ep19、嘘(デマ)でしょ?
この話、オマケです。
わたし、実は息子が居るんでした!
誰も「おめでとう」って言ってくれません。
名前?無名でどうでしょう。
きっと気に入るんじゃないでしょうか?
――□◆□◆□――
「託也って名前だ。みんな頼むぞ」
「はい、坊ちゃん、苦しくって息できません!」
――□◆□◆□――
滝美 託也って名前なんですよ。彼はゲームノミネート・エリート部門で合格しちゃって、わたしの椅子を引き取ってくれたのです。わたしが息を引き取った訳じゃないんです。
ですから、彼が代行して話を反らしてくれそうなんで宜しく頼みますよ!
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「坊ちゃん、まだ若いのに無理してません?」
「俺のフレーム強度がメモリーに耐えられないんだから当然だろ?青木、お前だって俺の強度に問題あるからって、目の前にクリームソーダ―なんて置くなよ」
「坊ちゃん、私は飽海ですって。まだ5歳なんですよ」
そうなんだ。こいつは飽海 投花っていうチーフプロデューサーなんだよ。親父のやつ、俺に意味の分からない”端子”GXM端子なんか授けるもんだから、フレームの伸び具合でキャラクターの美しさが溶けてくるんだよ。一体、何でこんな古臭そうなものを置いてくんだ?お陰でこのガキに俺が付いて行けないなんてバグ、どうにかしてくんないか。
「坊ちゃん、英才教育ばかり受けてたんじゃ未だ”ボーイズ・ドールへようこそ!”を制作できそうにないですね。3点満点の世界じゃないんですよ。もう私からしたらあなた、おっさんなんだから腰へし折っちゃってるんじゃありません?」
「こっ・・・こいつ、」
俺だって伊達にイラストレーション部門で99点採った訳じゃない。無理して新型パソコンの知識だって10分あれば読めたんだ。それをこいつは・・・1秒で読込んだ・・・電子かよ、お前は!
「滝美 託也・・・今や沖見の分家なる中小企業、よく生き残って居られますね」
社員14名で保っているこの小規模企業、親父の忘れ形見である沖見大恩人様の会社だって事はよく分かる。だけど俺はあんたと違って単なる端子じゃなくて、親父の美少女じゃなくて美男子ゲームを開発したいんだ。今更だって言わせないぞ!
ーーー「ボーイズ・ドールへようこそ!」企画会議ーーー
まずは男の子の名前を”波紋”という認知型指紋コントローラーで決めなきゃいけない。まず、名前が決まったら性格診断が始まって向こうの世界に飛んでゆくんだ。それから旅を30分続けてその場で性別なる、男・女・爬虫類・鳶子に別れてゆく。
男女は結婚する相手が変わる。爬虫類は部族の首長になるために必要。鳶子は屋根を上がるんじゃない。空を飛ぶだから天空ごっこを楽しむための設定だ。だから異論あるヤツ出てこいよ。
「はい、まず鳶子は子供を産む設定でよくないですか?」
「それって卵産む魚のやつじゃないですか。私は爬虫類は苦手です」
「男女ってありきたり。もう少し性転換するとか様子見た方がよくないです?」
分からない奴は、親父の部下そっくりだ。もうすぐ25歳超える奴らが子供らしい意見を言えよ。もう結婚して高校生の頃を忘れた訳じゃないんだろ?肥やせよ。その働かないアリみたいな表現はやめて。
「まあまあ、これでキャラ設定合わせます。ところでスタートラインに立つ島はどこにします?」
「島って言ったら流すじゃない。例えば滝のある場所からでいきません?」
島から無事帰ってきたのは漂流した者だけだ。ちゃんと塩水飲んで海藻食って生き延びて干からびかけたのを島って言うんだ。俺なら滝じゃなくて運河のほうがいい。隣で静かに飽海のガキがシースープ飲んでるのイライラするんだよな、何か言ってきそうで迷惑するんだよ。
「島の滝がラインならそこから突然、学園に行くのはどうでしょう。バラが欲しいでしょうし無理して冒険でモンスターやっつけてレベルアップする時代はもう古いんですよ。敵から金品奪うとか、物品頂戴するとか、既に老人の域でしょうね」
「滝美社長・・・彼5歳なんですよね?」
「ああ・・・もう少子化防いだからな、入れたんだよ・・・」
詰まった腸みたいに説教垂れる奴、悪くは無いんだが意地悪なんだよ。命令ばっかりすんなよ、おっさんには優しくしてくれ。自問自答するから迷惑なんて言葉は要らん。大天才様って呼んでやるから、お零れ頂戴?
「オジン、いいですか?」
「なんだよ、説教か?」
「まず、スタートラインは90分勝負で、遊び心として基礎ステータスを作る過程としましょう。それからその島から現れる”謎の新大陸”を設定しておくんです。そこから人々だけじゃなく爬虫類とか居るなら協力者集めなくては、学園さえ出来ないでしょうに・・・ズーズー、あ~美味しー」
学園では成績ポイントを獲得する。それで気に入った男子が居たら声を掛ける。すると仲間になって学園の外になる街を探しに行くんだ。それに探すだけじゃなくってクリエイトする事も出来る。そうする事で繁華街ができて、他の学園を作るようになるんだ。そうすると美男子が寄ってきてセレクトする事も可能って寸法だろ?
