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第7話ナイスバディ

 「神3正ちょっと来てくれ。」

 「はい。どうかしましたか?」

 「前任の小野田和正(おのだかずまさ)1等海上保安正(2階級特進)について話をしておく必要があると思ってな。」

 「海難事故に臨場した際リペリング降下に失敗して殉職したと伺っていますが?」

 「あの日はな、とても風の強い日だった。ヘリを出すのもやっと。そんな状況でも、小野田はいの一番に現場に向かおうとした。勿論、全員誰もが止めたさ。それでも小野田は事故船舶の乗員10人を放ってはおけまいと、命令を無視して慣れないヘリのリペリング降下を実行した。幸い10人の乗員は全員小野田の手で助け出したが、最後にヘリに戻る際に突風が小野田を襲い彼は20メートル下の事故船舶甲板に叩きつけられた。」

 「ですが、天候悪化により、ヘリは一時大阪特殊警備基地に帰投命令が出され、小野田さんは置き去りにされた。もう一度天候が回復してから、現場に戻ったセカンドユニットであったが、その時はもう事故船舶の上には小野田さんの姿は無かった…。」

 「高波で流されたのでしょうか?」

 「それは分からないが、死亡・行方不明と言う扱いになりヘリを強行出動させたのが問題視されたが10人の乗員を助け出した事もあり、それは不問となった。」

 「小野田元副班長はどうしてそんな無茶を?」

 「実はな、事故船舶の乗員に小野田の兄がいたんだ。後で分かった事だが、小野田は知っていた。」

 「お兄さんを助け出す為に無茶を?」

 「何時もクールな小野田が目の色変えて出動していたからな。小野田はこう言ったんだ。」

 「ヘリさえ出してくれれば後は俺がなんとかする。」

 「ってな。」

 「俺と小野田は保大の一年違いの先輩後輩関係だったんだ。(小野田が一年後輩)学生時代から面識はあったんだ。保大を出た俺は(矢部)セカンドユニットに配属され、数年後小野田もセカンドユニットに配属され、班長と副班長の関係になった。今思えば"ナイスバディ"だったよ。SSTはツーマンセル(二人一組)で行動するのが基本だからな。とにかくコミニュケーションだけは絶やさなかった。事故が起きるまで5年近くはバディを組んでいたが、相性は抜群だった。」

 「そこに自分が入って来たんですね?」

 「ああ、神3正が来るまでセカンドユニットの副班長の席は空位にしてあったからね。小野田元副班長は他の隊員にも慕われていたから。それ相応の人物が来るまで副班長は置かないとセカンドユニットのメンバーで決めたんだ。」

 「では自分はそれ相応の人物だと?」

 「保大首席卒業のエースなら、小野田も俺達も断れなかった。」

 「自分小野田元副班長の分まで頑張ります!」

 「あんまり無茶はするなよ?」

 「はい。」

 「小野田の話はその位だな。」

 「矢部班長改めてよろしくお願いします。」

 「おう。よろしく。」

 「良かったですね?」

 「何がだスーさん?」

 「流石に陸上で身を潜めるのは潜水士でも難しいですね。」

 「全部聞いてたのか?」

 「まぁ、肝心な所は…。」

 「スーさんの様なベテランから見て神3正と言う副班長はどう写る?」

 「まぁ、一年目の新人ですからね。保大首席卒業は言えまだ粗削りかと。」

 「俺は小野田元副班長を越えるナイスバディになれる気がするのだが…。」

 「それは良かったですね。」

 「でもあんな悲しいのは二度とごめんだ。」

 「そうですね。天国の小野田元副班長もそう願っているでしょうね。」

 「あんな無茶は神3正にはとてもさせられないな。」

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