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最終話 想いを込めたメロディ

 あの朝からボクの作戦は始まった。


 その名も田中一家仲良し大作戦だ。


 まずボクがマイちゃんを連れて部屋の外に出る。

 そこから、お父さんとお母さんにごめんなさいをして一緒にご飯を食べて、好きってことを伝えて元通りって感じの完璧な作戦だ。


 これならちゃんと気持ちを伝えれるし、マイちゃんもお父さんもお母さんも心から笑い合えるはず。

 でも、現実は上手くいかなかった。


 まず、マイちゃんが言うことを聞いてくれなかったんだ。ボクが喋れたり、動けたりしたことはすんごく喜んでくれた。


 だけど、それとこれとは別なんだって。


 「もう子供じゃないから、そんな簡単にいかない」とかも言ってた。


 大人と子供の違いとか、ボクにはよくわからなくて、そう言われても困っちゃったんだけど……。


 マイちゃんが嫌がるから止めたんだ。


 仕方ないよね。

ボクがここにいるのは、マイちゃんも含めたみんなに笑顔になって貰う為なんだもん。


 だから、今度はボクがお部屋を出てお父さんとお母さんに訴えることにした。


 お父さんとお母さんが、先に想いを伝えれば、塞ぎ込んでいるマイちゃんも素直になると思ったからね。


 二人にボクのことを明かした時は、すんごく驚いていた。


 お父さんはこーふぃーを吹き出して、ずっと苦笑いしてたし、お母さんなんて腰を抜かして立てなくなったくらいに。


 だけど、ちゃんと挨拶してお話してたら、落ち着きを取り戻してボクの話を聞いてくれた。


 それでも上手くいかなかった。


 マイちゃんはもう子供じゃないから難しいんだって。


 「今は、そっとしてた方がいい」とかも言ってた。

 マイちゃんはお父さんとお母さんの子供なのに、子供じゃないってことらしい。


 やっぱりよくわからないよね。


 子供と大人ってなんなのかな?


 考えながらもボクはマイちゃんの部屋に戻ったんだ。


 今、ボクにできることはないから。




 ☆☆☆




「マイちゃん! お父さんとお母さんとお話しようよ!」


「…………」


 話し掛けるけど返事もしてくれない。

 

 ふとおじいさんが弾いて歌っていた曲を思い出した。


 さみしいけど、かなしいけど、胸がいっぱいになって何だか元気になる曲。


 ずっと弾いていた曲の一つ。


 何度も聴いていたんだ。


 もしかしたら弾けるかも知れない。


 今のボクは足も動かせるし、腕も動かせる。


 おてては蹄でおじいさんやマイちゃんのように動かせないかもだけど。

 

 でも、声も出るし、想いの全てを込めることもできる。


 ボクはピアノの前に行ってカバーを外す。


「クーちゃん……なにをするの?」


「いいから聴いてて!」


 おじいさんが鳴らしていたのは、この辺だったはず。椅子に座って記憶を頼りに音を鳴らした。

 


 ――ポロン♪



 うん、この音だ。


 よし、好きっていう気持ちを込めて。


 お歌も!


「もしも〜♪ ピアノが〜♪ 弾けたなら〜♪ 想いの全てを――」


 そこから、おじいさんとおばあさんの日々を。

 泣いてるマイちゃんをぎゅーって出来なかった毎日を浮かべながらお歌を唄いピアノを弾いた。


 


 ☆☆☆




「ゔぅぅ……」


 マイちゃんがベッドで泣いてる。

 背中越しだけど間違いない。

 泣いてる。


 ボクの想いが届いたかな?

 嫌な涙じゃなかったらいいな……。



 ――ガチャ。



 急に扉が開いた。



 そこにいたのは――。


「マイ!」


「マイちゃん!」


 お父さんとお母さんだ。

 二人とも目に涙を浮かべている。


 お部屋に入ってくると、すぐさまベッドで丸くなっていたマイちゃんを抱き締めた。


 お父さんにもお母さんにも、聴こえてたんだ。

 きっと伝わったんだよね。


 ボクの好きって気持ちが。


 だって、みんな素敵な顔をしてるもん。


 ボクが振り向いた先には、泣きながらも手を取り合って幸せそうな表情を浮かべる田中一家がいた。


 ボクもそばにいきたい。


 椅子から降りて、ベッドで抱き合っているみんなにくっついた。


「みんな、大好きだよ。仲良しでいてね!」


 お父さんとお母さんは頷いてくれたけど、マイちゃんは恥ずかしいみたいで目を逸らす。


 ふふっ、まだまだ田中一家仲良し大作戦成功には遠いけど一歩前進!


 これからもみんなを笑顔にするからね。

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