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第二十一話 公表という存在

第二十話に若干の加筆をしております。

 祝福の儀式のあと場所を移した。


「こちらでお待ちくだされますか」

 女官に案内された応接室。

 場所が奥向き手前で、あきらかに高位の女官が現れるなど扱いは最上級である。

 待つことしばし、ソナム妃殿下は若い男性を連れて現れた。


「ルオーと申します」

 弟と聞けばなるほどと思った。

 いかにもロヴァルを若くした感じで良く似ていたからだ。


 うん? 人払いしたのか。


 中庭では侍女や女官など結構な人が世話をしていたけど、この場に現れたのはソナム妃殿下と弟のルオーさんだけだ。


「イネス様。先ほどは祝福をありがとうございます」

 そんなソナム妃殿下の言葉から歓談・・は始まった。



 政治利用という言葉がある。

 前世では皇室がうんぬんとか良く耳にした。

 もちろんネットでの知識だけどね。


「では精霊から祝福を授かったことを公表したいと言うのですか?」

 ローザが難色を示していた。僕のこともあるから大っぴらにしたくは無いのだろう。

 これは良くわかる。心配しているのだろう。


 話はこうだ。

 現在のソナム妃殿下を取り巻く状況は複雑だった。

 正妃マルグレーテとの関係はそれなりに良好であるらしいのだが、取り巻きに問題があるらしい。

 取り巻きとは要するに利権を握っている連中の事かな。


 現在おおまかに分けると、スヴェア王国には三つの勢力があるそうだ。

 宰相を旗印とした一派とサーム教徒の貴族で、この二派は高位の貴族が多く共に正妃マルグレーテを支持していた。

 残りは官吏と下級貴族なんだけど、数は多いが力的には弱いみたいだ。


「彼らにとって、この子の存在は都合が悪いのでしょう。とくに宰相と教会が手を結んだことで、予断を許さない状況にあります」

 悲しそうなソナム妃殿下はお腹を労わるように擦った。


 暗に示しているけど内実はソナム妃殿下、もしくはお腹の子が危ないということかな。


 まあ、世継ぎが出来れば権力構造が変わるから必死なんだろうが・・・・・・。

 なんだかな。嫌な国だわ。


 懐妊も王様に伝える前に漏れているみたいだし、当然離宮にもスパイがいるって事だろうと思う。


「懐妊を公表すれば最悪・・・・・・魔の手が伸びる事もあるのが現状です」


 そこで今回の事を利用する。

 離宮にて招いた精霊イネスが懐妊に気付き祝福を授けたと。


「ククリの者なら精霊様を敬うのは不自然ではありませんから招く理由になります。陛下にもそう伝え、離宮のものには軽い口止めを出す程度にしたいのです」


 精霊の祝福を授かるというのは慶事にあたる。王国の世継ぎにこれが与えられた事を利用したいという。

 要するに手を出し難い状況を作りたいのか。



 うーん、どうしようかな。

 イネスと目が合ったら「ん? アレスの好きにして良いぞ」と、はいはい。お菓子に夢中なんですね。


 イネスは祝福どころか加護まで与えてるし、いまさらって感じだしな。

 ローザが気にしているのは僕が精霊石を作れるって事だけだし、それさえ漏れなきゃ大丈夫だろう。


 それと加護の件は話したよ。

 物凄く驚いていたけど公表するかは任せてある。


「では、イネスを政治利用したい、と? いう事ですか」

 僕はちょっとかっこ付けて、ネットのにわか知識を披露した。

 いや、使ってみたいじゃん。普段はこんな言葉を使う機会は無いし。


「えっ! いいえ。そ、そう言われれば否定できませんが、決して精霊様を利用しようとなど」


「でも実際はそうですよね?」

 王族相手にどうかと思うけど僕はエルフ。

 人族の理に縛られる事が無いのはこういう時には実に便利である。


 恩を売れる機会では最大に利用する事にしよう。


        ※※


「なるほど、精霊石の値段ですか」

 僕が出した精霊石を手に取ったソナム妃殿下。直径三センチ近いけど僕が作った精霊石のなかでは小さいほうだ。

 加護を込めた精霊石と比べながら時々ため息を吐いていた。

 色は青と赤で中心に行くほど強く光っている。ちなみに虹色の精霊石は直径一〇センチ以上はあった。


 なぜこんな事をしてもらっているかといえば、祝福を公表する代わりにソナム妃殿下に鑑定を頼んだからだ。

 王族に頼むのは下世話な事だと思うが僕ではどうにも決められない。

 ソナム妃殿下なら、普段から宝石なんかを手にする機会が多いからね。


「確かに形は魔石ですね」

 祝福の儀式で作るところを見られているので今更なのだが、イネスが作った事にしてあくまで僕は手伝ったと説明していた。


「そうですね、決めないのはどうでしょう?」とソナム妃殿下。

「決めない? どういう意味でしょうか?」

「ええ、神にも決められないのなら、欲しい人に決めてもらったら良いんじゃ無いかと思って」

 秤の神様の鑑定の事も話してある。

「それで良いのでしょうか?」

 ちょっとだけ不安。

 僕が難色を示すと大丈夫ですよと言われた。


「これだけの綺麗なものですもの、きっと価値が判る人なら大丈夫と思います」

 うっとりとした顔は女性特有だな。

 ローザにもあげたら喜んでたし。


 この一言を受けて僕たちは決めたのだ。


 スタートをゼロで始めると。

 ゼロ円スタートって、ネットオークションみたいだわ。



        ※


 オークション会場は熱気に包まれていた。

 もちろん交渉に現れたのは代理人で、当事者じゃ無い。大手の商会の関係者だとか。


 すげー貫禄があるんですけどけど。

 いかにも私は名家の代理人で、庶民など相手にしておれませんって・・・・・・いやなオーラがビンビンと伝わる。


「では、これより天秤のオークションを開始します」

 今回はファーストプライス・オークションで行われる。

 これは一番高い値を付けた買い手に販売される方式だ。

 開催者が一段高い場所に立った時。




「おお、始まるところだ。どうやら間に合ったようだね」

 遅れてきた参加者だろうか? 背の高い金髪の青年が現れた。

たくさんのご指摘を受けた書き方ですが、区切りの良いところ、具体的には一章終了時点で改稿したいと思います。

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