「笑うわ。社長、誤魔化すんじゃないんです。大陸を作るんです。だって謎の大陸って無人な訳じゃないんですよ。ほんの小さな村が点在するので、その人たちと協力して子孫繁栄を共にするんです。時に従えば刻む音が聞こえるような出来事が始まるんですよ、あとプレイ時間少なめにして下さい。ゲームは一日1時間23分で山を見たらスタートして学校や仕事へ向かうんですよ?」
おいおい、お前って時々冗談ぽくいうよな。それじゃ過去のアプリゲームと変わらないじゃないか。
「アプリですよ、予算30万円の」
そうだよ、超低予算で人材能力は問わずだったから、無理してゲームにしたんだよ。それに過去のベースになりそうなものがあったんで、それで開発費用・期間が大幅に減らせたんだ。もう少し時間くれよ。エリート部門卒業生なんだぜ?
ーー「宇宙の滝美」ーー
わたしの事、覚えていますか?
何年経った事でしょう、あれから2年経ったんです。宇宙空間って広いんだなって意味です。最近の新作知ってます?「腸宇宙遺伝ゲーム」ってアプリ、腸の中を宇宙美少女が対峙するエイリアンを倒して綺麗にするシミュレーションゲームになってるんです。蒼き宇宙の頂となれるのです。宇宙飛行士じゃないんだからガスは出ません天然もです。
「社長、定年超えて腸活しなくちゃいけなんでしたね」
「青木くん、わたしはね健康寿命18歳って言われたんです。宇宙空間でスペースドクター・チームやってる迷惑なインベーダーをやっつけたのと変わりません、安心泥棒です!」
託也を”物置”に勤めさせておいて良かったと思います。だって彼は生意気過ぎて噛み付くんだから少々、オイタしなくちゃ痛みにも耐えられないでしょう。だから5歳の誰かさんの息子を頂いたんじゃなかったんでしたっけ、ねぇ青木さんの親戚?
青木jr「はい、社長の分身はいつもの通り機嫌が悪いですからねーそっくりさんですねー」
わたし「はい、君にそっくりでよかったです。突っ込み相手が居なくては駄目ですからね」
人の事は言えません、他人じゃないんですからゲームを気楽に作ればいいんです。もう少しこのプカプカ浮いてる時間をわたしに与えてください。なにせスペース部門トップなんですから、ねぇ地上の託也、息子の割に元気にしてます?
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ーー「ボーイズ・ドールへようこそ!」完成ーー
仕方ないな親父は。分かってるよ皆、美男子をドールにしろって事だろ?だから美男子をセレクト出来る様に頼んでおいたんだ。やっと出来たぜ、なぁみんな~?
―――スタッフロール―――
天野 鳥子:エーメル 唯出 呉世:ドーファン
時波 繰乃:オーデン 鋼弟 双理:グルーデン
海地 起太:マーキス 薪雄 割殻:アーシャ
SE:VTMR・雨季 BGM:ノーベラス柴本RF
ATDL:大木 翼世 モデル:na-naバル
――製作:滝美電子中立事業所――
営業部 AOKI 宣伝部 TAKUYA
スペシャルサンクス
誰茂 引佐ジャー版クロス 田滝之委員会
総監督:仕方 内那
「おお~出た出た!気が利くねぇ~」
――「テストルーム」――
「社長、あんまりにも立ち絵多いから、昔のアプリだって反響来てますよ」
なに、そんな事スルーしとけよ。
「これってRPGじゃないか、って言われてますよ。”どこがシミュレーション?”って、」
無理すんなよ。冒険だって決めたんだろ?
「美男子がモンスターみたいに立ちはだかって攻撃するの”やめろ”と言われています」
へぇ~そうかいそうかい。予算30万円だから当然だ、ふん!
今回は挿入歌を入れないようにした。声優に力を入れてもらいたくて精一杯のプレゼンテーションにも適用可能な内容に収めてみた。「誰だっていいよね」って突っ込んでもいい様にみんなで楽しみたかったんだ。だから週刊誌にも過大にならず「評価だけでいいから」と宣伝をして貰った。
「社長、デマ広告やめた方がよかったって顔してますね」
そうだよ。お前が親父の秘書の親戚だから見抜かれてんだよ。もう、その平面顔やめろよな。だが俺はそれでも親父の跡を継いだんだから、少しでも面白いゲームを作って居たいと思う。もう少し時間があれば出来るっていうのは俺の”端子”が未だ「時代に追い付いていなかったから」ってオチは終わりにしたいよ。ねぇ皆はどう思うのかな?
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コメント:終わりにしたくないからって?
コメント:滝美よ、青いな。
※GXM端子
ゲーム・エックス・メモリーの略。
”新世代のゲームメモリー”なる端子の意味です。




