う。

 しわくちゃの手で私の頬を撫で、優しい微笑みを浮かべた。


 そして、うんうんと頷きながら「小さなノルン」と私を呼ぶのだ。

 以前なぜノルンなの? って聞いたら「スクルド(未来)だから」ってホント意味が分からないよ。


 ウルド(過去)があってヴェルサンディ(現在)が私なんだって。

 リーヴ様はときどきこう言って私の分からない話を聞かせてくれる。


「よく意味が分からないよ」と首をかしげれば。

「ふふふ、僕たちは小さなノルンがスクルド(未来)でおこす奇跡を待っているのさ」とリーヴスラシル様を見る。


 リーヴスラシル様とはリーヴ様の伴侶で、もうお隠れになったお方のこと。

 大木から湧き出る泉に立つ石柱はリーヴスラシル様のお変わりになった姿だ。


「いずれ僕もリーヴスラシルのようになるだろう」

「石になっちゃうの?」

「そうだね」

「痛くないの?」

「あはは、痛くないよ」

「そうか」と納得した。不思議だがリーヴ様が言うと何でも納得できるのだ。

 お話できないのは悲しいし寂しいけれど、存在を感じることは出来るから怖くない。


 エルフにとって死は恐怖でも悲しみでもなく、大地に帰り一本の大木となって行く事なのだ。


「それにね、父様と母様を呼ばないといけないから」

 リーヴ様の父様と母様。詳しく教えて貰った事は無いけど「やっと存在のかけらを見つけたんだ」と嬉しそうに言われた。


「きっと父様と母様はスクルド(未来)でカーラの助けになってくれるよ」とどこか遠くを見るようだ。


 いまでもどちらか一人ならリーヴスラシル様を使って呼べるらしいけど「どうせなら二人一緒のほうが良いでしょ?」と聞けば、その通りだと思った。

 だって一人はとても寂しそうだもの。


 ここに遊びに来るのもリーヴ様が一人だというのもあるんだよ。

 ぐちを聞いてもらったり、慰めてもらうのが目的じゃ無いからね。


「またおいで」

 適当な時間になればリーヴ様にそう諭される。気がつけばお腹もすいていた。


「はい、次はお花を持ってきますね」



 次はリーヴスラシル様の好きな花を持ってこようと思いながら、リーヴ様に別れを告げて家路に帰るのだった。

リーヴ様は第十一話 金の鎖という存在でちょろっと出てきています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