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饗(うたげ)宴Ⅰ~テレビドラマ  作者: sadakun_d
トレンデイ俳優は兄
5/6

芸能界②~脚本家の事情

テレビ各局から部長級ディレクターも顔を見せる。


こちらはビジネスという生業(なりわい)からであった。


売れっ子脚本家さんに一度や二度の"脚本断り"を受けてはいけない。


厳しさだけのテレビ局の視聴率戦争に勝てないのである。


えっ!


「先生の個室に訪問者があるのですか。(女優の)卵が来ている?頻繁に出入りしている?」


担当の医師から


親しみ安い受付でそれとなく女の影を耳にする。


「(中年の)先生もお盛んなことだ」


いつまでも若いつもりでいるだから


「精力的に青春ドラマを描くんだろうけど」


ディレクターは持参したお見舞い果物カゴが虚しく思えた。


「ありゃあなんだ?」


脚本家の入院する特別病棟に見知らぬ患者さんがうろうろしているではないか。

あわよくば


一目だけでも将来の女優の顔を拝んでみたいと野次馬である。


うろちょろの患者さんは喜んでいる。


「昨日の女の子ってなんかドラマで見たことないか。ちょいちょい出ている気がするんだ」


携帯動画で脚本家の個室からの出入りを逐一隠し撮りしていた。


「このお嬢さん可愛くないか」


一番よく見かけるなぁ


患者さん同士


互いに撮影した動画や画像を意見交換。


「この娘さん確かに可愛いよ。僕の好みだなぁ~早く有名になってくれないかなあ」

患者さんの一番のお気に入り娘は決定する。


長患いの娯楽


女優の品定め。


期せぬことから最高の楽しみである。


ディレクターも患者さんの集まった賑わいに顔をちらつかせる。


「どれどれ」


ディレクターさんも物見遊山。


若い女優と言うが一体誰が来ているか。


興味半分に話の輪に加えてもらう。


「この娘は可愛いぜ。うーんまだ卵の段階かなぁ。女子高生みたいな若さだし」

ディレクターは患者さんの肩越しに動画を覗く。


チラッ


携帯の画面は小さくて解像度もかなり低い。目を凝らしてなんとか画面を見る。

ぼんやりとした写メに女の子がある。


ドアからスッスッと澄まし顔をして見ている。


エッ?


酔狂な声はディレクターである。迂闊にも驚嘆を挙げてしまう。


患者さんの品定めにあった女優の卵。


この脚本家のまわりで見てはいけない(たぐ)いの女の子である。


見間違えかっ?


「ちょっとすいません。僕に携帯画面を」


患者さんをかき分けてしまう。


「ああっ…お願いだから。よく見せていただけませんか」


見間違いだぞ


違いであって欲しい。


ちらっとではあるがこの子は印象に強く残るのである。


再度携帯を借り眺めてみる。


ぼやけ具合解像度も気になる。


『ドラマヒロイン募集』をしグランプリ(優勝)の女の子に見えたのである。


アチャア~


はっきりみたい


確認を敢えてしてしまう


ギクッ


"当たりだ"


ディレクターは愕然とした。


テレビ局では大々的宣伝をし掛けるオーディション番組"シンデレラ姫を探せ"がある。


それは…


社運を賭けるほどの"シンデレラ"姫選びをしていた。


その女の子は応募多数の中から選ばれたのである。


ディレクターは審査員のひとりとしてコンテストに関わりグランプリ(優勝)をこの女の子がしたことを目の前に見ている。


ディレクターは考え悩む。

"なぜグランプリの彼女が中年の脚本家と密会しているのだ?"


これはまずい


週刊誌のスキャンダルになるぞ


グランプリの彼女は華々しきデビュー目前の女優でありタレントになりうるアイドルではある。


これから売り出そうとする女の子が当代売れっ子のあやしき中年脚本家と恋仲になっているのか!


