3 やるべきこと
ホームルームが終わると、一斉にクラスメートが集まってきた。
「三波さん、顔小さーい!」
「あ、ありがとう」
「髪も肌もつやつや! 普段スキンケアってなに使ってるの?」
「えっと、市販のものを……」
「万葉女子って有名なお嬢様学校だよね? どうして転入してきたの?」
「それは家庭の事情で……」
「え、なになに? 気になるなー」
そんな調子で質問攻めにあった。
当然お父さんの会社が倒産して……なんてことは言えなかったけれど、根掘り葉掘り聞かれて、五分の休憩時間がとても長く感じた。
始業のチャイムが鳴ると同時に、先生が教室に入ってきた。
クラスメートは慌てて着席し、ようやく私は一息付いた。
「転校生も大変だな」
金髪の彼、雪原くんが小声で聞いてきた。
「そうですね」
わたしはなるべく笑顔を心掛けて答えた。
「三波さんはどこから来たの?」
その質問を受けて、そう言えば雪原くんは遅刻して来たんだったと思い出す。
「万葉女子です」
「へえ、じゃあ三波さんはお金持ちのお嬢様なんだ」
「いえ、そういうわけでは……」
「いやいや、そんなことないでしょ。三波さんは――」
「あの!」
わたしは雪原くんの話を遮った。
雪原くんは少しびっくりした顔をしていた。
「授業始まるのでそろそろ私語はやめませんか?」
「ああ……うん」
これ以上詮索されたくない気持ち半分と授業に集中したい気持ち半分だった。
この学校にも奨学金制度がある。
しかも成績上位者は、無償で奨学金を借りることができるのだ。
一応進学校の括りにある万葉女子では成績上位だったけれど、気を抜くことはできない。
先生の言葉を一言一句聞き逃さないように、私は意識を教壇に手中させた。