第64話SSTの限界値ってどのくらい?
「そりゃあ要請があれば北海道だろうが、沖縄だろうが駆け付けるさ。でも実際カバー出来てるのは、関西エリアしかも、巡視船隊に限っては大阪湾近海に限られている。」
「それがSSTの限界値って事なのか。」
「どのくらいの限界値がSSTにあるかを判断するのは、山久長官や林次長の仕事だから、SST隊員が口を挟める状況にはないけど、日本全国津々浦々を網羅してるとはとても言えないな。」
「でも、特別警備隊員のサポートがあればカバーエリアは広がるかもな。」
「まぁ、特別警備隊員はSST隊員と違って非常勤だから中々難しいかもな。」
「そもそもSSTが限界値決めちゃ駄目やろ?」
「まぁ、それも含めてセキュリティの確保が担保出来なきゃいけないと言うアンチテーゼが発生するのは確かだな。」
「各管区隊の負担も増すからな。特別警備隊員の常勤化は。」
「SSTの特殊性は海保の中でも特筆すべきものがある。それ故本庁はSSTの増員を渋っている。と言うのが中井総理の御英断だ。海保で駄目なら海自が何とかする。とな。」
「でも、SSTで駄目な案件を海自が簡単に引き受けますかね?」
「まぁ、事が起こる前からあたふたしても仕方無い。現状はこれ以上は望めないのは確かだな。」
「そんな事言わないで下さいよ。こっちはポセイドンの看板背負ってるんですから。限界値は作るものじゃない。越えるものですよ。」
「神隊長、君がSSTの隊長になってからSSTの色は大きく変わった様だ。もう昔の様に放置プレイをさせる訳には行かない様だな。」
「それはどう言う意味ですか?」
「時代が変わったと言う事だよ。」
「私がSSTの時代を変えた?それは言い過ぎですよ。日本を取り巻く周辺情勢の変化に対応せざるを得なくなったと言う事です。」
「ゲロッグの出現か?」
「はい。彼等のネットワークは日本のみならず、海外にも根付いています。矢部元隊長がゲロッグにもたらした海保の機密情報は、ほぼ全てゲロッグに流失したと見て間違いないでしょう。エージェントと呼ばれるスパイは、全世界の政府中枢にまで、のめり込んだ腫瘍です。スーダンと言うアフリカ最貧国を拠点にテロ行為を行ってきたゲロッグの目的は日米同盟の破断。つまり西側諸国の作り出した価値観の破壊。それがロシアを支持母国とするゲロッグのテロ組織としての存在理由です。」
「そんな事は可能なのか?」
「はい。私も懐疑的ではありましたが、しかしゲロッグと言う組織を調べて行くと、ある恐ろしい計画の存在を発見するに至りました。」
「その計画とは?」
「R計画です。」
「R計画?」
「ロシアがウクライナでやっている事を日本や米国でやろうと言うのです。R計画の一番恐ろしいのは、ゲロッグがテロ行為の一貫として、ロシアの核戦力を使えると言う点です。その為の協定をロシアとゲロッグは交わしています。現状、それを防ぐのは米国の核戦力しかありません。」
「人類が滅亡するぞ?」
「そんな事はゲロッグにとってはどうでもよい事なのです。」
「北朝鮮より、厄介じゃないか?」
「ゲロッグは北朝鮮とも協定を交わしています。」
「総理に直ちに報告を!」
「駄目です。こちらからは何も出来ません。大小問わずドカンと喰らうまでは反撃すら出来ません。それが専守防衛です。」
「まぁ、SST的にはゲロッグを倒せと言われたら、やってやれない事は無いがな。」




