第89話燃え尽き症候群
根室沖海戦から1ヶ月後…。相変わらずSSTは訓練漬けの日々を送っていた。
「また今日も訓練ですか?」
「しょうがないだろ?宿敵ゲロッグをこの世界から追放出来たんだから。平和で何よりの証じゃねーか?」
SSTは米国海軍原子力潜水艦への無許可乗艦により全員1ヶ月の減給処分を受け、隊長の神はそれとは別に謹慎処分を受けていた。
「もう1ヶ月も経つのに神隊長まだ戻って来ねーのかよ?まぁ、それならそれで別に俺は構わないけど?」
「中野班長!それは聞き捨てなりませんよ?」
「二軍の癖に偉そーな口叩くな。」
「セカンドユニットは二軍では決してありません。」
「お前ら訓練に集中しろ!無駄口を叩くな。」
「神隊長!?」
「戻って来たんですか?マジで皆心配してたんですよ?」
「すまん。一種の燃え尽き症候群って奴かな。まぁ、お前らには迷惑をかけた。皆元気そうで良かった。」
「そんな事ないっすよ?自分らもそう言う時期ありましたし。」
「でも、今は乗り越えて頑張ってる見たいじゃねーか?」
「ノムケンさんがセカンドユニットに活を入れてくれたんですよ。」
「ノムケンが?」
「はい。燃え尽きてる暇なんかねーぞ!ってね。」
「スーさん!無駄口を叩かないで訓練して下さい…神隊長!いつの間に?」
「俺、SST辞めるわ。」
「!!?」
「ゲロッグ無き今海上保安のフェイズは、新たなる所に入った。これからのフェイズでは、俺じゃなく新世代のお前達がSSTを率いるんだ!」
「とか言ってたけど、実は栄転らしいですよ?神隊長。」
「本庁特殊警備課の課長になるとかで、三等海上保安監になるって話ですよ?」
「それどこ情報?」
「中野2正が言ってました。嬉しそうに。」
「って事は次期SST隊長は中野2正でほぼ決まりか。」
「ま、妥当な人事だな。」
「ノムケンがファーストユニット班長!?」
「ないないない。」
「ファーストユニットの班長には田村副班長がつく。セカンドユニットの人事に変更はない。まぁ、そりゃそうだよな。期待はしちまうよな。まぁ、ノムケンがファーストユニット班長なんて天地がひっくり返っても無いな。(笑)」
「本人がいる前で失礼だぞ!でも、神隊長の栄転は自分としても嬉しいっす。」
「セカンドユニットの皆を置いてくのは心中穏やかではないが、まぁしっかりやれよ!」
「はいっ!!!」
「気合いの入った良い返事だ。頑張れよ‼」
「もう行ってしまうんですか?」
「引き継ぎはもう完了済みだからな。後はデスクを整理して本庁にそのまま直行だな。」
「まさか、引き継ぎ期間での1ヶ月謹慎だったのですか?」
「まぁな。今は無駄口を叩いてる暇は無いんだ。すまん。」
がさごそがさごそ「PCはスーさんに任すわ。」
「はい。初期化してバックアップはとってあるんですよね?」
「ああ。初期化だけして。」
「了解しました。」
「急な事ですまん。辞令が出ちまってるもんで。」
「何言ってんすか?保大出のキャリアの宿命じゃないですか。それに根室沖海戦の一番の功労者は神隊長じゃないですか?」
「まぁな。」
「そこは謙遜する所でしょ?」
「送別会とかそう言うの良いから‼」
「またまた~。」
「ありがとうな。」
「いえ、こちらもお世話になりました。」
「よし、そろそろ行くな。お前達訓練に戻れ。」
「はい。」
こうして神海人はSST隊長と言う大役を終え、本庁に戻る事になった。妻にも言えない辞令だったが、栄転と言う噂は真であった。




