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話がずれるのは雑談の常

「母さんと父さん、また人助けしてるのかー、変わらないなー」


 アスクのご両親は病の流行った村や町に病に対処する薬を配りまわったり治療魔術を駆使しながら世界中を旅して回っている。一応鬼族オーガであることは隠しているが、薬が効いてその村や町が救われたら信用のできる人だけに正体を話しているそうだ。お母さんのレピスさんの種族は普通の鬼族オーガで殺戮の対象は病気であるが、お父さんのケイさんの種族は人族ヒューマンである。レピスさんが旅の途中でとある村の治療を終えたときにぷろぽーずされたらしい。鬼族オーガであることも話したそうだが全くケイさんは止まらなかったそうで。以来レピスさんが折れて今ではケイさんと子供まで作ってしまった。

 

 …………なんでこう鬼族オーガには幸せなかっぽーが多いのだろうか。こちらは同族が男しかいなくて出会いもないのに。ちょっと嫉妬したのは内緒だ。


 アスクの家系は鬼族でも一番特異でなんと医一家。植物でも獣でも人族ヒューマンでも森人族エルフでも鬼族オーガでも区別なく治すための知識を蓄え、実地にて経験し、あらゆる病を治すためにという理念の基にあるピアス家という一族である。一度知識の収集のために赴いたのだけれど、大変な蔵書量を誇る地下書庫を見て唖然とした。保有したすべての蔵書に『不変』の付与魔術がかけられていた。中には禁書の類もあったり間違いのある論文なんかもある。一度そのことを指摘してみると、「間違いの中にもひとかけらの真実はあったりするんだよ。それにしてもよく分かったね?ああ、知恵の神の恩恵なのかい?それだったらこの論文の………」といった具合だったので、知恵の神の中から医術関係の歴代の方々に頼んだ。気がついたときには一週間が経っており、まだ完全に【憑依】を使いこなせないことを痛感した。


 ちなみに【憑依】は知恵の神のたった一つの恩恵で歴代の知恵の神に選ばれた識者を自分の意識を犠牲に自分の身体に呼び寄せることができる。今は完璧に意識を明け渡してしまうので憑依中の記憶は一切ない。知恵の神の目的の知識を得るにつれて段階的に俺が主体となれるらしいのだが、今は無理である。中にはある拳法をますたーしたご老人や、生涯を研究に費やしたもの、変な言葉(横文字というらしい)を使うダンサーとかもいる。が、彼らの肉体と俺の肉体はそもそもまったく構造が違うわけで。無理に喧嘩をすれば当然のごとく身体に負担がかかるし、一週間寝ずにいることもできないし、足を180度広げて前屈なんてできるはずがない。


閑話休題。


 「はい、あの2人は辺境のまともに薬師さえいない村ではほとんど神様と同じような扱いですよ。まぁ御二人とも神様なんてとんでもないとおっしゃっていましたが」


 「ほーん、あの2人も元気にやっちょるんじゃなぁ。そういえば、あんたは何でこんだらあぶねぇ森さ入っただか?この時期は猿どもが盛って女子おなごが入るのは鴨がねぎ背負って歩ぐようなもんだで。このあたりはなんにもねぇがら何か用があってこさ来たわけではねんだべ?この里のことも知らんかったみたいだったしのぉ」


 そうパオルさんがいうと森人族エルフのお姉さんは俯いてしまった。なんか深い事情でもあるんだろうか?


 「………たんです」


 ………鬼族オーガは基本的に五感が優れているのだが、ちょっと信じられない単語が聞こえた。


 「………すまねぇがもっかい喋ってけねが?ちょっと聞き間違えたみてぇだ」


 「………家出してきたんです」


 なんともいえない空気が俺たちの間に流れたのは言うまでもない。

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