Ep12,契約書と王様
ET・T社との商談の話。
美少女ゲームは当時、珍しいものでした。
現在は主流となっております。
ヒーロ、ヒロインとしてです。
『社長あれから届いたの見ました?』
『なん?わたしに?どれ、』
045年3月17日
沖見電子開発事業独立会社
代表取締役 滝美 誠也 殿
記ET・T開発事業営業部 代表
担当 他田 嘉指太
「新ビジュアル・ガール計画」
拝啓ますます、盛り上がりました事を大変喜ばしく、現生風土のある作品、我が社にとっても感慨深い次第です。
記
ところで、覚えていますでしょうか。
この度発売された「ジョイ縁クエスト―少女―」は、我がET・Tにて権限すべてを、御社の端子開発に借用協力した件です。先日、滝美社長ご自身から契約料金2,000万円を借用したところ、反響型音声演奏の開発テストが未定のままとの事でした。
すべての権限は確かに現在、御社だけかと思われますのに、我が開発研究部 SOTAでは版権契約を他社へ送りたいとの意向で御座います。
そこで大変恐縮ながら契約料金は、弊社の方へ半額返金致すよう、ご相談があります故、どうかその件、甘んじてお受け頂けますでしょうか。下記番号にて口座番号振替をお願いしたく考えております。万が一盗難等、起きました場合に限り、更に半額にて受け付けております。どうか、ご検討の上、返答のほど宜しくお願い致します。
口座番号:x3bb60●NN55●1#
ABMにて「契約料金1,000万円担保」と音声ガイドに従います様に。
以上
勿論、そんなこったろうと、思いましたよ。ええ、仕方がありません。我が社の負担が度々、半額になってゆくのは、御社のほうでトラブルがあったって事ではないの?知らんと言ってやればいいのかい?反響型音声演奏システム発表したの我が社なんですよ、ええ、他田社長さん。あなた意味分かってますよね。
――046年3月17日「ジョイ縁クエスト―少女―」の反省会――
“只今から、沖見電子独立記念を評します!”
わ――、わ~~パチパチパチパチ
「定価8,800円と最新機能を取入れた意欲作でした」
「ボーカル、作詞作曲、データープログラマーの3構成で開発した訳です」
「当社のスタッフ4名だけで仕上げられたなんて、未だに信じられません」
その頬、つねってあげたろうかい?
「今回、社長の手助けでどうにか開発にこじつけたんですが、」
「あの会社でしょ?とんでもなくずる賢い企業ですよね?」
はい。その通りで間違いありません。
「当社のバックアップ機能たる、音声反響端子を使っておいて、返金ですか」
「締まりがないんですね?青木さん青あざ作ってましたっけ」
そりゃ、そうでしょうよ。彼女自らつねっていましたんで。あ、見てませんよわたしは社長なんで「とても事情に冷たいんです」って教えてあげてください。
ところでゲーム内容なんだけど、本ソフトはコンシュー・マー王国学園に勤務する16歳の少女がせっせと教師の荷物持ちや、家事手伝いで小遣い稼ぎをすると、クエストイベントが発生し、ようやく冒険をする事になります。その珍品たる宝石を王国の隅っこに配置してある“SITIYA”に売ることで“AMP”が入っていきます。
AMPを基に自然を徘徊するモンスターと協力を得られる事で“KINNSENN(キンセ―)”という経験値が入りレベルアップを果たすと、今度は恋愛イベントに突入するんです。大体が街の案内役なんですけど売れるんですかね、あのヒットメーカーと人材使って音声録音したものを、我が社のコンピューターで制御するっていうシステム最強でしょう?そんな開発に携わった“王様”だって必ず注目する事、間違いない!
――来たんかい!――
「滝美社長さん、我が社でも悪い話じゃ御座いませんよ?」
「あのー、何で振替方式なんて使ったのでしょう?」
オハナシ事情によりますと、どうやら資金調達が間に合わず、版権導入なんてモノ時代遅れと言っておりまして、少しやぶ蚊みたいに痒いんです。帰って欲しんですよ方針ブレが激しいアナタの社!
「しゃーないでしょう?ね、フードメニュー如何です?」
「わたし、猫じゃありません、社長ですピザ食べます」
店員さんこちらです、誠心誠意込めて4つ切りにして下さいこの王様を。
「あの用件でしたら、他の開発事業部から御社へ使用許可の旨、伝えておきたいと」
「土下座するんです?今、食事中で美少女計画中あ~んでもぐもぐもぐ・・・」
聞いたんです。ゲーム開発におけるトラブル回避の旅に巡りたいんですよね?お陰で我が社の費用1,000万円を振り込む形となったんですけど、知ってます?ライバル殿、あなた、新ビジュアル・ガール計画をわたしに推薦したじゃないですか。
「滝美さん、美少女描くとき、何が大変なのか知ってました?」
「あ~んぱくぱく、ごくんっ、社員任せなんで、黙秘します、」
「まぁ、早食いです?中古市場止みそうなんですけど?」
「ふぁぁ~、ンッ!??」んぐんぐ、トントントンッごっきゅん!