しかも


入院中の脚本家にまでお忍びでやってくるなんて


大御所と


シンデレラ姫


こそこそ個室密会をしているのだ


マスコミにバレたら…


社運を懸けたシンデレラ姫主演制作ドラマはどうなるのか。


番組"シンデレラを探せ"のグランプリ優勝の彼女。


世間的にはデビュー前でタレントとしての行動はシークレット事項になる。


スキャンダル発覚を前にディレクターの権限でお払い(キャンセル)してやろうか。


「いやっそれは無理だ。もはや不可能だ」


テレビ局長からずらりと並んだ審査員の歴々を前にシンデレラ姫の映像はお茶の間に流すのである。


「ああっ~なんてことしてくれるんだ!あのオッチャン」


自分のしでかしたことがどんなことか。


「頭を使ってくれよ」


テレビ局の一員としてこの事実はなんとか解決させなくてはならない。


携帯画面を眺め気が遠くなる。


患者さんらは納得である。

「やっぱりかい。有名人なんだなあ。あの女の子って違っているよなあ。やたらと光っているなあっと思ったんだ」


患者さんドラマ番組"シンデレラを探せ!"をクリックしヒットさせる。


「ほらっこの番組サイトだ。あっ!審査員に堂々と脚本家の大先生名前が出ていらっしゃいまっせ」


ということは…


脚本家は自分の趣味でこの女子高生をシンデレラに選んだというわけか。


数千人の中から選んでやったお礼に"充分目を掛けてやる"と男と女の関係をちらつかせた。


「そういうシナリオなのか。あの中年からしたら女の子は娘さんぐらいの年齢だろ」


たいした公私混同ぶりではないか


患者さんの盛り上がった噂話に暇なナースや介護が加わる。


「芸能界ってねぇ。なんかねぇ薄汚い感じだねぇ」


都心近郊にある附属病院は芸能人や政治家と有名人が利便性を考えて入院している。


医師はなにかと融通が効くためスキャンダルにまみれた芸能人は喜んで入院をしている。


ほとぼりが醒めるまで精密検査入院でいつまでも好きなだけ引きこもる。


「俺さあっ~あのシンデレラ娘に恋しちゃった」


携帯動画を数回盗み撮りした男は顔を赤くして照れた。


数千人からひとり選ばれ女の子。グランプリを獲得した類い稀なる美貌とそのタレント性に男なら誰しもクラクラである。


「あのお姉ちゃん毎日来ているぜ」


個室にこもっているのか。

「病室なんか退屈だろうに。なにしてんだ」


男として気がついた。


はたっと夢見心地から我に返った。


特別個室は赤いプラスチックプレートが垂れ下がる。

『面会謝絶』


御用の方はナースステーションまでお越しください


病人が重体であろうが軽微な病いであろうが勝手に個室には入らない。


ステーションまで顔を出し面会名簿に名前を記載して欲しい。


脚本家のお見舞い客はステーションに名前記入してお見舞いしている。


だが数千から選ばれた強運なシンデレラ姫は違っていた。


病棟のある階までくると携帯を取り出す。


ツゥーツゥー


病室と連絡を取るのであった。


「こんにちは先生。今ね病室の…前に…」


彼女が言うが早いか。


脚本家は女の子のお見舞いを待ちかねたようにドアを開ける。


廊下に彼女を見つけ手招きをする。


普段は苦虫を潰した顔をする中年男。パリッと満面の笑みである。


「待っていたよ。さあさあ早く入りたまえ」


ドアを閉め切ると脚本家はホッとする。


「用心して来たかい。週刊誌に尾行されはしなかったかなっ」


シンデレラはハイッと可愛く頷いてペコッと舌を出す。


「見たかっ。今のおっさんの姿」


患者さんは廊下の片隅からちゃっかりと見ている。ふたりのことを観察してそわそわする。


「シンデレラ姫ってさぁ~いたいけ。なんて可愛くて」


目の前にいる女の子のことを言うんだろう。


患者さんはため息が出てしまった。


ガチャン


