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ヤラセ勇者の英雄譚  作者: 閃きゴリラ
第一章 ダンジョン編
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「おっけー!隠れてろ!」

おはようございます!翌日の朝です!


と言うことで俺たちはダンジョンの目の前まで来ていた。


一見するとただの大きな洞窟にしか見えない。

イメージ的には秋吉台。まさか中には巨大な鍾乳石が!

残念、居るのは巨大な魔物です。


そんな危険な場所なので、入り口には関所のような小屋が設置されている。

その小屋の看板には『管轄:冒険者協会 指定危険区域にて無断立ち入り禁止』と書かれている。


ちょくちょく名前の出ている冒険者協会って何ぞや?と思われているかもしれない。


基本的には皆んなが想像するそれとそこまで相違はない。


基本国に属さず、各地の魔物による被害を防ぐための依頼を受ける組織だ。

討伐依頼に採取依頼、保護地域の保全や危険地域の警備などを行っている。


そんな冒険者協会が無断立ち入りを禁止している危険地域。

つまりやばい場所ってこと。


うーん、行きたくなーい。けど行くしかなーい!


周りの準備も整ったところで、セバスさんが懐から何やら一枚の紙を取り出す。


「セバスさん、なんすか?その紙」


「こちらは冒険者協会で発行できる立入許可証です」


そう答えた後、紙を小屋のポストに投入する。

すると小屋の周りを覆っていた薄い膜のようなものが、スーと消えていった。


「え?何が起きたの?」


そんな俺の言葉に、セバスさんが答えてくれた。


「今の許可証を入れることで、結界魔法が一時的に無効化されます。

もし無視して立ち入ろうとすると、焼けるような痛みが全身を襲います」


え?何それ怖い。

まあでもあれか、そこまでしないと誰かが間違って入ったりするのを防いだりしてるのか。

あと魔物が外に出ないようにとか?


スムーズに小屋へと入っていくセバスさんの後ろを、恐る恐る追いかける。

すると特に何もなく、小屋に入ることができた。

直前に全身が焼けるように痛くなるとか言うから、怖くなったじゃん。


小屋の中は荷物を置いておけるロッカーと、なにかの誓約書が……。


何何?

一切の命の保証はない?

許可書に書かれた日数を過ぎて、音信不通の場合は死亡扱いとなる?


…………行くのやめなーい?

そうはいかないよねー。泣きそう。


半泣きの気持ちで誓約書に名前を書く。

そして野営用の道具などをロッカーに入れて、いよいよダンジョンに入る。


ダンジョン内ではイルゼンを先頭に、ミール、俺、王子、フウカ、セバスさんの順番で進んでいくことに。


いざ入ったダンジョンの中はとても暗い。

基本日の光なんか入らないし、誰もここにランプを設置したりしてないから当たり前だ。


入り口があれだけ充実してたし、ちょっと期待してたんだけどなぁ。


こう言った場合、冒険者たちは基本松明やライトの光でなんとか頑張って進むらしい。


味があってかっこいいかもしれないが……。

思い出してほしい、モンハン3を。やったことない人はイメージしてみて。


真っ暗でいつ魔物が襲ってくるかわからない洞窟を、松明だけで歩く恐怖。

失禁ものである。


だがうちに最高に優秀な魔法使いがいる。


「ミール、頼んだ」


イルゼンの声に合わせて、ミールが杖を少し持ち上げる。

すると杖から小さな光球が出てきて……パッと大きくなった。

そのまま視界の範囲を昼間のように明るくしてくれた。


すげぇ!フラッシュだ!ドーミラーに覚えさせてたわ!


と言うふうに魔法使いがいると、光問題は割と解決する……とは普通いかないらしい。


と言うのも本来の光球を作る魔法は、できて懐中電灯より少し明るいくらい。


じゃあなんでミールはここまでできるのかと言うと、光球自体は小さいままに視力はバフをかけて見えやすくするだのなんだの言っていた。


理由はよくわからんけど、ミールはすごい。ってことで納得した。


そんなリアルひでん技女子のおかげで、俺たちはスラスラとダンジョンを進んでいく。


「なんかもっと魔物来るのかと思ったけど、あんまりいないね」


俺がそう呟いたのを聞いて、ミールがこちらを振り返る。


「そりゃ私が魔物避けの魔法を使ってるからね。

こんな表層ぐらいの魔物なら近寄ってすら来ないわよ。

中層以降はわかんないけど……」


ほぇーすげー。つまりフラッシュと虫除けスプレーの同時使用ってことだ。


なんて感心していると、後ろから王子が一言。


「複数の魔術を同時使用とは……流石ミールだな」


「やっぱすごいんすか?」


「ああ、かなりな。

今のミールを魔法の使えないタケに伝えるとしたら、そうだな……例えば算術の計算をしている最中に、逆立ちしながら料理をしている。みたいな感じか?

まあつまり同時並行で全く違うことをしているようなものだ。少なくとも我にはできない芸当だ」


うわお!すっげぇな。

でも計算式を口にしながら逆立ちして料理してるミールを想像するとかなり面白い。


そんな便利ポケ……間違えた。便利人間ミールのおかげで本当に順調に進んだ結果、俺たちはものの30分程度で次の階層へ降りる階段を見つけた。


「順調だな。このまま降っていくぞ!」


そう声をかけて階段を降りようとするイルゼンを、俺は制止する。


「まだ一層の行ってない場所が多い気がする!ここはもう少しこの表層を探索するべきじゃないか?」


だってでまかせじゃなくて本当に宝箱あるかもだし!

