転生したら野良猫だった件。~ 吾輩が、かの有名にゃ 猫のモデルだったにゃんて、にゃんの冗談?~
吾輩は猫である。名前はまだにゃい。
気付いたら、野良猫に生まれ変わっていた。
見知らぬ町を彷徨い、迷い込んだ民家の軒先。
そこで吾輩は、ある見覚えのある男に遭遇した。
前世の吾輩の財布の中には、常に彼の顔があった。
一番付き合いのあった紙幣の顔。
「に、にゃーーっ(お、おまえ、夏目漱石やにゃいかーい)!」
漱石は、吾輩のことを「おい、猫」とだけ呼び、吾輩にエサを与えた。
意識がくらむほどの芳醇にゃ、鰹節の香気。
吾輩は、不覚にも、猫まっしぐらとにゃった。
「明日も食べに来るがよい」
彼はそう吾輩に告げ、居間のテーブルの前へと戻り、何やら原稿を書き始めた。
かの文豪、夏目漱石の原稿である。
吾輩は、無許可で居間に上がり、彼の手元を覗き込んだ。
<吾輩は猫である。名前はまだない。>
―― ちょっ! ひょっとして、まっ?!
そこから、吾輩と漱石との、奇妙にゃ創作活動の日々が始まった。
家を訪ねてくる、彼の弟子や、知人たち。
特に、最古参の弟子と言われる寺田寅彦にゃる人物は、吾輩にやたらとかまってきた。
そういった光景を、漱石は無言で眺めにゃがら、時折、手元の原稿の端に、何かをメモしていた。
<吾輩は猫である。名前はまだない。>
その後につづく文章を、前世の吾輩は知らにゃかった。
彼の書く文章を覗き込むのが、吾輩の日課とにゃった。
文豪・夏目漱石が、吾輩をモデルに、吾輩視点で描く物語。
それを特等席で読むことが出来る至福。
「……これはさすがにまずいか」
時に、漱石が失敗し、没稿にせざるを得にゃかったエピソードにゃどは、ここでお教えすることが出来にゃいのが、残念にゃくらい、にゃんとも言えぬ愉快さがあるものだった。
あんにゃことや、こんにゃこと。
小説から削るしかにゃかった、イレギュラーにゃ物語の数々。
それこそ、芳醇にゃ鰹節にも負けぬ、香気を放っていたのだがにゃ。
ねこ視点の転生もの。
ぺろっと書いてみて思ったけど、意外とアリやね。