第94話やり残しの無い様に
「え?神教授が辞表を!?」
「さっき山名長官に提出して来たそうだ。」
「何故ですか?保大の教授以上のセカンドキャリアなんて無いですよ?」
「まぁ、安心とか安定とかそう言うのを好むお人柄ではありませんからね。神教授は。」
「にしてもですよ?」
「神教授は海保から離れる決意を示しただけだ。話によれば教授の任期は一任期3年、つまりあと半年は少なくとも保大の教授であるのに違いはない。何か聞いておきたい事があれば、今のうちに聞いておけ。」
「山名長官もかなり強く引き留めたらしい。それでも神教授は保大を離れたいそうだ。」
「何かやりたい事でも出来たんですかね?」
「さぁな。」
「おお!話をすれば神教授の話をしていた所だ。」
「なんだ、ノムケンか…。」
「なんだって事は無いでしょ?一応貴方の助教授なんですから。」
「何で俺が保大を辞めるのかどうしても聞いておきたい様だな?」
「教える事位は出来るじゃないですか?」
「実はな保大の学長になる事が決まったんだ。山名長官がどうしても俺を保大から辞めて欲しくないとせがむからな。俺の自由を奪うのなら学長に位して貰わなくちゃ割に合わないと冗談混じりで言ったら、山名の奴マジで学長のポスト空けやがった。ま、あと半年保大の教授として、やり残しの無い様に過ごすよ。」
「へぇ、隊長が保大の学長に?」
「そうなんだよ。すげぇよな。ま、元次長の経験者だし、選ばれるのは妥当だよな。」
「人生の残りリミット考えての辞意じゃない?」
「山名長官の意向がかなり強いよな。じゃなきゃ今いる保大の学長を切って神教授を学長に無理くり空けたりはしないと思うけど?」
「保大の教授ってのも楽じゃないらしいしな。」
「でも神教授の場合90%以上がSSTでの武勇伝らしいぜ?」
「ガチで?」
「この前時間あったから神教授の講義聞きに行ったら本当だった。」
「それコンプライアンス的にどうなの?」
「隊長の役目はSSTの存在を現役の保大生に伝える事だからな。」
「SST論、SST概論。どんだけSSTを愛しているんだ?」
「まぁ、知っておいて損は無いからね。それに保大生達は自分達キャリア組がSSTに配属される事は無いと勝手に信じている風潮があるからな。」
「まぁ、隊長は別格としてもいきなり三正で放り込まれたらキツいかもな。」
「呑気な事言うてられへんしな。副班長やし。」
「折角税金で育てた保大生もすぐ辞めてしまうがな。」
「それを防ぐ為の神教授の授業なの。」
「山名長官?」
「山名?お前少し痩せたか?ちゃんと飯食わなきゃあかんで。」
「朝、昼、晩三食食べてます!それより神教授?神教授の後任はノムケン教授に任せてよろしいかしら?」
「俺は構わんがノムケンは…悪い話じゃないもんな。」
「出世昇進大歓迎。」
「引き継ぎは正確にお願いしますよ?」
「ノムケンには俺の1~100までみっちり仕込んであるから、引き継ぎはもう終わってんねん。」
「皆あの頃のセカンドユニットで海保に残っているのは、俺とノムケンと山名だけだな?」
「寂しくなりましたね。まぁそのうち我々も退官ですがね?」
「若い奴等がしっかりやれてるし、大丈夫だよ。」
「最近の若いのは小銃みても驚きやしねぇ。」
「FSPのゲーム当たり前に有りますしね。」
「ゲームとリアルは違うって事を教えてやるんだぞ?ノムケン。」
「はい、分かりました。」
「この俺が保大の学長になる?」
「似合ってますよ神教授!」
「そ、そうか?」
「ご家族も喜ばれますよ?」
「だと良いんだか。」




