第75話邪魔者
日米合同のゲロッグ壊滅作戦、通称アルファミッションを実行する為には、いくつものハードルを越えなければならなかったのである。そんなハードルの一つがゲロッグの事実上の支持母国であるロシアの軍事介入であった。
流石の米国もたかだか数千人のテロリストを倒す為にロシアと戦争をする気にはならないだろうが、スーダン国内にロシア軍が展開し、これを仮に無視して空爆を行えば、ロシア軍の報復は必死で米露核戦争にまで発展するかもしれないとルドルフ少将は危惧していたが、今の所スーダン国内にロシア軍の展開は確認されていない。
それからハードルとなるのは中国の存在である。ここ最近アフリカ諸国に資金供与し中国人労働者を多数派遣して、スーダン国内にも中国人の出稼ぎ労働者が流入しインフラを整備して来た。
スーダン空爆には、これ等のハードルが存在するが、CIAや米国海兵隊の事前の内偵でゲロッグ本部の場所は把握していたため、ピンポイント爆撃をする予定になっていた。
しかし、ここに来て邪魔者が現れる様になっていて、米軍は空爆に不安を覚える様になった。その邪魔者とはゲロッグを支持する民兵組織GEGと言う組織である。もし仮に空爆を強行しGEGに死者を出せば、スーダン国内で反米感情が沸き起こりせっかく収まっていた内戦の火種に成り得るかもしれない。
「サダフィ大佐?空爆を強行するのは非常に不味いのでは?」
「車一佐、ではどうしろと言うのだ?GEGは確かに民兵組織だが、ゲロッグに肩入れする輩に変わりはない。ならば先に地上戦を展開するのか?そちらの方が遥かにリスクが高いと思うが?」
「その通りだ。サダフィ大佐。」
「ルドルフ少将!?」
「敵は幾度となく我々の空爆に耐えてきた。しかしそれは見せ玉。とどめをさすものではなかった。だが、今回の爆撃は完全にターゲットを絞っている。作戦変更はない。それにどうせその内地上戦が始まる。シェルターに逃げ込もうが無駄な事だよ。」
「ルドルフ少将それはもう…?」
「ああ。大統領の決定だ。ゲロッグとそれに関連する全ての組織を根絶せよ…。とな。」
「日本の中井総理も先日の日米首脳会談で同様の事を明言されておりました。」
「車一佐?それは誠か?」
「はい。自衛隊を出すと言う事はそれなりの結果が求められます。」
「まぁ、ゲロッグもそれだけの事をやって来たからな。ここで情けは無用。分かった。空爆を許可する‼」
「え?サダフィ大佐、空爆するかしないか迷ってたんですか?」
「ルドルフ少将の判断と大統領の決定を待っていただけだよ。ルドルフ少将?空爆を許可してもらえますね?」
「ああ。」
「やはりGEGの存在が大佐を悩ませているのですね?」
「民兵だからな。標的のゲロッグとどこまでズブズブなのかも不透明だからな。とは言えゲロッグに加担したらどうなるかは見せつける必要はある。」
「ミセシメですね。」
「例えそれで日米が恨みを買ってもですかね。」
「まさか地上戦を展開するとはゲロッグも想定していないだろう?」
「ええ。空爆には慣れていても、地上戦には慣れていないでしょうし。」
「チャンスは一度きり。二度目は無いと思え!」
「はい!!」
とまぁ、戦争慣れしている米軍らしからぬ気合いの入れ具合だった。
「車一佐!作戦準備整いました。」
「うむ。指示を待て。」
こうして、ゲロッグ及びGEG包囲網は着実に且つ正確に行われ様としていた。
「サダフィ大佐、ルドルフ少将、ここまで来たら後には戻れませんよ。」
「ああ、そうだな。運命共同体と言う奴だな。」
テロリスト制圧の行方を神隊長は静かに見守る事しか出来なかったのであった。




