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饗(うたげ)宴Ⅰ~テレビドラマ  作者: sadakun_d
トレンデイ俳優は兄
2/6

ドロップアウト②~売れっ子は忙しい

こちらはテレビ局の第1スタジオである。


人気ドラマの撮影現場はスタッフから盛り上がっていた。


AD(アシスタントディレクター)は収録の最中は汗だくになり進行を指示する。

「ハイッ本番いきます」


台本をチラチラ見て収録の場面進行を率先する。


「先生っ~テイクNo.4からです。よろしくお願いします」


若いADが"先生"と呼ぶのはトレンディ俳優である。

「よしっわかった。盛り上がりのシーンだ。任せてもらうよ」


俳優はデビュー間もない若手ではあるが今や飛ぶ鳥を落とす勢い。


何せデビューしてからは人気があり大御所扱いである。


当初は歌手として芸能界デビューしている。


歌声よりも甘いマスクとしびれそうな声がお茶の間に伝わっていく。


歌と平行しテレビドラマの出演者としてブレイクする。


役者として自然体を心掛けたちまちお茶の間にフアンを得たのである。


歌はまったく売れなかった

ならば俳優だけでいこう


芸能プロダクションは売り込み戦略を俳優と決めたら徹底的にドラマメイクをする。


「日の出の勢いがある。今のうちだ。ジャンジャン売り込みまくれ」


休む暇もなく俳優稼業に邁進をした形である。


人気のあることから次から次へとドラマの話が舞い込んでしまう。


気がついたら数年後にトレンディドラマにはなくてはならぬ貴重な存在にのしあがっていたのである。


「うちのような零細プロダクションは営業仕事を断るなんてことはできない」


いかんせん社長は鼻息荒かった。


スタジオでクランクインしたドラマは順調な収録である。


残りは2話~3話で最終回を迎え主役の場面のみ早撮りの段取りである。


「先生ありがとうございます。いつもながら大変素晴らしい演技でございました」


アシスタントディレクターに感謝を言われる。


テレビドラマのスタジオ収録はこれで終わりである。

視聴率も好調でさすがに人気者が主役は違っていると思われた。


「そうかっそんなに出来が良かったか」


トレンディ俳優はにっこりと愛想笑いをひとつして年上のADの肩をポンっと叩いた。


「さあって次のスタジオにいくよ」


俳優本人の演技が良かろうが悪かろうがお構い無くである。


お茶の間のフアンは俳優の顔を眺めたら満足する。


「俺が出演しているからこその好視聴率トレンディドラマなのさ」


メイクを落としマネージャーに次のスタジオ入り時間を確認する。


「忙しいのは人気者の証拠でいいけど。別にとやかく言うつもりはない」


ただトレンディ俳優と持て囃されて以来自由な時間が取れていない。


テカテカ光るメイクを水で押し流し"のびのびと遊んでみたいぜ"と叶わぬ夢を見るのである。


ふぅ~


一息つけて幸せである。


「先生っお時間です。おクルマまで参ります」


アチャア~


一息をつく暇


これまでが勿体無(もったいな)いと()かすマネージャー。


俳優はあわててじゃぶじゃぶと顔を洗い駐車場へ向かう。


「あらっごめんなさい。私っスタジオ入り時間を見間違いしていましわ。あと20分で行かなくちゃ」


女子大出たばかりのマネージャーは悪びれずとも可愛く舌をペロッと出した。


「ひぇ~からだがふたつ欲しくなるぜ」


各局とも視聴率が稼げる番組としてバラエティとドラマに力を入れている。


ハンサムな俳優にはシリアスな恋愛ドラマである。


そのドラマの原動力となるのが売れっ子俳優の存在である。


世に言うトレンディな俳優である。


トレンディな雰囲気な恋愛ドラマにお似合いの女優をヒロインに起用する。


女の子の憧れカップル誕生である。


美男美女の俳優女優が画面で愛し合う。紆余曲折を経てチュ~と抱き合えば視聴率はぐんぐんアップしていく。


次に必要な条件。


ラブストーリーの原作/脚本である。


筆の力を発揮する原作者は必要であるがテレビという映像の世界にうまくマッチさせる技術は脚本の出来次第である。


「今度のドラマもトレンディかい。いやはや僕はもうこの手のは飽きたなあ」


スタジオ入りのトレンディ俳優はマネージャーから台本をもらいうんざりする。

「飽きたって言われても」

各局とも視聴率争いを勝ち抜くためトレンディドラマを右へ倣えと制作をしている。


主役を演じる俳優は数人のハンサムが各局とも抜擢されていた。


彼らハンサムな二枚目俳優は競争馬のごとくライバル心を燃やしている。


「トレンディは飽きたなあ。お笑いバラエティやりたいなあ。バカなこと言って笑われて番組なんだから楽なもんだ」


お笑い番組?


マネージャーはなんと説得しようかと悩む。


売れっ子スターの地位をつかんだ俳優。番組出演のギャラもそれなりに高額である。


お笑いでも高値だった。


「もはや簡単にバラエティなどには出演できませんね」


お笑い芸人のギャラ<俳優

「ひぇ~」


デビューして数年後のドラマは数え切れぬほど出演している。


主役を張れないチョイ役時代を含めたら100を軽く越えてしまう。


演じた配役も多岐多様に渡る。


教師・弁護士・政治家・レーサー・パイロット


背が高くかっこいい職業は大抵を演じ切り好評を博している。


「でもなぜかしら」


マネージャーになったばかりの女子大生気分は首をひねってしまう。


「医者のドラマは避けてしまう」


シリアスドラマの定番"病院ドラマ"はガンとして出演拒否してしまう。


「医者のドラマ?ああっあれはダメだなぁ」


医者としての医療専門用語が覚えきれない。


やたらに長ったらしい病名や横文字はアレルギーとなる。


「医者なんて(ショウ)に合わないからな」


プロダクションとしては困った我が儘だと思われた。

「僕はそんなに記憶力が優れているわけではないから。マネージャーからも"医療ドラマ"はお断りしてくれ」


記憶力がない?


ドラマのセリフがダメって。


トレンディ俳優は有名進学校の高校出身。


高校3年でこの世界に飛び込み中退はしてはいるが。

「記憶力がないのですか。私には信じられません」


なにかあるのではないかとマネージャーは勘繰る。


「お医者さんが嫌いなのかしら。幼い時にお医者さんにひどい目にあったとか」

お医者さんの娘さんに片想いをしてひどく振られたとか


縁があってマネージメントをする限りではある。


タレントの私情(プライバシー)にも踏み込んでみたい。


女子大で西洋史を専攻した才女は芸能人サイトを検索してみるのである。


「へぇ~なるほど!」


知らなかったなあっ

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