7話 もふちゃーん!!
はい。というワケで、レッツ検証タイムです。
まずは説①「お腹が空いている説」です。
提案したのはお嬢様ですね。
「では先ほど森で採った果物があるので、これを食べさせてあげますか」
言いながら修道服の女性――シスターさんが革袋から取り出したのは、真っ赤に熟れた小さな果実。片手に収まるサイズのそれは、かぶり付きたくような瑞々しさを放っています。
因みに、彼女のことをシスターさんって呼んでますが、会議中に皆さんで自己紹介をした上でですので、私が勝手に呼んでいるワケではないですよ。役職名なのは察してください。
「私がやってみたいわ!」
「はい、いいですよ〜」
「わーい! ありがとう!」
シスターさんから果物を手渡され、ピョンピョンと跳ねるお嬢様。すっかりお嬢様らしさが抜けてしまい、幼い子どもみたいになっていますね。
「はい、もふちゃん。どーぞっ!」
お嬢様は掌に果実を乗せて、少し背伸びをしながらもふちゃんの口元に近づけました。すると、もふちゃんは「もふぅ」と鳴いたかと思えば、パクり、と果実を丸呑みし、ムシャムシャと口を動かしました。
「やった! 食べたわ!」
「ふふっ、美味しそうに食べてますね。もう一つあげてみますか?」
「いいの!? やりたいわ!」
「いいですよ〜。はい、どうぞ」
「ありがとう!」
お嬢様のためにもう一つ果物を手渡すシスターさん。
こうして見てると、餌やり体験をする姉妹みたいですね。
微笑ましい光景に、皆さんも目を細めていらっしゃいます。
「美味しい?」
「もふぅ!」
「うふふ、良かったわ」
そうして、暫くシスターさんと餌やりを楽しむお嬢様でしたが――。
「多分、原因はお腹が空いてるからじゃなさそうね」
「……そうみたいですね」
赤いローブを纏った女性――魔女さんの言う通り、いくら食べても元に戻らないので、原因は別にありそうです。
それに――。
「あの子お人好しだから、あの子の食料が全部無くなる前に止めなきゃね」
どうやらシスターさん、自分の食料を削ってまでお嬢様に餌やりをさせてくれていたらしく、魔女さんは溜め息を吐くとシスターさんの元へ行きました。
シスターさん、魔女さん、本当にすみません……。
ありがとうございます。
★―★―★
というワケで次は説②「何かを誤飲した説」です。
提案したのはテイマーさんですね。
テイマーさん曰く、「魔力が込められた魔石や魔道具を誤飲することで、その物体が体内で反応し、膨大な魔力がモンスターの体内に漏れ出すことがある。その結果、体内で過剰になった魔力を制御できるように、からだの一部が変化したりからだ全体が巨大化したりすることがあるんだ」とのこと。
つまり、今回もそのパターンなのではないかと睨んでいるそうです。
「よしっ、早速やってみるわよ」
そう言ってもふちゃんに杖を向けたのは、魔女さん。
どうやらまずは、もふちゃんに宿る魔力の感知を行うそうです。
「サーディン!」
そうして明快な掛け声とともに魔女さんが杖を軽く振り下ろした瞬間、杖の先に魔法陣らしきものが現れました。
青くて淡い光を放ち、ぐるぐると回転する魔法陣。
その様子を魔女さんは静かにジッと見つめ、お嬢様も「おぉ」と感嘆の声を漏らしました。
けれど、それは僅かな間だけ。
不意に魔法陣が霧散したかと思うと、魔女さんはほうっと息を吐き、徐に口を開きました。
「やっぱり、もふちゃんとは別の魔力が混じってるわ」
「おぉ、じゃあ本当に」
「でも」
と、魔女さんは剣士さんの言葉を遮ると、驚きの言葉を口にしました。
「明らかに魔力が少ないわ」
「……マジか」
魔女さんの言葉に目を開くテイマーさん。
しかし、魔女さんの言葉はそれだけではありませんでした。
「それに、魔法が少し複雑なのよ」
「「っ!?」」
瞬間、一斉に同じような驚きを見せる皆さん。
けれど、私もお嬢様も首を傾げ、私は「どういうことでしょうか……?」と尋ねました。
そうして返ってきた言葉は、信じがたいものでした。
「もふちゃん巨大化の背後に、第三者がいるってことよ」
「えっ!?」
「なっ……」
眉間に皺を寄せながら答えてくれた魔女さん。
その言葉にお嬢様はあっと驚き、私も言葉を詰まらせてしまいました。
続けて魔女さんが説明してくれましたが、要約するとこんな感じです。
通常、魔石や魔道具は純粋な魔力で構成されており、魔力量が多い傾向にある(それらの魔力が純粋な理由は、魔石は自然由来だからであり、魔道具はそうした魔石を利用するからだ)そうです。そのため魔石も魔道具も、何かに反応する時は純粋な魔力を放出し、比較的単純な魔法を形成することが多いとか。
ところが、今回は少ない魔力量で複雑な魔法が発動していました。これは誤飲などでは起こり得ず、意図的に操らないとできないそうで、それも、ある程度手慣れている魔法使いでないと難しいそうです。
だからこそ、第三者の関与だと判断したんですね。
なるほどです。ただ――。
「それで、原因が見えてきたのはいいのですが……、もふちゃんは元に戻るのでしょうか?」
そう、それが一番の問題でした。
「もふちゃん、大丈夫なの……?」
お嬢様も不安そうに魔女さんを見つめます。
すると、魔女さんはふっと息を溢し――。
「安心して。これくらいの魔法ならわけないわ」
ニヤリと笑いました。
そして杖を構えて――。
「エサエラー!」
掛け声とともに杖を上から振り下ろしました。
刹那、淡い黄色の光線らしきものが杖の先から放たれ、もふちゃんに直撃。みるみるうちにもふちゃんのからだが縮み始めました。
「「おぉ……!」」
やがて光線が消え、そこにいたのは――。
「もふぅ! もふぅ!」
「もふちゃーん!!」
高い声で鳴く両掌サイズのもふちゃんと、それを抱き締めるお嬢様だったのでした。
リ「もふちゃんかわいいーっ!!」
も「もふもふぅ!」
シ「……っ!? メ、メイディさん、鼻血がっ!」
メ「…………リリもふ、てぇてぇ」
魔「ダメだこりゃ」




