恋愛なにそれ美味しいの？

１ 恋愛なにそれ美味しいの？

　お父さんの経営していた会社が倒産した。

　原因は社員の情報漏洩。

　気付いた時には全てが手遅れだったみたい。

　挽回（ばんかい）するために新商品の開発もやってみたけど、どれも失敗。

　結果、多額の借金だけが残った。

　住んでいた家も、広いお屋敷から築数十年のボロアパートに。

　使用人が全くいなくなった生活に、最初はかなり苦労した。

　だって全部自分でしないといけないんだもの。

　でも、幸いなことに家族がバラバラになることは無かった。

　お父さんは一から会社に就職。

　お母さんは週に四日、パートに出ている。

　それだけわたしたちの家族は強かった。

　わたしも引越しを機に高校を辞めて就職すると言ったけれど、それは却下された。

「学生は学生らしいことをしなさい」

　お父さんとお母さんは口を揃えてそういった。

　きっと、二人の出会いが高校生の頃だったから、わたしにもそういうことを期待しているのかもしれない。

　でも、今は遊んだり、色恋沙汰にかまけてる暇はない。

　私にはお父さんの会社を再興するという夢がある。

　だからまずは良い成績を納めて高校を卒業して、大学に進学する。

　恋愛？　何それ美味しいの？