第86話中野班長の方
一方、中野将ファーストユニット班長の方はと言うと…。
こちらもロシア海軍との激しい戦闘状態に置かれていた。
「こんな時に戦力になれず本当に申し訳ありません。サダフィ大佐。せめて海上での白兵戦ならば、何かしらの貢献は出来るのですが…。」
ドーン、ドーン。
「良いの良いの。海中からなら確実に敵を倒せるからね。SST(君達)は気を使わず何もしなくて良いよ。」
「そんなぁ、それじゃあ航海日誌のオカズに困っちゃうじゃないですか?にしてもこのシーウルフって潜水艦凄いっすね。」
「戦争が起きなきゃこんなお荷物潜水艦、さっさと処分しているさ。」
「世界最強なのに?」
「まぁ、見てりゃ分かるよ。この潜水艦の弱点がな。」
「言われてみればスピード(船速)がでてないっすね。それはやはり重武装だからですか?」
「まぁスピードが出ない分深く潜れるんだけどな。流石にスピードじゃあロサンゼルス級攻撃型原子力潜水艦には敵わないからな。」
「でも、どうして米国海軍はこんな化け物潜水艦を3隻も造ったのですか?」
「さぁな。バカを通り越してイカれてるよ。ただ、いざ実戦となれば、これだけ頼もしい通常兵器はない。日本がロシアと一戦交えると聞いた時はすったまげたが、シーウルフに狩りをさせてくれる絶好のチャンスだと、ルドルフ中将に掛け合ったんだ。中将、チャンスですよ!ってね。」
「総工費もアホみたいな額つぎ込んでるからな。日本には感謝してるよ。米国史上最悪の出来損ないとはよく言われたものだ。シーウルフは開発当初米国はロシアとの軍拡競争の中で作られたが、最近では対中国に向けて抑止力を持つようになった。まぁ、安心したまえ。天地が逆さまになってもこのシーウルフに敵う原子力潜水艦はない。」
「日本海軍の戦艦大和みたいですね。」
「大和は悲劇的な最期を遂げるが、シーウルフは違う。日本の自衛隊もいるからな。」
「ここまで来るとSSTの管轄外の話になってしまいます。」
「コーストガードの特殊部隊も丘の上とは訳が違うからな。」
「サダフィ大佐!ロシア艦艇の様子が消えました。日本の領海外に消えました。追いますか?」
「いや、その必要はない。深追いはしない。中野2正、根室まで送ります。」
(くっそ。このままじゃ釣果ゼロじゃねーか。神隊長に何を言われるか分からない。)
「サダフィ大佐、もう少し同行させていただけないでしょうか?」
「構わんが、上司の許可は得ているのか?」
(了解も何もこのままじゃマジで帰れない。)
「はい。その点に関しては一任されていますので。」
「随分と信頼されているんだね?まるで私とルドルフ中将の様だな。」
(多少のタイムリミットオーバーしてでも何かしらの収穫を得ないと。しかし、丘の上に上がれないことには仕事にならねー。)
「サダフィ大佐?シーウルフは補給とかしないんですか?」
「中野2正?君は頭が悪いのか?シーウルフは立派な原子力潜水艦だよ?まぁ、食糧の補給に丘の上に上がることはあるがな。それも半年に1回、年2回位の頻度だよ?中野2正?君、もしかして仕事が出来てなくて困っているのかい?」
「!?はい。」
「いいんだよ。それで。シーウルフに乗ると皆そうなるから。さ、帰ろうか。」
「はい。」




