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授かりし者 3

家を出てすぐに柚子葉は中学の友達と出会い、まるで僕が最初から

いなかったかのようにさっさと行ってしまった。



僕はこの春に近くの至って普通の公立高校に入学した。

それまでは柚子葉と同じ中学校に通っており1つ年下の

学年ではそれなりに人気がある妹に悪い虫がつかないように目を光らせていた。



高校生になりすぐに彼女ができ華の高校生活が始ると信じ込んでいた僕の妄想は

現実の前に脆くも崩れ去り、変わったことといえば通学路が変わったことくらいだ。






「おーーい、秀輔ぇー」




いや、変わったことがもう一つ。

高校入学からまた同じ学校に通うことになった、桜小路結さくらこうじゆいの存在だ。

結とは同じ小学校を卒業したクラスメートでもあり幼馴染。


うちの婆ちゃんと結のお婆さんが古くからの友人ということも関係している。



「おっはよ!!」


と、背中に軽く鞄を当て 


「にししっ」

と、はにかむ彼女。


黒のショートヘアーをヘアピンで留め、すらっと伸びた手足は

少し大人びた印象を与え、日光を浴びた白いブラウスがよく似合う。

しかし、何かと物忘れが多くどこか抜けているため口を開くと見た目と反し

幼く感じてしまう。



そんな結とは登下校の道も一緒ということもあり空白の3年間を埋めるのに

時間はかからなかった。



「あのさー、秀輔ぇー。今日、終業式終わったら時間ある?」

 ちょっと付き合ってほしいことがあるんだよね!」



「なんだよ?それよりこの間貸した漫画持ってきたか?」



「あっ!忘れちった!明日!明日返すから!」



「お前なぁ、昨日も同じこと言ってたぞ。それに今日で学校は夏休みに入るけど。」



「あぁ~、じゃあ!ついでに家まで取りに来てよ!」



「なんのついでだよ!?

 それになんで貸してやってるのに僕が取りにいかなきゃならないんだ!?」



「そのついでのことなんだけど・・、また例のやつお願い!!」

と言い、両手を顔の前で合わせお辞儀をする姿勢の結に



「やだよ。面倒くさい。結だって自分でできるだろ?」



「私がやるとうまくいかないから秀輔に頼んでんじゃん!

 じゃないと漫画返さないよ!」



「はぁ?言ってること滅茶苦茶だぞお前。」



「いいから、いいから!!つべこべ言わないの!

 お昼ご飯くらいは出すからさ!式が終わったら校門で待っててね!」




「じゃ!そゆことでよろしく!」

と言い残し、こちらの返事を聞く前に逃げるように走り去ってしまった。




なんだかんだ、結のペースに振り回されつつもこれが僕の日常であると

受け入れてしまっている。

それでも、納得のいかない僕はもやもやした気持ちを掻き消すように足早に

学校へと向かった。




1-Aと書かれた教室に入ると、

「にししっ」


と、はにかむ結が席につきながらひらひらとこちらに向け手を振っていた。



「あいつめ。

 はぁ、仕方ない。漫画のこともあるし行ってやるか。」




嘆息をもらしつつ、自分の席に座りいつもの定位置に教材を

しまうと、始業のベルを告げるチャイムが校内に響き渡った。


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