確かに、中古市場が止まった事はニュースで報道された。だが、万が一我が社のように開発事業に携わった各企業が分裂しては、製造ラインがストップするかも知れず、この世に生き残る事さえ厳しくなるんだから、下手したら廃業だよ。もう少し中古市場とのバランス考えて動かないといけません――!
「それで、ETT代表である他田さんとしては市場をどのように?」
「簡単そうですね、他の事業に転身したという噂は常々、」
「逃げるが勝ち。我が社はカツが逃げると、」
「もう、お互い老化現象早いんで、社風乱さないよう気を付けましょうね」
市場調査を行ったところ、他社との競売率が今までに無いほどの勢いで、上昇していたので、端子一個開発した処で、市場競争は動かないと言いますが訳分からん。
もう、新企画中なのに“王様の椅子取りゲーム”って有名じゃないです?もう少し、落着いてくださいね67歳なんだからね?
「時に、滝美さんの開発チームの方で狙っている商品なんですけど、思い切って10テラバイトの容量で製作してみては如何でしょう?“膝取り陳謝”というゲーム、」
「あれは5ギガバイトあれば、単純ゲームなので、スキマ時間に遊んで頂くのが我が社のユーザー獲得になるので、この度の我が社の場合、期待に沿えず消極的であります」
そんなに容量食う媒体はHD搭載型内臓パソコン以外じゃ無理なんですってば。せめてもの償いでしょうが、弊社と致しましては全社員に休暇を与えたく、、、『だから社長はラクダなんです』って言われちゃうじゃないですか。
「今が、チャンスだと思って頂きたい・・・」
「闘う準備はドラムと共に?」
「ははは、あなたは“強王”ですね」
最早、おじいちゃんに成り合いっ子ゲームにハマっちゃうと、抜け出せないんだから商品交渉は少し手短に行って頂きたく、はい。しかもわたし自身、中古市場は車でも理解得てますんでご心配なく!
でね、あなたの事だし美少女メーカー沢山居るのに、負けてられないんですって言いたいのも分かるんですよね、ライバルさんよ!
「私はこれで・・・滝美社長、念のため検討お願いしますね」
「その椅子、温かい・・・」
くさっ!公共の場で屁したんか!?
「時代は開発メーカーにとって順位を争う立場となるので、共同開発したいのなら、」
手を貸しますと?早くそれ言ってくださいよね、無償なんでしょう?あなた、そうやって儲けてきたんですからね。おじいちゃん孫にお小遣いあげたいんでしょうにィ。
ヒットメーカーからすれば、新機軸の技術は取入れてみたい。その分、何百億単位の資産が吹っ飛ぶ。できればオーダーメイドでカスタムしたいんです我が社の場合、変態社員沢山いるので、声かけたら噛まれるんですよ。ねえもう、そろそろ企画できたそうでアンタと話をする旅は終点と致しません?いいですよね、御社ってET・Tだしねぇ。
――我が社沖見です――
「で、社長は断ってきたんでしょう?」
「はい、通帳銀行はうるさいんですね」
「・・・」
青木さんあなた、奥様事情知っておりますよね?大きな買い物したら必ず、養育費請求するタイプなんですから、目くじら立てなくて眼科受診は許す。保険適応は4割の時代なんで我が柴本の国はね。
「これ、新たな企画書です」
「リージュ創園のリバイタル?」
12歳の少女が亡き母の形見としていた、化粧を付けてスキルを得るゲームだって。これで買い物できたり、目の前の障害物なんかを持ち上げてアイテム入手も出来るんだって。何処かで煮たような鍋だね。クリエイト要素は廃止したんで気軽に僅かな時間で、クリアできる様に工夫している様です。さてはあなたモンスターテイマーなんでしょう?
≪そうです。テイマーできるんですよ、あなたをね≫
って、セリフを吐くんだそうです。小学生高学年の少女が、なぜ我が社の新入社員と成らないのでしょうか?いつだってクリエイターは不思議に思うのです。我が手でプログラム打ちたいんだと壊れてゆくんです。で、このイラスト滓間さん起用のものでしょう?童話好きなのPRしてたの覚えてまして?
「BGM・SEは拓野君が一人で担当しました」
「久々に腕が鳴る、頭が痛くなる、診断書来るな」
「いい契約テイマーできるといいんですけどね」
いいえ、あなた社長でしょうに。テイマー幾つしましたっけ?とか、柴本以外の国にもテイマーしたの覚えてください、とか、王様椅子取り成就おめでとうございます!・・・って言ってくれれば良かったんだけどね。分かりました、次期社長候補と記載しましょう、では嘘です。




