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和菓子屋と元獄卒

こんばんは、クロズです。今回は異類婚姻譚を書いてみました。楽しんでいただけたら嬉しいです。

 昔昔、三途の川に、紫烏色の鬼が居ました。彼の仕事は、親より先に亡くなった子供達が三途の川で石を積んでいるところを、怖い顔で怒鳴りながら邪魔すると言うもの。


 しかし、紫烏色の鬼は

 「自分で希んで死んでしまった訳でもないのに、こんな幼い子供達に酷いことは出来ない。」

 と配属されてから毎日毎日苦悩し、上司から落ちこぼれとされ、最終的に仕事を辞めてしまいました。「自分は鬼として出来損ないだ。」と落ち込んでしまいます。


 鬼が実家に帰ると、父親からは、

 「こんなには早くに仕事を辞めるなんて覚悟が足りんぞ!」

 と、言われてしまい、絶望感に苛まれます。けど母親は、

 「あんたの生きたい生き方で行ければ、私はそれで充分さぁ。あんたが幸せになれる路を選ぶんだよ。」

 そう言われて自信がついた鬼は、獄卒時代の貯金で自分探しの旅に出かけます。



 人間に化けて人間界へと降りたった鬼は、旅先で色々な人に出会いました。書道教室の先生に綺麗な字の書き方を教えてもらったり、中華料理店の店長さんに美味しい麻婆豆腐の作り方を教えてもらったり、迷子の子犬の飼い主を探したり。鬼はその旅の中で、少しずつ自分らしさに目覚めていきます。



 それから数ヶ月経ったある時、ある街で、数人の男達に絡まれている女性を見つけます。鬼は感情が抑えきれず、鬼の姿で男達を怒鳴りつけ、追い払いました。助けた女性は泣いてお礼を言いました。

 「わだすの家、和菓子屋やってるんですけど、何か食べませんか?お代は結構なので。」

鬼は最初は遠慮しようとしましたが、結局女性についていきました。


 「鬼って本当に居るんですね!ずっと怖いものだとばかり思っていたけど、貴方みたいに優しい鬼もいるんだ。」

 屈託もない優しい声で話す女性に、鬼は質問します。

 「あんた、俺が怖くないのか?」

 「怖いはずないじゃないですか!わだすには貴方が怖い鬼には見えませんよ。」

鬼は女性の陽の光の様な笑顔を、優しい眼差しで見つめ返していました。

 「ねぇ、鬼さん。貴方はどうして旅をしているのですか?」

 そう聞かれた鬼は、昔獄卒として働いていたことと、何故仕事を辞めて旅に出たのかを話します。

 「本当に、優しい人なんですね。」

 「まぁ、鬼としては落ちこぼれだよ。何度も本当の『鬼』になろうとしたけど、人を傷つける事に対する疑念は捨てられなかった。獄卒として当然の役割は果たせずに辞めた。弱虫なんだ。」

 しかし女性は、

 「何言ってるんですか。優しいことと、どんなに辛くても優しさを捨てないことは1番の強さです。わだすの幼い頃に、父がそう言ってました。」

 その言葉を聞いた鬼は、

 「そう言ってもらえて嬉しいよ。またここに来てもいいかい?君の和菓子、とても美味しいから。今度作り方を教えてもらってもいいか?」

 「勿論ですよ!」



 それから鬼は彼女の和菓子屋に時々顔を出し、一年が過ぎる頃には、二人はすっかり打ち解けていました。鬼はありのままの自分を受け入れてくれる女性が好きになっていましたし、女性の方も、自分のお菓子を美味しそうに食べてくれる、まっすぐな鬼が好きでした。


 十五夜の夜、女性は鬼と一緒に月見をしています。女性はある決心をして、鬼に言いました。

 「貴方と一緒に居る日々がずっと続いて欲しいです。サツキさん、わだす貴方が好きです。ずっと貴方といたいです。」

その言葉に、鬼は返しました。

 「俺も、舞さんが好きです。貴方が俺でいいと言ってくれるなら、必ず幸せにします。」


 その後、鬼は婿入りし二人は夫婦となり、共にに和菓子屋を営みました。鬼が両親に手紙を送ると、人間のお客さんだけでなく、地獄に住む鬼の子供達や、鬼の獄卒時代の同僚、果ては閻魔大王まで色々な人が和菓子屋にやって来ました。


 二人が営む和菓子屋は、まだまだ続いていくのでしょう。


 そう言えば、最近二人の間に愛娘が生まれたんだとか。



おしまい

読んで下さりありがとうございます。人外×人間は良いですよね。

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