第三章 ガイスト① がい☆ます
四時限目を終え、タケシは代返の礼を果たすべく新橋と学食へ。
「別に今日じゃなくても良かったんだけどな」
時間は17:00を回ったところ。構内にはひとつだけ運動部の学生向けに開けている食堂がある。運動部向けとあって丼にはこんもりと白い山ができていた。
「イヤイヤ、感謝の気持ちは早めに、ってのもあるんだけど、姿見た時にお礼しとかないと。お前、来てないこと多いし」
「そんなことねぇぞ? 前期の般教落としたのは痛いがな。おかげで一限から来なきゃならんくなってるし」
「そりゃ自業自得だ」
「風音はまたこれからバイト?」
「そんなとこ。お前は? やっぱゲーム?」
「当然」
「前言ってたやつ?」
「そーそー、『がい☆すと』な。おぼえて帰ってくださいねー。なんか今日は大きなイベントあんだって。夜は張り付きになっちまうからこの時間にメシ食えてちょうどよかった」
ゲームネタを振った途端に新橋の表情が活き活きと輝く。
「オレも食っといた方が良いからさ。家帰ってメシの支度するのもめんどくさいし」
タケシはいつも通りに返事をしているのだが――――その言中に新橋は感じるものがあり、目を伏せた。
「…そか。大変だな、一人暮らし」
「お前もだろ?」
「そうなんだけどさ」
新橋のトーンが変わったことに気付き、彼なりの気遣いをタケシは感じた。
「まぁ…もう慣れたさ…」
◆
「さぁておっ始めますかい!」
新橋は威勢よく声を上げた。タケシと別れた後コンビニで食料と飲み物を調達、今夜のイベントへ向け万全の体制。
ゲームをやる際の姿勢など人それぞれではあるが、新橋が『がい☆ます』をプレイする時は少々個性的である。彼はタブレットからモニターへ映像出力で繋ぎ、タブレットはもっぱらコントローラーとして使う。タブレットの画面でも画像は見られるのだが操作する際指で隠れることが不満だった。若干の遅延はあるものの、この方が良いというのが彼の判断だ。おかげで、足を机の上に上げてタブレットを膝の上に載せ、膝の間からモニターを見る、という状態。長時間プレイすると腰が痛くなるのが難点である。
「おお、いるぜいるぜ、血に飢えた狼たちがよぉッ!」
ゲーム中の新橋は独り言が多い。しかもかなり大きな声なので、実家住まいの時には家人から「うるさい!」と何度も叱られていた。大学進学を機に気兼ねなくゲームに没頭するため一人暮らしを始めた。もちろん、隣人に壁ドンされないよう防音がしっかりしたアパートを選んだ。今夜も無駄に大声を上げて一人テンションを上げているのだ。
画面には無数の『がい☆ます』プレイヤーたちのアバターがひしめき合っている。それぞれ思い思いのスキンを纏っているので見覚えのあるアニメキャラやキテレツなものまで様々。新橋のものは「まじかるシャッセ」の主人公。「シャッセたんをテッペンに導いてやる!」というのが彼の目下の目標だ。
時計が19:00を回ったところで画面右上のメールアイコンにハートマークが点灯。『がい☆ます』運営からのお知らせだ。
「来た来た」
タップするとメッセージが開き、テキストデータと共に読み上げ音声が流れ、かわいい女の子のマスコットアバターがポップアップする。
〈はいはーい。タウン市民のみんな、元気にしてるかなー? もるもってぃ市長ちゃんだよー。今宵は、うっふっふー、『がい☆ます』コロシアムにてすぅぅぅぺしゃぁるいゔぇんとぉぉぉ! いつものようにブン殴りあってもらいますがぁ、なぁんと! 今回優勝者限定! タウンが用意したすぅぺしゃぁるな敵アバターと闘っちゃってもらっちゃうすぅぺしゃぁるすてーじにごあんなーい! うっふっふー。他にも成績上位者ちゃんたちにもすぅぺしゃぁるなプレゼントなんかしちゃいまーす! バトルロイヤル開始は19:30から。それまでに決着したらその時点で試合しゅーりょー。21:00の時点で決着してなかったら判定持ち込みー。いっぱいブッ倒した人がゆーしょー! すぅぺしゃぁるすてーじ開始は21:30。市民全員が観戦できちゃいまーっす。うっふっふー、楽しみ楽しみー。バトルロイヤル開始は19:30だよー。大事なことだから2回言っちゃったー。そんじゃみんな、がんばってねー。うっふっふー〉
