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仮想世界の管理者、別世界の人々と巡り合う。  作者: Qoo


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1.冒険者騒動の予兆

更新遅めです( ˘ω˘ )

 魔法道具と魔法研究の国、エルドマグナ王国。

 首都であるエルミナスは大陸東端の更に東側南北の中央に位置している。西側は平野と森林と山岳地帯で構成された大自然、東側は大海原といくつかの諸島で構成されており、活気のある港町といった風貌だ。

 首都エルミナスは夜でも煌々とした魔法道具による明かりで照らされており、中でも魔法式列車『エーテルライナー』の中央駅であるエルミナス駅周辺は都会といっても過言ではない。


 エーテルライナー。

 それは魔力のエネルギーを回転エネルギーへ変換して走る魔法式の列車のことである。

 首都エルミナスから出ている列車が全部で三路線。一路線目は王国の南西に延びている南西線。二路線目は王国の西に延びている西線。三路線目は王国の北西に延びている北西線。

 この列車は王国の繁栄の象徴であり導線でもある。

 というのも、魔法道具の研究により首都近辺の町では夜でも明かりが確保されており治安もよいのだが、エルミナス駅から離れれば離れるほどその恩恵は薄くなっていき、最も西の辺境ともなると夜の明かりもなければ治安も最悪の無法地帯となるのだ。


 そんな魔法式列車エーテルライナーの南西線の終着点である町『テイルライト』。そこでは魔法道具の整備も中途半端な田舎生活を強いられている。

 しかし、列車の駅が通っている。というだけでもこの国では最低限の生活が保障される安住の場所である。


 南西線の終着点テイルライト駅。そこよりさらに西へ渡り、見えてくるのは列車による多くの恩恵を受けることができない町『ハーフウェイブロウ』である。この町は砦を中心に作られた都市であり、文明と自然の境界線でもある。

 しかし、列車による恩恵が少なくとも強固な砦とそれに連なる街並みは恵まれていると言える。


 ハーフウェイブロウよりさらに西。列車の恩恵は殆ど無く、文明の光すら届かない荒廃した町『ダストヘイブン』。文明と自然の境界線として挙げたハーフウェイブロウに対して、ダストヘイブンは自然に囲まれた僻地。建物は隙間風すら気になる木造の簡易的なものであり、住民もボロボロの布切れを身にまとっている。治安も最悪であり殺人誘拐窃盗等々日常的に起きている、いわば王国のゴミ捨て場である。


 そんなダストヘイブンにも人と情報が集まる公共施設があった。

 それは傭兵組合ダストヘイブン支部である。


 傭兵とは、一般人から王族まで様々な顧客からの依頼により、モンスター討伐や街道警備、はたまた護衛任務まで様々な仕事を請け負っている力自慢の何でも屋である。

 荒れくれものが多く、ダストヘイブンの荒廃した無法地帯にも適応して自衛をしながら生きている。

 それどころか、ダストヘイブンの無法地帯が心地よくこの町に住まう傭兵すらいるという適応具合である。

 そんな傭兵組合にて現在熱く語られている情報があった。



 「冒険者のやつらがついにあの『幻惑の森』に侵入するらしいぜ」


 「幻惑の森だと? 魔法協会が禁域に指定してる自殺志願者専用の森じゃねえか。何が悲しくてそんな場所へ行くんだよ」


 「なんでも冒険者同士の争いで安住の場所を探して幻惑の森へ逃げ込んだらしい」


 「ハハハ! 安住の地を探して魔境へ突っ込むのか? 冒険者ってのは、つくづく頭のネジが飛んでやがる!」



 大笑いしてビールを片手に語らう傭兵たち。

 その口調はバカにしていることを隠すつもりがないような煽り口調でもあった。

 それもそのはず。冒険者に幻惑の森。この二つは傭兵が酒を飲むには打ってつけの話題なのである。


 冒険者。

 この世界でこの言葉が指す意味は、異世界からやってきた謎の多い人種のことである。

 冒険者については数百年前から記録が存在していた。

 昔々あるところに、冒険者を名乗る者たちが現れる。人種や種族はバラバラだが、それぞれが皆、自身は異世界からこの世界にやってきた者であると話し、この世界の人々のことを現地人と呼んだ。

 冒険者の中には特異な力を持つ者たちもいた。例えばそれは強大な魔法の力であったり、高度な鍛造技術であったり、不可思議な錬金術であったり、はたまた現地人よりも非力で無能な冒険者もいた。

 また冒険者たちは、それぞれで同盟や戦争を行うこともあり、現地人がそれに巻き込まれることも多々ある。傭兵としては、そういった冒険者同士の争いに駆り出されることも珍しくはない。

 そして今現在も定期的に冒険者と名乗る者たちは唐突にこの世界に現れることがある。

 これが冒険者についての一般的な認識であった。


 そして幻惑の森。

 幻惑の森とは、エルドマグナ王国南西部国境付近に位置する大森林の名称である。

 この森は文明と隔離された地域にある危険地帯であり、森の中では様々なモンスターが独自の進化と生態系を築き上げている。その文明力の届かなさと森自体の危険性から魔法協会は禁域として幻惑の森を指定しているほどである。


 幻惑の森独自の生態系は実に怪奇的である。

 例えばエルドマグナ王国の森林全域に生息する『マナハウンド』は通常の狼より一回り大きく、魔力を餌として探し襲い掛かるモンスターである。しかし、幻惑の森に適応したマナハウンドは『ミストウルフ』として進化している。

 ミストウルフはもはや魔力を餌としておらず、幻惑の森に充満する胞子を餌として生活しており、その外見は大きさこそマナハウンドと変わりないが、輪郭が常にぼやけており、体そのものから霧を吹き出しているかのようである。

 このように同じモンスターでも独自の進化を遂げている。


 冒険者と幻惑の森。

 この二つの単語により、傭兵組合にいる傭兵たちは更に酒が進む。

 中には攻略できるか否かを賭け事として儲けようとしている者までいる。



 「なあ、もしあの連中が生きて帰ってきたら、俺たちも行ってみねえか? 古い遺跡の噂もある。一発当てれば、こんなクソ溜めともおさらばだ」


 「おいおい、魔法協会お墨付きの禁域だぜ? 罰金どころじゃ済まねえぞ」


 「ケッ、ここをどこだと思ってんだ。王国のゴミ箱ダストヘイブンだぜ? 森の奥で何をしようが、誰が気づくってんだよ」



 喧々諤々とした騒ぎの中、組合職員は深いため息を漏らし、荒れたカウンターを布巾で拭った。

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