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クリエイター 捨てられたアプリケーション  作者: 醒疹御六時
第一部 志(こころざし)
3/19

Ep3捨てられた。

期待していたソフトが販売中止の報告が・・・こんな経験みなさんありません?

わが社が作成した●×会社共同開発ソフト「悠久のデコロイド」が生産中止となる。

それは少女が自らの容姿を魔王デコロイドによって醜く変えられた、という設定である。

少女は国王プロティンに魔王討伐を依頼され、叶うなら“秘宝を以って美少女にする”といった目的。その主人公のステータス“容姿度”が1~100まで備えられており、その数値によって入れる町や洞窟が変化するという分岐要素を取り入れている。

我々は開発メーカーでもあるし、完全なるゲームという保証なんて出来る権利などが無かった。それが痛手となった。

「滝美さん、貴社のデーターコードがどうも不具合を起こしてしまってバグを発生させたらしいのです。テストプレイは如何ほど行ったのですか?」

「既に30万回テストしている。バグはユーザー側から報告があったのでしょう?それはどの様な感想だったのですか?監督はなぜ一度もプレイしていないのかなぁ?」


その報告というのは、プレイ中にキャラクターが停止する、ゲーム進行時に会話表示が別のメッセージになっていた、エンディング前になってラスボスが異様な強さで攻撃し全滅するよ、などなど悠久のデコロイドの開発陣における“伝えたいこと”がストップするのは大変だし、メーカー側としても苦情対応など設置していないために汗が出てくる。


「販売価格は9,080円で開発期間は6年・・・美しい少女の、魅力的なビジュアルが台無しになる事態が発生しているのですよ・・・」

「う~ん、わが社のデーターコードではなく、“美少女を勇者にする”こと自体がブームじゃなかったのかも知れません・・・その間に3本のタイトル出しているし」


規模がまだまだ小さいということ?

そこで開発段階で確認は怠るべきでない。

だがチームはどうだ?彼等にも体力の限界があると言われた。

診断書を提出されたし薬も飲んでいる・・・

厚生労働大臣あてに労災認定の方を訴えるとわが社の開発価格が高騰する。

困ったな、クリエイター業には労災認定なんて起きないのが現状・・・か。


「では、この電子メールに送信されているコメントの内、“男の子を勇者にするのが主流だったのでわざと裏技でレベルマックスに出来る仕様にした?”とか、“美少女は実は勇者の卵だったまでです、とでもいいたいのか!”なんて考察を取入れるのはどうでしょう?」

「次回作で“改善しました”ってこと?」


確かにリベンジするなら意欲作を作る方がいい。

製作期間を予定して価格設定などをすると、コンピューターのエンジンがパンクするかも。「それでもいいでしょ?」って製作監修担当の河見は言うけど総費用4,000万円で1年8カ月というスケジュール。わたしは「そのお釣りは幾ら?」と聞いてみたけど河見は無言で笑っていたよ。バレバレなんだよ、君は・・・。


まずはリアルタイムで時間が流れるという提案。

つぎはキャラクターが声優の収録通りに喋るけど主人公の名前を呼んでくれるパターン。

そしてユーザー・コメントから抽出した、レベル制限ナシ、卵から産まれる勇者、モンスターレベルが勇者に比べて強い設定なんで、装備の種類を34種類にしてみる。

あとはネットワークを通じて課金制度を設ける機能も追加する。キャラクターの職業がユーザーの入力文字に応じて変えられること、装備にユーザーが描いたマークを転写できること、ポインターがそこへクリックしないように調整するようプログラミングしておく。

あとはオマケイベントなんか加えるのもいい。

「青木さん。私ね、思ってたんです・・・」

「いいよ、言って」


チーフディレクターのまきが前作はできたら、“育成シミュレーションで作ればよかった・新作では育てることがポイントだろう”と開発陣との反省会でそう溢していたんだけどね、出来ていくと「同じようなゲームを作る制作会社が現れるから肝に銘じてね」ってわたしから教えて置いた。


―――1年10カ月後

5月30日、今日は新作「デコロイド・クリエイション」の発売日だ。

これはRPGロールプレイヤーゲームといった本人主体で楽しむジャンルである。

これは河見と薪が製作チームをまとめた意欲作でもある。

一方で、新年度、新規学生の卒業生が入社予定で面接会に参加しなくてはいけない。

息子もまた成長し、たくさん食べるようになった。時間が過ぎるのも早いものだ。

そして我が社も3カ月の期間中にも「プリントリス」の製作スケジュールを練っていた頃―――、

製作期間、開発にこじつけるまで6カ月の延期、色んなアイデアが功を成した。


「滝美社長、純利益2,039万円です。他のソフトに比べて200万円高いです」

「へえ、やったね~!これで会社も軌道に乗れるに違いないよ」


今年のスケジュールでは主体ゲームを1本、カルチャーゲームを3本用意していた。その総製作費1億1,300円掛かったよ。いずれ我が社も怪物ソフトと呼ばれる企業にしたい。一開発者としては各スタッフの新人を雇わなくてはならないし、そう願う。


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