「はぁ…もるもちゃん、相変わらずテンション高ぇな…」
『がい☆ます』タウンの運営は『もるもってぃ市長』というアバターで姿を見せる。彼女はユーザー間では『もるも』あるいは『もる』と呼ばれ親しまれている。一部で『もるも』派と『もる』派の不毛な争いもあったりするのだが。
さてそうこうしているうちに間も無くバトルロイヤル開始の時刻。
「そろそろかな…よっこいしょ」
新橋は必勝を期すため足を机に上げ準備万端。画面には俄かにカウントダウンの数字が現れる。
【 3 2 1 スタート 】
「うぉっしゃ! ブチのめすぜーッ!」
新橋の雄叫びと共にまじかるシャッセがアバターの群れの中へ突っ込んで行った。
◆
「ガハァァァァ??」
新橋のシャッセは最後の一人を追い詰めながらもギリギリで連打を喰らいノックアウト。残念ながら優勝ならず。
「アーッ、チックショォォォ! もうちっとだったのに! 甘かったぁ!」
コロシアム内のバトルはスタートから全て記録されていて、任意のところから任意のアングルでプレイバックできる機能を持つ。新橋は最後の一人を追い詰めたところから見直し一人反省会。モニター内ではミニスカ魔法少女とミニスカセーラー服の少女が殴り合いのバトルを繰り広げている。この様子を食い入るように前のめりで見つめる。
「あー、ここかぁ…上手いなゆい☆ちゃん氏。さすが前回優勝者だぜ。回し蹴り回避からの反撃が超絶速ぇ。コントローラーの違いなのかなぁ…それともモニターの遅延が原因か…」
ペットボトルを片手にブラブラさせながらブツブツと独り言。
「まぁ今日はこの後にスペシャルイベントってのがあるから、勉強させていただきましょうかねぇ! …まだちっと時間があんのか。腹ごしらえでもしとこ」
時計は21:00を過ぎたところ。新橋はキッチンへ行き電気ケトルに水を入れた。
◆
21:28。
(あとちょっと…あと少し…)
ルミはまだ編集部にいた。タケシとの待ち合わせは21:30。普段は冷静沈着と編集部内で通っているルミだが、今日は焦りに焦っている。自分から言い出した待ち合わせ、しかもこちらで時間指定までしたのだ、遅刻というわけにはいかない。しかしそういう時ほど思ったようにはいかぬもの。一部記事の入稿が遅れ、校正が押してしまったのだ。
(待たせてもいいのかもしれないけど…それでは私の気が…)
モニターのテキストデータと睨めっこをしているところへぽすっと肩を叩かれる。
「行ってやんな」
振り返るとそこには岩竹が立っていた。
「編集長…??」
「人を待たせてるんだろ? 事情は知らんが、守人クン、さっきからずっと満員のトイレに並んでるような顔してるぜ?」
思いの外、顔出ていたらしい。
「そんな…」
普段ならセクハラだとやり込めるところだが、相手が誰であれ、今は人を待たせているのだ、生真面目なルミにはそれが耐えられない。
「ほれ」
ぐいっと押しのけられ。マウスとキーボードを奪われた。
「す、すみません。よろしくお願いします!」
ルミはペコリと頭を下げる。一方の岩竹は、さよならと手を振っているのか早よ行けシッシッとしているのか、左手をヒラヒラ。合わせてイヤホンのケーブルも一緒にブラブラ。
「お疲れ様でした!」
言い終わるが早いか鞄を持つと、ルミは一目散に編集部を出た。
21:32。
