第83話フェルプス大佐の方
「いいか!神隊長、ここから先は修羅と化す覚悟が必要になる。如何なるオプションも排除してはならないぞ。」
とフェルプス大佐の方から聞こえた叱咤激励を聞いたのが最後の会話であった。米国海兵隊最強の部隊を率いた男は何者かに射殺された。それから2ヶ月…。中将に昇進したルドルフとサダフィ大佐が亡きフェルプス大佐に変わって対ロシア戦争の指揮を採る事になった。
「やはり、現場に限るなサダフィ大佐。」
「そうですね、ルドルフ中将。」
またこいつらとかよ、と一瞬思った神隊長ではあったが、ここは無難に「よろしくお願いします。」とだけ挨拶をした。
「あ、あなたは神隊長ですよね?」
「はぁ…。そうですが。」
「日米合同軍事作戦の時はプレス(マスコミ)対応が良かったと、聞いている。今回もその調子でお願いしますよ。」
と、サダフィ大佐と握手したまでは良かった。だが直ぐに今回の作戦は亡きフェルプス大佐の方が適任だと感じた。主要敵はロシア海軍太平洋艦隊と、北方領土から北海道に進軍してくるロシア陸軍3万人。SSTは、そのロシア軍を止める為海自指揮下の元根室沖を中心に海上警護する役割を担った。
「ロシア軍も中々攻撃して来ませんね?」
「ロシア広しと言えど、まさか日本を相手に戦争をしかける事になるとは思ってもみなかっただろうしな。」
神隊長は直ぐにひだ→あそ→つるぎの巡視船隊を北海道東方沖に派遣。SST総出でロシア軍の侵攻に備えた。
「特別警備隊にも声がかかったらしいじゃないですか?やっぱりリアルガチで戦争?なんですか?」
「いや、今ロシアは中国の動向を注視している。だから今すぐにどうこうと言う事ではない。」
「勘弁して下さいよ長官。あっちもこっちも見てられませんて。完全に巡視船隊のキャパオーバーですって。」
「根室海上保安部には協力を得ている。とりあえずGOサインが出るまで根室海上保安部で巡視船隊は待機だ。」
「了解。その言葉が欲しかったんですよ。」
「根室で眠ろう位の親父ギャグ言える位の余裕がなければ、絶対ロシアには勝てません。」
と、まぁぶつくさ一人で言う神隊長ではあったが、巡視船隊はEEZをまたぎ根室海上保安部に到着した。
「いやぁ、よくぞ来られました。ようこそ、根室へ。」
「観光に来たんじゃないんだ。直ぐに夜食を準備してくれ。」
「そう思い準備しておきました。」
「え?誰の命令で?」
「山久長官です。正直ビックリしました。この根室海上保安部には一等海上保安正以上の幹部はいませんから。さ、根室海上保安部名物の鮭のちゃんちゃん焼きです。さぁ、神隊長もうかうかしてると、食べ損ないますよ?」
「酒はあるか?」
「ノンアル飲料で我慢して下さい。山久長官の話ではいつ出撃するのか分からないと言う話でしたのでお酒は控えた方が良いかと。」
「それならやむを得まい。ノンアルで我慢してやる。」
「しかし、SST言うたら海保の中で最も精強なエース部隊じゃないですか?そのSSTが何故根室に?」
「話すと長くなるので割愛するが、ロシアの北海道侵攻に備えた作戦の一環だ。唐突な話で来たのでお陰で現場は大混乱。」
「そう言う割には神隊長は落ち着いてますね。」
「一応SSTの隊長だからな。どんな時も冷静であれと師匠から教わっているのでな。」
「第5管区って言ったら大阪じゃないですか?なのに大阪弁じゃないんですね?」
「あぁ。基地が大阪にあると言うだけで、地元出身の隊員はほぼゼロ。SSTでは標準語を推奨している。たまに大阪弁になることもあるけどな。」
「ところで貴方は?」
「申し遅れました。根室海上保安部部長二階浩二一等海上保安正であります。」
「一正って、自分と同じ階級ですね。」
「よろしくお願いいたします。神隊長。」
「あぁ、よろしくお願いします。二階一正。」




