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授かりし者 1

「「秀輔。よくお聞き。

あなたには他の人にはない、生まれ持っての”授かりもの”があるの。

この力を使えばあなたが得をすることもできるし、いじめっ子に

うんと仕返しをすることができるわ。


けれど、この力を使ってはだめ。

決して人様に使ってはいけないよ。 


おばあちゃんとのたった一つの約束よ。秀輔。」」












・・・っん。

・・またこの夢か。

ベットの上で半目を開きながら昔のことを思いだす。




僕がまだ小学生の頃、同い年の男の子とケンカして

泣きながら家に帰ったときに祖母から言われた言葉だ。



祖父が早くに他界し、両親は僕が物心つく前に離婚。

母親は生活費と僕達の学費を稼ぐために家を留守にしていることが多かったため

流れのままにおばあちゃんっ子として僕は育った。



父親に関しては記憶も曖昧な時期だったので寂しいと思ったことはない。

なぜ家には父親がいないのか、一度だけ祖母に尋ねたことがあったが



「秀輔は何も悪くないのにね。ごめんね。」

「でも受け入れてちょうだい。強く生きるんだよ。」



と、言うばかりでその後は教えてはくれなかった。

まだ聞きたい気持ちもあったけれど、普段から厳しい祖母の口から謝罪と

うつむきかけた悲しい横顔が幼いながらに僕の言葉を飲み込ませた。









ベットに横たわりながら物思いにふけていると、7時を知らせる目覚まし時計が

甲高い音を出しながらリズムよく鳴り出した。

なぜか僕は目覚まし時計が鳴る少し前に目が覚めるという特技をもっているので

いつもスッキリと朝を迎えられる。



身体をベットの上からのそりと動かし、片手で目覚ましを止めカーテンを勢いよく開く。

朝の眩しい陽光が起きたての目を刺激する。



っ!っまぶし!

今日も暑くなりそうだ・・。




カララと乾いた音を鳴らしながら窓を開けると夏特有の少し湿った空気と共に

けたたましいセミの鳴き声が部屋を包み込んだ。


少しの間、外を眺め風にあたっていると




「秀輔っ!いつまで寝てるんだい!!

さっさと起きなっ!!」


と、階下から心臓を鷲掴みするような張りのある祖母の声が

響いた。




「もう起きてるよっ!!」



と、僕も声を張り上げ部屋着のまま1階へと降りて行った。



朝食をいただきにリビングへの扉を開けるとそこには祖母と母親と妹の姿があった。


「なんだい秀輔!あんたまだ寝間着のままじゃないかい!

 はやく着替えな!!」


「へいへ~い。その前に飯を食わせてくれよ

 母さん、リモコンとって」



リモコンを手渡しながら

「あんた、先に顔洗ってきたら?いつにも増してひどい寝癖!」

と、笑いながら言ってきた。



「飯食ったら言われなくても行くっての」

とぼやきながらテレビのチャンネルをまわすと



「ちょっと!!今見てたでしょうが!リモコン貸して!!」

と、制服姿の妹が朝とは思えぬ大音量でまくしたててきた。



今年中学3年生になった妹は、肩にかからない程度に緩いカールのかかった

黒髪と母親に似てパッチリとした目を持ち合わせており、中学生らしからぬ発育を

した身体つきにより見た目だけなら高校生となんら遜色ない。

現在、通っている中学でも隠れた人気を誇っている。


しかし、勝気な性格と強情な一面により今まで告白されたことは一度もない。

らしい。



そんな妹を朝から疎ましく思いながらも

リモコンを取られしぶしぶ椅子をひき4人座って席に着いた。



皆が座ったのを見計らい4人手を合わせ、祖母から

「いただきます。」


その後に3人で続いて

「「「いただきます。」」」



これが、君乃手家のルールだ。

朝食は家族そろって一緒に。

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