俺は夢を諦めないぞ。


後このスピードで行軍してると、割とすぐ深層にいっちゃいそうだし。


「一層なんてすでに他の冒険者たちで調べ上げてるだろ。他に何かが見つかるとは思えないけどな」


真っ向から否定されちゃった。


だがそんな俺に意外な救いの手が二つ。


「いや、見つかっている宝箱の情報は新人問わず多いと言う。なら一層で何か隠されている可能性は高い。

横に広大なのは一層だからな」


「そうですね。少し私的にも気になる場所がありますので……そちらに向かいましょう」


上が王子、下がセバスさんだ。


王子は昨日の俺の話から、そう判断してくれたのだろう。

ちなみに昨日考えた突飛な理由に関しては、その場で聞いていたフウカ以外のメンバーにも共有済みだ。


そしてセバスさん……。

気になる場所なんてあっただろうか?俺的には入った時からただの洞窟だなーってイメージなのだが。

もしかしてセバスさんも本当に宝箱がある可能性を追ってらっしゃる!?

浪漫のわかる紳士だぜ!


二人からそう言われたイルゼンは少し思考した後、元に戻ることを決めたようだ。


後ろへと戻っていく最中、俺に目配せをしてきた。


あーはいはい。わかりましたよ。

セバスさんが気になる場所って言ってる場所で何かするかもしれないから、警戒しといてくれってやつですね。


まあ俺なんかが警戒したところで、正直あんまり役には立たないと思うけど……。

精一杯頑張らせていただきます。


その後分岐点まで戻り、反対へ進むを繰り返してどんどん一層を調べ尽くしていく。


そして最後の道を進んでいる最中だった。


「え!?」


後ろでフウカの驚く声がかすかに聞こえたと同時に、足元が光って視界が一瞬歪む。


「え?なにいまの?てかフウカなんか言った?」


俺はそう言って振り返った。


…………そこにフウカとセバスさんは居なかった。


――――――――――――――――――――――――


「イルゼン!フウカとセバスさんが消えた!」


俺の叫びにイルゼンも事態を把握したようだ。


「しまった!ワープトラップだ!」


ワープトラップって何!?

と叫びたいが、今多分みんな焦ってるので言葉を飲み込む。

名前的に踏んだらどこかに飛ばされるトラップとかそんなのだろう。

つまり…………俺たちはダンジョンのどこかに飛ばされて、二人と逸れたってことだ。


え?まずくなあーい?

ひっじょうにまずくなぁーーい?


「前方警戒!魔物3体!先頭準備!」


イルゼンが叫ぶ。


すると洞窟の奥からこちらに向かって走ってくる大型の影が三つ。


「ミールいけるか!?」


「もちろん!!」


「よし!陛下はいけますか!?」


「ああ、任せろ」


「流石です!隊長!!」


「絶対無理!」


「おっけー!隠れてろ!」


ごめんね、役立たずで。

言われた通り通路の隅に体を寄せて隠れる。


影が迫るにつれ、その正体が明らかになる。


でっかい犬だ。いや狼?

とりあえずひたすらにでかい。一番体格のいいイルゼンの2倍はある。そんなバケモンが3体走ってきている。


「正面は俺がいく!ミールは左!陛下は右をお願いします!無理はしないでください!!」


「任せろ!」


飛びかかってくる先頭の一体をイルゼンが真正面から受け止める。

そのイルゼンを横から狙う一体の牙を、王子が剣で弾く。

ミールの杖が光ると、上を跳んでいた最後の一体の腹に炎が直撃する。


魔法が当たった狼はそのまま吹っ飛んでその場に転がる。

その様子に驚いている狼の足に、王子の剣先が飛び込む。

痛みで怯んだ狼にイルゼンが相対していたもう一体がぶつかってくる。

どうやらイルゼンが力で、狼を投げ飛ばしたらしい。


3人の強さに怯んだのか、狼が来た道を引き返して逃走していく。


鮮やかに戦闘は終了した。


流石親衛隊&王子!頼りになるぅ!

この3人が一緒にいればモーマンタイっすな!ガハハ!


「……タケ。なぜいつもみたいに戦わんのだ?」


戦闘を終えて、剣を収めた王子の一言目です。


そういえば普段のヤラセ戦闘では俺戦ってましたわ。

ほんで今回は無理って言い切っちゃいましたわ。


うーんどうしましょ……。よし思いついた。


「実は……俺は対人専門でして、魔物との戦いは不得手なんすよ」


「成程…………ではダンジョンはかなり厳しそうだな」


「はい、申し訳ございません」


「いい、気にするな。こう言った時こそ我の出番だろう」


よし乗り切った!言い訳の達人舐めんな!


してやったり顔をしていると、隣に来たイルゼンが小声で一言。


「ほんとそう言うところは尊敬するよ。隊長」


でしょ!?…………嫌味じゃないよね?


……………………その時だった!

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