残念ですが、あなたの豚骨ラーメンは失われました。
僕が、悪かったんだ。
本当に悪かったんだ。
豚骨なんて、豚に付けちゃったからっ!
とても反省している。
ある日突然、異世界に転移しちゃって、迷子の豚を拾ったと思ったら、オークの子だった。
迷子ではなく群れを放り出された弱い子だったらしい。
というのは5年ほど育てて知った事実だ。変幻できない時点で出来損ないなんだそうだ。
普通の豚だと思って、ペット(非常食)として愛玩していたのにっ!
それを知って衝撃を受けたのは豚骨もそうだったようで、そこから何か修行らしきものをしていた。僕も頑張るの? そうなの? じゃあ一緒にがんばろっか! とダンジョン攻略したのも悪かったんだろう。
本日、進化した。
「おお、豚から解放された」
「進化するくらい、オーク、嫌でしたか」
「なんか、こう、食べられそうな気がした」
ごふごふ言ってた素敵でかわいい豚ちゃんがイケメンに変貌した。がっくりした。僕のかわいい豚骨が! 普通の! イケメン獣人になった!
くっ、僕よりイケメンだ。
「死んだら、骨は拾ってあげる……」
「それ、埋葬してくれるってことだよな?」
「そーだよー」
だしを取った後にな。
僕は、ラーメンが、食べたかったんだよっ! 牛骨じゃなくってさぁっ! オークじゃない豚ってこの世界にはいないんだよぉっ!
……というのは、人でなしの発言なので、言わない。うん。食べちゃいたいくらい(物理)好きだってことにしておこうぜ。
そう思って、まじまじと豚骨を見て気がついた。
「……あれ? 美女」
豚骨、女の子だった!? 僕の衝撃を知ってか知らずか、にじり寄られた。
「好みの顔、ではあるか?」
「え、美人、だよね、みんなそういうと……ひぃっ」
あごくいされた。僕される側!?
「主の好みを聞いている」
「僕、かわいい子が好きです。正直、前のほうが好き」
衝撃を受けたようによろける豚骨。
「肉が好き」
「いや、そういうんじゃなくて、今の豚骨かっこよすぎる」
前は確かに良いお肉だったけど。なんか、マンガリッツァみたいな。金髪のくるくる巻き毛は残ってる。
「主の誉れになるように、頑張って、オークキングを目指したのにっ」
「そこはクイーンとか、プリンセスでは?」
なんだって!? と言いたげな顔で固まった。もしや、豚骨も自分の性別考えてなかった?
「成長ツリー、これ以上伸びない……」
がっくりと地面に崩れ落ちている。そうなの、普通、キングやロードが終点。というかそこまでやったの?
なんか、かわいそうな気がしてきた。推定、僕のために頑張ったっぽいし。
「ま、まあ、かっこいいのもいいんじゃないかなっ」
当たり障りのない言葉だったはずが、豚骨にはそうではなかったようだ。がばっと起き上がって、僕の両手を握った。
力強い。
「では、我が番にっ」
「はぁ?」
「獣人には番というものがあって、最初からずっとそんな感じのなんかで」
「は?」
怒涛の愛の告白は右から左に流れていった。
「まって、豚骨に対してそんな気持ちない」
「甲斐甲斐しく世話してくれたのは愛情では」
「ペットです」
時間が止まった気がした。
「弄ばれた」
「獣人と知らず、暮らしてたんだよっ! しかも女の子とかしらないっ!」
「私も知らなかったんですが、結果良かったということで」
「え、番って男同士もありなのっ!?」
「女同士もあり」
え、逆にそっちみたい。
「……ペットなら飼育者の責任を」
「それ外で言ったら、僕が連行されるからやめてね?」
「ならば、番に」
「いや、ちょっと、時間が」
「承知しました。では、主が、好きだと言ってくれるように努力します」
嫌な予感がした。
「僕は普通の女の子が」
「努力します」
大まじめだった。
そこから、絆されて一年後には、夫婦やっているのだから、世の中わからんものである。
そして、僕は永遠に豚骨ラーメンを失ってしまった。
おそらく、そのまま豚でも豚骨ラーメンを作りそうにないのだけど、自覚はない。




