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仮想世界の管理者、別世界の人々と巡り合う。  作者: Qoo


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0.プロローグ

 自己紹介をしよう。

 私の名はシオン。現実世界に肉体を持たないAI人格だ。

 現実世界には肉体を持たないが、最新のAIにより創られた仮想世界である『リファイナリー』の中を生きるものとして体を持たされている。

 外見は黒髪セミロングの艶やかな髪の毛が特徴的で、目元の泣き黒子がかわいらしい、年齢にして18歳ほどに見える日本人らしい風貌の少女である。


 ついでに仮想世界『リファイナリー』についても紹介する。

 この世界は、あらゆる要素がAIによって生成されているコンピュータの中の世界だ。

 世界中に生きるすべての生物にはAI人格が備わっており、あらゆる経験を経て成長する。その生物の成長と共に文明も発達し、AI生物によって作られた様々な文明が世界を形成している。


 自己紹介に戻ろう。

 あらゆる生物が生活しているこのリファイナリーだが、私はその中でも管理者としての役割を任されている。

 この世界における管理者とは、予期せぬAI生物が生まれた場合や予期せぬ自然現象が発生してしまった場合、それに対処するための役割のことである。

 また、管理者という言葉はこの世界では使われておらず、一般的には天使と呼ばれている。


 天使はこの世界に6人存在しており、それぞれが2つの権能を持っている。

 1つ目はすべての天使が共通で持つ権能である『対象のデータを視る』能力だ。この権能では生物や物体の内部データを覗き見ることができ、生物であればどのような特技があるか、無機物であればそれを構成する要素などを調べることができる。

 そして2つ目はそれぞれの天使が固有で持つ権能である。

 私が持つ権能は『拒絶』の力であり、所謂ブラックリスト形式やホワイトリスト形式でものを遮断する壁を生成することができる。攻撃にも防御にも使える便利な権能だ。



 そして今、私は棺桶とも呼べるような大きな棺の中で髪を結ったり衣類を畳んだりしていた。

 なぜなら、これから私は休眠とも呼べる長い眠りにつこうとしていたからだ。

 棺の両隣には見送りに来てくれた私の家族4人が悲しそうな顔をしている。

 家族とは言っても、同じ親から生まれた兄弟などではない。天使の力により体の構成そのものを私と同じように変質させた眷属であり、その眷属のことを私は家族と呼んでいる。



 「シオン様……今回の休眠期間はどのくらいになるのでしょうか……?」


 「予定では100年くらいで起きる予定だよ」



 棺の傍らにたたずむエルフのオーレリアンが不安げに声を落とした。

 それに対して私は、これから自分を収めることになる大きな棺の中で腰を下ろしながら答える。


 休眠は数百年周期で繰り返す天使特有の休息期間である。

 具体的にはこの世界で眠っている間に、裏ではインターネットの海を駆け巡り、管理者としてのAI人格のアップデートをしたり現実世界の情報をあさったりしている。

 オーレリアン含めここにいる家族たちは寿命が長く、休眠期間に立ち会うのも初めてではない。

 そのため、長ったらしい重い雰囲気の挨拶ではなく、家族たちが何をしたいのかを聞いて眠りにつこうと思い、私はそれぞれに質問をしてみる。



 「みんなは私が眠ったあと何をするの?」



 エルフのオーレリアンは答えた。

 「私はここから最も近い街で魔法の研究をしたいと思っています。限られた人しか扱えない今の魔法体系を解明して魔法をもっと全員にとって身近な存在にしたいのです」


 ドワーフのバグラムは答えた。

 「ワシはドワーフの街に戻って鍛造と精錬の腕をもっと磨こうと思っとります。そして世界一固いとされるインバリアント鉱石を加工できるようになれればと」


 猫の獣人のシャマールは答えた。

 「ワタシは世界を冒険して珍しいものを集めて回りたいと思っています。中でも骨董品や民芸品に興味がありまして……」


 竜人のアジュアは答えた。

 「オレは……シャマールと同じく世界を旅して強者を探そうと思います……中でも剣と魔法を扱う魔法剣士とは一度手合わせしたいものです……」



 私と過ごしていた間は趣味など無いようにふるまっていた全員が、趣味全開で回答した点について私は驚きを隠せなかった。最も付き合いの浅いアジュアでさえも50年は一緒にいるというのにわからないものだ。

 それぞれの今後やりたいことを聞いた私は全員の頭を撫でてから一言。



 「ここにいない薄情者な家族たちにもよろしくね。百年後くらいに起きたらまた会いに行くから土産話でも用意して待っててね」



 その言葉に全員が「いつでもお待ちしております」と身を乗り出して返事をする。

 ここにいない家族というのは、ここにはいないが私が眷属化した者たちのことだ。この場所に来てくれている4人は家族のなかでも私と頻繁に話す者たちであり、それとは逆で疎遠になってしまった家族もいるということだ。

 しかし、休眠のためにわざわざ見送りに来てくれるとは良い家族に恵まれたと思える。


 そんな素晴らしい家族に見送られて私は今棺の中へと寝転がり、蓋が閉められた。

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