6話 もふちゃん会議
静寂の中、もふもふさんに向けて鉱石を構えるテイマーさん。堂々たるその構えに、一つの予感が私の脳裏を過ります。
――まさか、もふもふさんを倒すつもでは!?
そうなったらお嬢様は心に深い傷を負ってしまう。
私は内心で大いに焦りました。
けれど、それは私の勘違いだったようでして――。
「あんた、この子の仲間になってくれるか?」
テイマーさんは優しくもふもふさんに語り掛けました。
すると、もふもふさんは開いているのかどうか分からないような目で鉱石をジッと見つめた後――。
「もぉふぅ」
と、太くて伸びやかな声で応えました。
どうやらもふもふさんに確認をとっていたみたいです。助けるフリをして倒すのかと思いましたよ……。とてもお優しい方なんですね、失礼しました。
「それじゃあいくぞ!」
そうして、テイマーさんが透明の鉱石をもふもふさんに向けた瞬間でした。
鉱石がピカッと光ったかと思うと、鉱石から半透明に輝く管のようなものがたくさん出てきました。
そしてそれらはもふもふさんへ飛んでいき、もふもふさんのあちこちに接合。もふもふさんから出てくる光の粒子みたいなものが、管を伝って鉱石に流れ込んでいきます。
「わぁ……!」
「これは……」
頭上で織りなす光の儀式を、恍惚として見上げるお嬢様。
私も思わず呼吸を忘れてしまうほど、美しい光景でした。
やがてテイムが終わったのでしょうか。光の管はもふもふさんから離れると、少しずつ鉱石の元へ戻っていき、最終的に全ての管が鉱石に収まりました。
そしてその瞬間、透明だったはずの鉱石は、透き通るような白へと変わりました。
「っし、テイム完了!」
「やったぁ!」
「そんじゃあそこの……あれ、なんて言うんだ、この子?」
「もふちゃんよ!」
あのテイマーさん、多分モンスターの正式名称を聞きたかったんだと思いますが、そうとは知らないお嬢様が名前を付けてしまいました。
その所為か、テイマーさんは一瞬きょとんと呆けたような表情を見せましたが、すぐにふっと息を漏らすと、にこやかな笑みを浮かべて――。
「そっかそっか! もふちゃんって言うのか!」
と、豪快な笑い声を上げました。
お嬢様も「そうなの!」と嬉しそうに笑っています。
お嬢様が喜んでいて私も嬉しいです。
でも、なんでしょうね、この気持ちは……。
嬉しいはずなのに、どこかモヤモヤするような気がします。
「そんじゃあ改めてもふちゃん! このお嬢ちゃんに付いていてくれ!」
「もふぅ!」
「やったぁ! ありがとう、おじさん!」
「おじっ!?」
「「ブフッ!」」
お嬢様の「おじさん」発言に、お嬢様たちの近くにいた剣士さんと、私の左隣にいた赤いローブの女性が吹き出しました。右隣の修道服の女性も、苦笑いを浮かべています。
私は咄嗟に「すみません」と両隣の女性に頭を下げましたが、お二人は「いいよいいよ、気にしないで」「いえいえ、お気になさらないでください」と言ってくださいました。
お嬢様に悪意はないと思いますが、本当にすみません。
剣士さん、まだ肩を揺らしていらっしゃいますし……。
「笑いすぎだろお前、ったく……。まぁいい。もふちゃんと仲良くしてあげてな、お嬢ちゃん!」
「はい!」
こうして、事態が一件落着したかのような空気が流れました。ですが、根本的な問題がまだ残っています。
「どうやって元の大きさに戻せば……」
そう、これが一番の問題なのです。
「元の大きさにって……元々は今より小さかったのですか?」
「え、それ本当なの?」
私の呟きが聞こえていたらしく、修道服の女性が首を傾げながら私に尋ね、それを聞いていたローブの女性も乗っかってきました。
「えぇ、そうみたいです。私が直接見たワケではなく、あくまで町の人曰くですが」
「そうなんですか……。原因はなんなのでしょう?」
「私にも分かりません。なので、まさに今それを探ろうとしていたんですよ」
「なるほどね……。とりあえずアイツらにも伝えて来るわ」
そう言ってローブの女性は「話があるんだけど」と、仲間の男性たちの元へ歩いていきました。これでこの場の全員に現状を共有することができそうです。
やがて事情説明が終わったのでしょう、男性お二人が頷いた後、ローブの女性がこちらに振り返って言いました。
「そこのお二人さん、作戦会議するからこっちに来てー!」
「はーい、分かりましたー! それでは行きましょうか」
「はい、ありがとうございます」
こうして剣士さんたちとともに、もふちゃん巨大化の原因を探る作戦会議――名付けて「もふちゃん会議」が始まりました。
メ「皆さん、ご協力いただき本当にありがとうございます」
剣「いえいえ、困った時はお互い様ですよ」
リ「それじゃあもふちゃん会議の始まりね!」
メ「なんでお嬢様が仕切ってるんですか!?」
4人「(賑やかになりそうだなぁ)」