エントランスを出る。少し遅れた。理解されるであろう理由はあるにせよ、こちらの失態だ。素直に謝ろう、そう思いながら駆け足で待ち合わせ場所へ急ぐ。
21:40。
ルミが指定した、編集部の入るビルから2つ先のバス停。時間帯の割には人影がなく車の通りもない。しかし今のルミには求める人の姿以外は意識の外だ。
果たして、その場所にタケシの姿はなかった。
「ハァッ ハァッ … 10分、待ってくれないか。ふふ、厳しいなぁ」
普段厳しく接しているのは自分なのにと苦笑いしつつ、息を整えようと顔を上げた。
「…え?」
違和感。この場に留まることを拒絶されるような息苦しさ。
「この感じ…まさかD領域?」
デギールはその作戦行動の際、隠密性を高めるためある種の電波を発生させて人払いをする。人のみならず各種交通機関すら影響を受けるのだが、その原理・仕組みはルミの所属する星間警察機構ですら解明できていない。ルミたちは訓練と実戦からその存在を辛うじて感じ取ることができるのではあるが。
改めて周囲を見回す。
「誰もいない…」
場所を指定したのはルミの方である。知り合いに会うこともなく繁華街でもないことからそうしたのだが、それにしても、である。
「いくら何でも…こんなところで…? ん?」
ガシュッ
ガシュッ
…遠く…いや、それほど遠くもないが、ここより少し離れた場所から鈍い衝突音が聞こえてきた。
その音…
「これ…ブレイド同士がぶつかる音…」
表情が引き締まる。辺りを見回すが、姿は見えない。ここがビル街なこともあり、その斬撃音が反響して音の方向が絞り込み辛い。
「これは…やるっきゃない、かな。スーツの索敵機能なら方向を絞り込めるかもしれない」
ルミは周囲を見回して改めて人目のないことを確認。右手を左肩口に翳すと右腕のブレスレットからパァッとフェイズヘイローが輝く。
「位相 展開!」
コマンドと共に薙いだ右手に同調してフェイズヘイローはコピー機の読み取りのように移動し、通過した跡には黄橙色のギャノンスーツが現れた。
「索敵開始… え? どういうこと? これって…」
センサーが拾ったのは、2体のスーツ同士が現在戦闘中である反応。
「こんなスピード…」
ただし驚くほど、いや、驚きを超えた速さでぶつかり合っている。
「いくらスーツを着ているとはいえ、出せるものなの?」
なにしろ速すぎて視野内に入ったことすら分からない。センサーで追うからこそ2体の存在を知覚できるが、視覚で追えているわけではない。
ダンッ ガシィ
ガサッ ガッ
ダンッ ガシィィ
路側の街灯が揺れ、街路樹から葉が散り、また街灯が揺れ。その合間合間に、ブレイド同士ぶつかり合う音が夜のビル街の合間に冷たく響く。高さあるものを踏み台にした空中戦だ。
「一つは風音君だけど、もう一つのこの反応…デギール、よね」
強力なエネルギー刃同士の衝突。大きな音と共に激しく火花が散る。そして鍔迫り合いになることで初めて敵の動きが止まり、その姿を視認できるようになった。
背丈はタケシと変わらない程度だが体表はダークグレー。ヒトにしてはやけに細い。色違いのモヤシ野郎かと思いきや、鍔迫り合いからタケシを押し弾き、後方の街灯を足場にタケシへ向け突っ込んできた。速い。
「ガァ??」
その速さにタケシは追いつけず、歩道へとガードの上から叩き堕とされてしまった。
「チックショー!」
「風音君??」
堪らず物陰から姿を現したルミ。
「ガテーヌ!」
右手に愛用の銃『ガテーヌ』を呼び出す。
ドフッ
引き金を引くや野太い発射音と共に巨大なエネルギー弾をバレルから放つ。しかし…いとも容易くグレーのヤツに躱された。それどころかそのグレーのヤツは街灯で一跳ねするとルミの方へ。
