授かりし者 6
「満足した?」
「うんっ!すっごい良かったよ!
やっぱ、秀輔は鳥寄せだけはピカイチだね!
私のときとは応え方が全然違うもん!!」
「それ、褒めてるの?」
「もっちろん!
私、こうやって秀輔が鳥たちとさえずっているのを聞いているのがとても好き。
ウグイスの澄んだ鳴き声を聞いたり、トンビがのんびりと空を飛びながら長閑に鳴いていると
落ち込んだり、嫌なことがあった日でもみんなのおかげでまた元気になれるんだ。」
そう言って、結ははにかみながら「にしし」と笑った。
・・・。
こいつはまた、自覚があるのか知らないが時々、ドキッとすることを恥ずかしげもなく言うんだよな。
「でもな、ほんとはあまり何度も鳴き真似をするのは良くないんだよ。」
「どうして?みんな楽しそうじゃん?」
結はいまだ納得しきっていないような顔をし、休憩が終わったらもう一度
鳴き真似をしてもらおうかと言わんばかりの表情を僕に向けてきた。
「本来鳥たちが鳴くのは縄張り争いや、メスに対する求愛のアピールなんだよ。
だからホーホケキョと鳴くのはオスだけで、あんまり僕が鳴き続けるとほかのウグイスたちが
「あぁ、ここはすでに縄張りとして取られているから別の場所に移動しよう」
と、思って他所に行ってしまうんだ。」
「僕はなんとなく鳥の鳴き声が怒っているのか警戒しているのか聞き分けることができるから
これ以上やったら迷惑だなっって、とこで止めてるんだ。
彼らには彼らの都合があるからね。
人間が聞いている分には心地いいけど、本人たちは必死ってわけ。」
「ふ~ん。そうなんだ!
じゃあ、あんまり無闇に吹いちゃだめなんだね~
ふふっ、なんだか秀輔って鳥と会話できるみたい
人間と違って鳥の女の子にはモテモテなんだね!にしし」
「うるせーな。ほっとけっ!」
それより、腹減った!!
約束どおり昼飯を頂こうかな!」
「オッケーイ!!家に帰ろ!お礼に私の手料理を振舞ってあげる!」
その言葉を聞いた瞬間、今までの実体験をもとにしたトラウマとも呼ぶべき
思い出が走馬灯のように秀輔の脳裏を駆け巡った。
「いや、お前の手料理はもうこりごりだ・・。
あるものでいいから勘弁してくれ。」
「ちょっと、それどういう意味よっ!」
「そのままの意味だよ。」
後ろから結がまくしたてているのを聞き流しながら、桜小路家へと来た道を引き換えし
俺と結は騒ぎあいながら向かった。
あれほど賑やかだった鳥の鳴き声がピタリと止んでいることに気付かずに・・。