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Ep14、マスターインベーダー

脳震盪って知ってます?


前回このような投稿が在りました。

「今度の新しい企画書に不備が在りました」


わたし、少し考えたんです。この意気込み何が不備かと言いますと?

「社長、人間の体に不備があったと研究者が嘆いています」


何言ってんの?不備どころか健康診断入り乱れているよね?

「だから遅いってば、君がいろいろ探るからフレーム数間違えるって!」


フレーム強度なんて車庫に入れてれば錆びないでしょ?整備士さん言ってたよ。

「いえ、ですから絵の問題じゃないって言ってるんですよ・・・」


右フレームが傷んだら左フレームが補佐してくれるってお医者さんも言っていたのでは?それに我が社の仕事って主に端子扱う仕事でしたよね?君達は募集要項を見ていなかったんですよね?


求人票№569

社名:沖見電子開発“共同”会社事業部

概要:ゲームキャラクターのフレーム強度及び、弾力テストを行います。従って応募者の中から格闘技に強い人を募集しております。特にアスリート関連の人は我が社の事業部にある防弾工具を使用し、そうでない方は医師の診断書を持ってきておいて下さい。

責任者:滝美誠也 及び 整形外科医 及び 脳神経外科

応募人数:30名

福利厚生:なし

給与:時給3,090円(一診察費用、一部負担として)

―――――

と、色々細かなテストをしたいんだけど皆、乗り気じゃないみたい。定年間近のわたしだってそりゃ嫌だもん。「金じゃ人は買えない」ってよく言いますから重々承知の上でモノ申し上げます。

「まず、肩幅から計測します。それから身長と足踏みで反射速度を測ります。脳みそは置いといて?置くって意味は離すという事じゃないんです、どうかご安心ください」


我が社の端子には温感、頚反射、脳波、味覚、聴覚、遠近距離などなど、ベルトにセンサーを付けている形となります。ですから痛みに対してどの程度の負荷が掛かるのか、も計測する代物なのです。さて、その成果は如何ほどに?

「あの、アスリートAさんのパンチに、素人Cさんの生身に負担が掛かり過ぎ・・・」

「Cさんの体感に、後ろで支えているVさんの関節にきしみがあって、痛いと・・・」

「社長、これは幾ら何でも行き過ぎではないのですか?」


確かに、キャラクターのリアルさを求めるには、衝撃に対して凹み具合なんかを計測してりゃ大変痛くて怪我もするでしょうよ。その為に先生方に診断書いつでも出せますって話を持ち込んだのです。廃業寸前そうぎまえのクリニックって在り得ます?

「端子受動態に人間のキックが耐えきれないと、人体断裂クラッシュばっかり起こすんじゃ?」

「これ、フレームルートの飛距離のタイミング計ってるんですね」

「じゃあ、軽度・靱帯分離症で一診1,500円と致しまして・・・」


我が社、これでも世界に君臨したバケモノ企業なんですよ。それくらいの費用じゃビクともしません。クリーチャーとなるモンスターの中から美少女が現れるなんて誰が想像するでしょう、とわたしが思うには計算が足りなかったの。

「社長、今回の採用4名しか集まらなかったんでいいですけど」

「30名だと保険料が倍増しになるんです、だから“端子の弾力なんかをテストした”って文句言えば問題ないと?」


意識がありません。「モンスターガール」ってタイトルに何でゲーム性なんか取り入れたんですか?頭痛くならない?北見君、君の化けの皮も剥がれそうで良かったです!前回までのゲームアプリが未だ面白くないとの評価で再度、開発に至った訳なんですよ。税金無駄遣い禁止って事にはならない筈なんです!

「フレームの変形・形状に従って凹凸部分が変色するんです」

「結構、ベルトの強度を上げたんですけど、上げるんじゃなくて下げて?」


これはトカゲの亜種を参考にデーターを掘り起こした、ってコンセプト。定年間近の知識のボカし具合でクリーチャーが残酷な形状でなく、色鉛筆画みたく可愛らしく変形するって、子供向けに最適だと思うんです。

「アスリートの衝突に対して生身から音が出る、可愛らしく、テュリンって」

「美少女が~ギョエエーでなく~ヒャンって声出して。合成声優作ってよかった」


これは只の格闘ゲームじゃないんです。モンスターの正体を暴くに従って、冒険するエリアが増える仕組みなんです。ついでにボーナスポイントが手に入るとネット通貨が現れる仕組みなので、15分だって複数人プレイも出来るんです。個人プレイ環境なら金貨として換金されるんで、かつて成人だった高齢者でも出来ますと。プレイ感覚は覚えているでしょう?

「そうなんです。ゲートボール方式を採用しているので簡単です」

「キーボードやボタンを無理に打つと、肩凝り酷くて大変でしょうし」


もはや、10センチ×10センチの環境でも大文字なので見た目がコミカル、幼稚園な子だって総プレイ30分でしょう?アスリート対素人って設定にも、無理があるって事も特にない筈なので。ええ、素人も100年前は格闘オーディションに受かる程の実績が幾つもあった訳でして!


―――――――「モンスターガール」―――――――

発売してから説明書が“面白くも無い”と意見がありました。

1,美少女が優雅に飛び回るのに、なぜ説明ではアニメがないの?

2,プレイヤーとモンスターの位置が3センチじゃ伝わりにくい!

3,定価3,200円と云っても、どうも開発陣で無理をしている。


「青木さんは今日お休みです。呆れたんだそうです」

昔はマイクロマインドって媒体が発売されていた。5センチ×8センチの本体で他社のミクロチップの搭載されたゲームソフトが縦横無尽に動き回る、総勢60キャラクターの格闘ゲームがカラーで映る、とても目を使う画期的と呼ばれる代物でした。それを応用したんだし説明省いても操作感覚で分るようにしたのが、「モンスターガール」なんです。総開発費用は無理言って900万円で抑えました。診断書?医者代?実はボランティアなんて知らずに来たんでしょーね。

「冬前なのに雨季に入ると肩凝りますよね」

「視力安定しない、眩暈が出てくる、目薬1分効果」

「この度は、シャキッとしない時期と・・・お薬処方しましょうか?」


皆さん、ボンヤリしてても共同開発って事を忘れてはいけません。誰だって不満はありますし、お互いカバーし合ってるでしょ?「不眠で・・・」とか「ご近所に活発な老人が・・・」とも「言い合いする格闘みたいな・・・」なんて話、実はカバーしてるって事気付きません?痛みには温度を感知させるんですよ。痛くなったら言ってください。

「社長、痛いです。モンスターガールにバージョンアップした、ユーザー様方からのコメントに対応必須です」

「社長、泡吹きました。開発陣のモーションチームが飲み過ぎて」

「ゲームって探す事じゃないですか?攻撃し合って探すじゃもどかしいでしょう?」


なのに、売上本数340万本なんです。刺激が在るってこういう事なんですよ。15分間毎に診察しては自分の意見カルテ提出するって本当に存在するんです。もしも家族が居ない時に嫌な思いをしたら、言ってください。「モンスターガール」はインベーダーだったんだって話すだけでいいんです。

テュルルルルルーー

「はい、こちら社長室」

「“もしもし、青木です、”」

「どうしたんです?」

「”今日は息子が熱を出して、インベーダーと闘ってるんです”」

 休暇延長は我が社の場合、一言いえば許可します。たかが熱、されどモンスター、如何なるインベーダーとも闘う親子像は散々こりごり聞いてきました。そんな我が社へ入社したなら大事なお子さんをどうぞ守ってあげてくださいね。


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