正直なところ、ルミは射撃が苦手だ。ターゲットへの反応は速いのだがどうにもこうにも的に当たらない。ワステロフィ入署したての訓練では何度も何度も何度も何度も居残りをさせられたほど。訓練の成果で筋力は人並みに付いたがそれを活かせる運動神経はなかったのだ。
それを差し引いても敵の動きは想定を遥かに超えている。暗闇からダークグレーのヒト型が飛び付出したと気付いた時には、それはすでにルミの背に回り、首を取られ、腕も背中で極められていた。
「ガアァァッ!」
スーツの増力があるにしても関節を極められては動けない。
「くっ…アナタ、何者?」
ルミは首の自由が利かない中で、声を搾り出した。
「…」
ソイツは無言のままルミの首をさらに絞め、腕もさらに捻り上げた。
「何か言いな…違う! コイツぐッあァァァァァァァァァ…」
アブソーバーで緩和しきれず、ルミはただ悶絶するしかなかった。
◆
「オレンジ…? 緑じゃね?これ。しっかりしてくれよ運営さんよぉ」
21:30を回ったところで予定通りスペシャルイベント『市街地戦わんおんわん!?今宵の相手は一味違う??』が始まった…のだが、新橋の独り言の通り、モニターに映るのはアナウンスと違うもの。オレンジ色の人型アバター相手とアナウンスされていたのだが、出てきたのは緑色。しかし挑戦権を持つゆい☆ちゃん氏は構わず挑んで行き、バトルが開始された。
違ったのはそれだけではない。
「え? 武器使えんの?」
ゆい☆ちゃん氏のアバターの右手には赤く光る剣が握られており、緑のアバターへ構わず斬り込む。緑のアバターも赤い剣を出し、壮絶なスピードの斬撃戦となった。
バトルのフィールドはビルが立ち並ぶ市街地。ゆい☆ちゃん氏も緑色も、街灯から街灯へ、街路樹から街路樹へ飛び移り、その合間合間で相手を斬りに行く。
「しっかし速ぇなぁ…」
まるで倍速視聴の映画でも見ているかように凄まじい速さで動き回っている。
「お??」
ゆい☆ちゃん氏のアバターが剣のガードの上から叩きつけ、緑色は地面へ堕ちた。
「さっすがゆい☆ちゃん氏。それでこそ俺のラ」
と新橋が言い掛けたところにゆい☆ちゃん氏を映す画面下から光球が走る。
「…なんだ今の?」
ゆい☆ちゃん氏は鮮やかにそれを避け、画面が切り替わりそこに映ったのは
「オレンジ? え? 何? 敵二人いんの??? どゆこと???」
混乱したのは新橋ばかりではない、観戦者全員がそうだ。当然プレイヤーであるゆい☆ちゃん氏もそのはずなのだが、ゆい☆ちゃん氏は意外な行動に出た。街灯をひと蹴り、地面に降り立つとオレンジ色のアバターの背後に回って手首を取り、極めた。そして空いたもう片方の腕を首に巻き付け締め上げた。
「人質ぃ? 汚なッ! …ってかできるんだ、人質取るとか。どういうシステムで動いてんだろな、コレ…」
◆
「守人さんッ?」
地上に降り立ったタケシが駆け寄ろうとするが。
「カハっ! カザネ…クン…」
シャキィ
ルミを羽交締めにしている者の、右手から光の刃。
「そういうことなら…」
タケシの右手から光の刃がフッと消えた。
突如として戦闘の意思を消したタケシに敵は困惑したか、動きが止まる。
次の瞬間。
「ダブルアクセル!」
緑色のギャノンスーツが視界から消える――――そして現れた。
それの背後に。
「守人さん! 気をつけて! キャプチャー!」
タケシの右手から再び光の刃、だが先程とは違う緑の光が伸び
「えっ?」
ルミが問い質す間もなくダークグレーの背中へ叩きつけ、強大な衝撃波が浴びせられる。
「トゥー!」
「キャアアァッ!」
同時にルミが解放されるが衝撃波は強く、悲鳴と共にブッ飛ばされた。
だがこれで終わらない。
「ギャノンブレイカーッ!」
タケシのブレイドは再び赤く灯り、そして青へ。彼の脳裏に先日逃した大男の姿がチラつく。
(今度はためらわない!)
