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仮想世界の管理者、別世界の人々と巡り合う。  作者: Qoo


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3.衝突と同盟

 とてつもない爆音とともに、大量の粉塵が大部屋の中を舞い散る。

 部屋中には細かい埃などが降り積もっており、床が全体的に白がかっていたのだが、棺桶の周辺の円形の範囲のみが焼け焦げて黒ずんでいた。

 塵煙が晴れたころ、無傷の少女が姿を現す。無傷なだけではない。身にまとっていたシーツに焦げ一つついていない。



 「空間が隔離されているのか……?」



 ボイドボーンが戦慄する。そこにウェルドンとテトラボルトが動き出す。


 ウェルドンは巨大な機械仕掛けのハンマーを取り出し、少女に突撃する。ハンマーの先端には大きな撃鉄のようなものがついており、衝撃に応じて爆発する仕組みだ。

 ウェルドンのハンマーは勢いよく少女に降りかかるが、寸前で爆発する。



 「こりゃぁ…… 透明な壁……?」



 ウェルドンが突撃すると同時に、テトラボルトも動き出していた。

 ウェルドンの攻める方向とは反対側へ移動し、体の中からガシャガシャと音を立てて武器を出す。取り出したのは魔法式のガトリングガン四丁だった。火薬の代わりに魔法によって弾を打ち出すものだ。

 ポポポポポ、という小さな射撃音の連射攻撃が少女を襲うが、その弾丸もまた少女のすぐ目の前で弾け消える。



 「想定外。貫通を狙イ、射撃を継続――」



 どちらの攻撃も通じなかったが、それでも謎の壁を突破しようと双方は攻撃を続ける。

 ウェルドンは爆破する金槌を、テトラボルトは魔法式のガトリングガンを、同時に浴びせる。

 しかし、次の瞬間。

 二人はシアンと同じように何かに激突したような衝撃と共に、奥の壁へと吹き飛ばされる。



 「このまま攻撃し続けるしかあるまい……」



 ボイドボーンとザ・ベールも攻撃を続けようと魔法を展開する。

 二人の背後に再度魔法陣が展開された瞬間。どちらもほかの三人と同じように何かに激突したような強い衝撃と共に奥の壁へと吹き飛んだ。


 殺されるという考えが全員の脳裏によぎった時、シアンがゆっくりと起き上がり、ボロボロの身体で口を開いた。



 「ま、待ってくれ! 僕たちは君と戦うつもりはない……!」



 必死に訴えるシアン。

 そこでようやく少女が口を開く。



 「わざわざ私の家に押し入っておいて……目的は何?」


 「順を追って説明させてほしい」



 シアンはこの城に来た理由を細かく説明した。

 自分たちは冒険者であること、また自分たちは冒険者の中でも核分野においてトップクラスの実力者であること、その影響で冒険者たちに狙われる身であったこと、安住の地を求めてこの森へたどり着いたこと。


 加えて自分たちの自己紹介も行った。

 この集団のリーダーであり、一対一の対人戦闘を得意とするシアン。多人数戦での対人戦闘を得意とするボイドボーン。モンスター狩りが得意なザ・ベール。ルーン魔法やアイテムへのエンチャントが得意なテトラボルト。採掘精錬鍛冶などが得意なウェルドン。


 それに対して少女も自己紹介をする。



 「私はシオン。ここの城の持ち主だよ」


 「城主がいるとは思わず、押し入ってしまったことを謝罪する」



 シオンは静かに彼らを観察する。特に、機械仕掛けのテトラボルトを凝視した。



 (データの所在が、この世界リファイナリーのロジックと違う。なるほど……)



 そこでシオンは冒険者とは何なのかについて理解した。

 そこから全員のことを観察し、それぞれが持つ能力からインベントリの中まで隅々と解析する。

 五人のことを真剣に見るシオンに対して、シアンが質問をする。



 「シオン、君は僕たちと同じ冒険者…… プレイヤーなのか?」


 「残念ながら、君たちの同郷ではないよ。もともとこの世界に住んでるんだ」


 「現地人…… なのか……」



 シオンは初めて聞く現地人という単語を、この世界にもともと住んでいる人々のことであるとすぐに察して話を進める。

 能力やインベントリを把握できる力というのは冒険者の中にも存在せず、もちろん現地人の中でも聞いたことがない。そのためシアンは驚きを隠せなかった。


 シオンは棺桶の中からゆるりと足を出し、部屋の中心にある竜の石像まで移動する。その後、石像の影に手を伸ばしてがさごそと探し物でもするように漁る。

 しばらく漁っていると、カチャという機械的な音が鳴った。それと同時に、部屋の前方あたりの床から大きな丸い机と椅子がせり上がってきた。



 「これに座っていいよ」



 突如出された机と椅子に、本当にシオンがこの城を理解している城主であるということを再確認する五人。

 いまだ警戒心は解くことはできなかったが、先ほどの壁まで飛ばされた衝撃を思い出し考え直す。圧倒的な力を前にしてここから戦闘に戻ることなど考えたくもなかったのだ。

 大きな丸机には計十一席の椅子があり、シオンが座った場所を中心にその近くに五人が座った。

 すると、全滅を覚悟していた五人に、シオンは意外な提案をする。



 「さて。君たちの望む『安住の地』、貸してあげてもいいよ」



 突如出された提案に五人はそれぞれ驚きの言葉を口にする。

 シオンとの戦闘で全滅の可能性があったとは言え、この城を巣くうモンスターを駆除できた際のメリットはとてつもなく大きい。

 人や冒険者がなかなか寄り付かない立地に加えて、幻惑の森という天然の防壁があり、さらに敷地自体は小さな町が一つ入るほどに巨大である。

 その場にいる五人とそのギルドメンバー計五百五十人ほどが住むにはうってつけだ。



 「ただし条件がある」


 「聞かせてほしい」


 「まず一つ目。城の中を改装したり増築したりする時は私に許可を取ること。そして二つ目。君たちのその不思議な力を存分にふるって私にいろいろな力や道具をみせてもらおうかな」



 出された条件に対して、五人は再度驚きの言葉を口にした。

 皆は無茶苦茶な条件を出されると考えていたが、あまりにも寛大な条件に困惑したのだ。

 しかし即答してはバツが悪いと考えた五人は、それぞれが考え思い悩むふりをして、最後に首を縦に振った。



 「よし。契約成立だね」



 こうして冒険者五人とシオンの不思議な同居生活が始まった。


 シオンが座りながら机に置いていた手を上げると、同時に塵が舞い上がった。

 その塵をきっかけに部屋の中を見渡すとあまりにも汚れていることに気が付いた。

 そこでシオンが休眠についたのは統合歴六十年ほどであったことを思い出し、実際にどれほど眠っていたのか確認しようと現在は何年なのかを質問する。



 「あー。今って統合歴何年かな」


 「今は確か……」


 「現在ノ、統合歴、千九百六十年一月三十日」



 無機質なテトラボルトの声が、静まり返ったホールに響いた。



 「千九百六十年!?」



 シオンが困惑する。百年の休眠のつもりが、彼女は二千年ほどもの間この城で眠り続けていたのだ。



 「ちょっと眠りすぎちゃったみたいだなぁ……」

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