特別病棟個室はしっかり鍵が掛かる。ナースステーションにお見舞い客が来ても対応しないように断りを入れる。


シンデレラは病室で安心をする。


「ふぅ~"お父さん"って面白いんだね。テレビで見ると怖いだけのおじさまですもの。私は最初ドギマギしちゃったんだから」


個室の中は若い娘と中年脚本家の笑い声が絶えなかった。


「怖いおじさまかい?そうかなあっ」


脚本家はそりゃあ困った


若い娘は本当のことを言うと頭をかいた。


「最近の娘はズバズバ言うから困ったもんだアッハハ。僕は強面(こわおもて)な脚本の先生が定着してしまったらしい」


シンデレラ姫はケラケラっと天真爛漫をみせる。


「だって…。あのシンデレラのオーディション番組って怖い先生ばかりが審査員なんですもの。一次審査や二次審査と進むに従って応募者を振り落とすんだから」


オーディション当日は脚本家が飛び上がらんばかりに驚いていた。


「まさかだな。まさか僕の企画したオーディション番組に"実の娘"が応募してきたとは思いもよらずだよ」

テレビに放映される第三次審査から人気者の脚本家はドカッと座り応募者の履歴書を眺めた。


履歴の写真に幼い時に離婚し"生き別れした娘"の面影はなかった。


「名前と住所でピン!と来たよ。お母さんと別れてからずっと音信不通で申し訳なかった」


父親は娘を懐かしいと思い再会を喜んだ。


娘の方は複雑な気持ちである。目の前の父親は見知らぬ女と不倫をしさっさと家庭を見捨ててしまった。


当時としてはこれから売れっ子になるかならないかの端境期。


そんな父親と娘は偶然に再会をしてしまう。


そんな父親と娘は偶然に再会をしてしまう。


「なんせ青天の霹靂だよ。シンデレラ姫オーディションは驚きだった」


インスピレーションが働きピンとくる!


娘は実の父親を見てピンである。


「審査員の僕をじろじろと見ているわけだろ。そんなこんな見つめられてはこちらが恥ずかしいよ」


幾多のカワイコチャンがオーディション審査に通りたい一心で色目を使うのはよくある話。


「ねぇお父さん。お願いがあるの。私は有名な女優さんになりたいの」


シンデレラ姫オーディションに応募するまで2~3の芸能プロダクションにスカウトをされている。


可愛さとその女の子たる際立ちは他の同世代を寄せ付けないものがあった。


「お父さんの娘だもん。もっと簡単に人気女優になれそうだもん」


シンデレラ姫は売れっ子脚本家の生き別れで血の繋がった『父娘』だった。


「おいおいそりゃあ困るよ」


テレビカメラが回った番組で決めたシンデレラ姫である。


審査員が父親でその娘がグランプリを獲得しているとなればマスコミが黙っていない。


「私ねっお母さんと別れてお父さんと暮らしたいなあ。だってね」


新しいお父さんと弟のいる家庭環境。連れ子の娘がいなくなれば仲のよい三人家族である。


「お父さんは嫌な人じゃあない。弟も嫌いなわけじゃあない」


だが異物感がある存在は三人が集まった家族団欒で時折感じてしまう。


「僕と暮らしたい?そりゃあ(向こうさまの)母親が許せば構わない」


久しぶりに再会した娘は女子高生。


進学した高校はまずまずの学校。


本人が大学を希望すれば母親にはかなりの負担になる。


脚本家の年収(数億)からすれば娘の学費ぐらいわけないことだった。


「わあっ~嬉しい。私ねっお父さんではなくてパパって呼びたいなあ」


娘は喜び勇んでギュッと抱きついた。


タイミングよろしくに個室にナースが入ってくる。


「すいません検査の時間でございます」


血圧や検温をとベッドをナースはチラッと見た。


抱きつかれたまま脚本家はうーんと唸った。


苦虫を噛み砕いた顔でスクッと腕を前に出した。


「血圧だろうと体温計だろうと」


腕はかなり力強く押し出された。

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