動きを止めた敵の胴を横一文字に薙ぎ払う。
「トゥゥゥゥッ!」
◆
「あーあ…」
新橋は落胆の声を上げ
「ゆい☆ちゃん氏、負け、ちゃっ、た!」
コロシアム実況の窓を閉じた。
「なんだコイツ、すんげー強ぇな! 速ぇの何の。消えたもんな、緑のヤツ。プログラム上のキャラの割には随分と動きのバリエーションが豊富だったよな。AIで学習させてんのか? あんなにスムーズに動かせるプレイヤー見たことねぇよ。ホント、どういうシステムで動かしてんだろな。モーションキャプチャーで中の人がいる、とか? しっかしスペシャルイベントともなると戦う相手があんなんなんか。もるもっちゃん、人の心とかないんか? なんてな」
大好きなゲームの話だ、新橋の独り言は止まらない。彼は興奮しながら水滴だらけのコーラのボトルを手に取り、一気に喉へ流し込んだ。
「げーっぷ それにしても、こんだけ速い動きで戦うってなるとタブじゃ追いつけねぇなぁ…PCにコントローラー付けてやった方がいいんかな? いやー、あんなの相手とか…オラ、ワクワクすっぞ! ぜぇったい俺がブッ倒してやるッ!」
雄叫びを上げ、拳を天へと突き上げた。
◆
「え…?」
斬り付けておきながら、タケシは狼狽した。
敵は真っ二つになった。
そう、真っ二つに。
「そんな…いや、そんなつもりは…」
だが目の前には、胴から輪切りにされ真っ二つになった『ヒトの形だったモノ』が横たわっている。
「…殺して…しまったのか…?」
タケシは膝から崩れ落ちた。
「アイタタタタ… あ! 風音君! 大丈夫?」
吹き飛ばれされたルミがタケシの元へ駆け寄る。
「…どうしたの?」
「守人さん…どうしよう…オレ…人を…殺しちまった…」
震えている。ギャノンブレイドを握ったまま、タケシは。
「え? ガイストを斬ったんでしょ? なにも問題ないじゃない」
ルミは事も無げに返す。
「でも…オレ…」
「待って!」
今にも泣きそうなタケシの声を遮る。
キィィィィィ…
(何? この音…! まさか!)
ルミの耳に届いたのは犬笛のような高周波の音。
「風音君! 離れて! 今すぐ!」
「え? 何?」
「いいからッ! 早くッ!」
ルミはタケシの腕を掴むと、猛然と走り始めた。もつれつつタケシもそれに従って走る。
「伏せてっ!」
二人が倒れ込む。
その背後、真っ二つになったものが
ドゴォォォォ ドゴォォォォ
次々と爆発し、消滅した。
「どういう…こと…なんです?」
「アナタ、人を殺したって言ったけど、あれはヒトじゃないわ」
「え、じゃあ…」
「じゃあ何だ、というのは分からない。私たちも全て掴めているわけじゃないから。とりあえずデギールでは『ガイスト』って呼んでるらしいからワステロフィでもそう呼んでいるわ。ともかく少なくともヒトじゃないことは確かよ。安心なさい」
「そ、そうなんだ…はは…そうか、よかった。ははは…」
力無くタケシは笑った。
◆
■なぜ?なに?ギャノン!
Q8
先攻捜査隊ってどんなお仕事なんですか?
A8
本隊に先立って行動し、敵の人数や武装などの規模を把握、連絡することが主な任務です。通信部を通して報告を受けた作戦本部が、派遣する規模を決定し、一課課長を通して本隊へ指示、本隊が現地へ派遣されるという手続きが基本となっていますが、既に敵拠点規模などが把握できている場合は本隊も一緒に派遣され、先攻捜査隊の突入に尾いて入ります。本隊が入った後の先攻捜査隊は、共に戦うか、後退します。逆に、敵規模から何から、そもそもデギールの存在の有無すら不明な場合、今回のルミの地球派遣任務のように、単独、あるいは数人で派遣されることもあります。この場合、任務は情報収集が中心となります。
ワステロフィでは、全員が先攻捜査隊に一旦入隊し、戦闘も含む新人教育を受け、そのあとそれぞれの部署へ配属されます。捜査戦闘部門は先攻捜査隊を経てから本隊へ行くという手順となります。先攻捜査隊の任務の厳しさについていけない者が脱落していくので、結果本隊は洗練されたエリート集団となります。
Q9
ギャノンブレイドやガテーヌはどこから出てくるのですか?
A9
武装は別位相空間に格納されていて、身体の各所に設置できる呼び出しユニットで現位相空間へ呼び出します。呼び出しユニットはいくらでも身に付けられますが、最後にしまったユニットから出るので、あまり沢山のユニットを身につけてしまって、格納したユニットを忘れてしまうと呼び出した途端思いもよらぬところから出てきて、地面へボトってなってしまいます。タケシもルミも右手首に1つ付いてて、メインウェポンはそこで出し入れしているようですね。二人とも他に左腰にもう一つ付いていて、ルミはそっちへブレイドをしまっています。