第82話ロシア海軍の罠
「まさか防衛出動に踏み切るとはな…。」
「中井総理は思い切った事をしてくれたもんだな。」
「日米合同軍事作戦の報復としてロシア軍が動く事になろうとは、日本人の誰一人予測していなかっただろうしな。」
「で?勝算はあるの?」
「ロシア海軍の罠に日米が振り回されなければ大丈夫なんじゃねーか?」
「ロシア海軍の罠?」
「ロシア海軍が保有する戦略原子力潜水艦をどこまで使うのか?って事だよ。」
「そんなの米国に任せとけば良いじゃないか?」
「ところがそうも言ってられんのだ。」
「まさかウラジオストックから!?」
「その通り。ロシア海軍は極東地域に戦力を集中させ、核兵器を使う恐れがある。」
「それこそが真の罠?」
「ロシアの狙いは米国じゃなくて日本!?」
「その可能性が高い。まぁ、日米の潜水艦隊がどこまで抑止出来るか。そこに全てがかかっている。」
「まぁ、今SSTに出来る事はモスクワ攻略を確実に行う事だ。それに今は海自の指揮下に海保は置かれている。防衛出動下の今、我々海保隊員は勝手な行動はとれない。自衛隊や米軍の手足となり職務を遂行してくれ。」
「神隊長はそれで良いんですか?」
「良いも悪いも法律でそうなっているからな。勝手な行動はとれない。」
「だから黙ってモスクワに行けってのは、そりゃあないですよ?」
「お話が盛り上がっているところ、誠に申し訳ないのだが、間もなく作戦海域だ。戦闘配置についてくれ。」
「え?マジ?もうそんな時間?」
「ノムケン?腹くくれ!」
「マジすか?」
「安心しろ銃後には米国海兵隊がついている。」
「ロシア陸軍が来る前にやっつけてしまうぞ?」
「フェルプス大佐…。」
「やる事はただ一つ。インフラの寸断だ。モスクワ市内の電気・ガス・水道を寸断する。SSTの諸君には水道を寸断して欲しい。直ぐ近くに水道局がある。そこを制圧して貰いたい。」
「了解しました。」
「セカンドユニット、サードユニットの両隊は東西から水道局を取り囲む様に侵入。当然相手は武装していないので、水道局員の拘束が終わり次第責任者にモスクワ市内の水道を供給するのをストップして貰う。それを確認したら、責任者も拘束。直ちにその場を去る。30分もあれば余裕だろ?」
「その間にガスや電気も?」
「それは海兵隊がやる。貴様らは水道を寸断する事だけに集中すれば良い。まぁ、本来ならロサンゼルス級攻撃型原子力潜水艦のSLBMでドカンとやりたいところだが、それはNGだと大統領令が出ている。ただ、インフラの寸断とは言え、ここはモスクワ。ロシア軍の兵士に出くわす可能性もある。とにかく、長居は無用だ。全てのインフラの寸断を確認したら即座に撤収する。援軍が必要な場合はフェルプス大佐に直接連絡してくれ。」
「了解。さぁ、行くぞ!」
「君は誰?」
「海保のSST隊長の神海人です。よろしく。」
「ノムケンより偉いのか?」
「ああ、一階級私の方が上だ。」
「ノムケン?上司がいるのを何故報告しなかった?」
「いや、悪いのは挨拶が遅れた私の責任です。申し訳ない。」
「まぁ、良い。ブリーフィング通り君達SSTは水道を寸断するというeasyな役割だ。任務終了後は、直ぐにロサンゼルス級攻撃型原子力潜水艦の停泊している港に急行してくれ。」
「フェルプス大佐等はどうするのですか?」
「電気・ガスを止める。各員暗視ゴーグルを忘れるな。」
「電車も止めるのですね?」
「そう言うことだ。分かったら行け!」
「ロサンゼルス級攻撃型原子力潜水艦でお待ちしています。」
「グッドラック!」
「SSTの任務は素早さが大切だ。言われた事を着実に迅速にやる。いいな?」
「はいっ!」
ここから水道局へは歩いて10分余り。港からも10分とフェルプス大佐の言う通り一番easyな作戦であった。




