第63話仕事量
「なぁ、細谷?最近ゲロッグの奴等全然音沙汰なしだな。」
「ノムタカさん、無駄口叩いてないで仕事して下さいよ。あまりにデスクワークが増えてこっちがゲロッピですよ。」
「まぁな、そう言うのも大事だけどさ、本庁の意向でデスクワークを強化されているんだ。諦めて目の前の仕事片付けな。」
「キムさんまでそんな事言うんですか?ちょっと俺立ち直れないかも。」
「じゃあそのまま死ね。」
「兄貴それは言い過ぎやで。」
「ノムケン、それは言い過ぎだし部下ついてこうへんぞ?」
「ゲロッグとの戦いの矢面に立たされていたSSTを見かねた林次長が、山久長官に土下座までして手を引かせたんだ。分かるやろ?」
「なんでですか?」
「これ以上の介入は海上保安庁法に触れるからだ。」
「海上保安庁法?」
「それとも自衛隊法?」
「そのどちらもだ。」
「でもゲロッグの奴等を自由にさせればヤベェ事位はポンコツ一士の自分でも分かりますよ。」
「32人で米国のレッドリストに格付けされる様な規模の国際テロ組織と戦おうなんて、キャパオーバーしている。それは誰もが感じている。それに元々SSTは守りの最後の砦。先陣をきって出動する部隊じゃない。」
「だからデスクワークをやれってのは道理に背いているとは、思わなかったんですか?」
「本庁の下した決断だ。俺達は命令に背けない。」
「っくそ!」
「細谷の気持ちも分かってやってくださいよ。班長だって本当はやるせない気持ちなんじゃないすか?」
「SSTで過去に起きた事件の事は、セカンドユニットの面々は神隊長を含めても、包み隠さず知っているだろ?」
「はい。誰にも話せませんけど。」
「まぁ、俺達の力が必要ならば、その時は胸を張って任務に当たれば良い話だ。」
「ノムケンの判断は正しいよ。SSTは絶対に矢面に立ってはいけなかったんだ。」
「スーさんまで加わったか…。」
「レッドリストにも危険度があって、レベル1~レベル5まである。アルカイダやISなんかはレベル5で、ゲロッグに関してはレベル4だ。その手の人なら知らぬ人はいないと言う格付けだ、米国を見てみろ。世界最強の軍隊を持ちながら、アルカイダと言う様な貧しいテロリストさえ根絶出来ていない。結果的に米軍は駐留しては撤退を繰り返している。しかし、我々日本の海保や自衛隊に同じ事は出来ない。分かるな?」
「別のコミットの仕方は出来ないかな?」
「例えばジブチから攻撃用ドローンをするとか?」
「そう言うのは海保の仕事じゃない。」
「二人ともその辺りにしておけ。」
「神隊長!?」
「ファーストユニット班長中野から、セカンドユニットが内紛していると聞いてな。駆け付けたらこの様か?」
「兄貴じゃ話になんないんすよ。」
「ノムタカ?高々一士の分際で2正の兄貴じゃ話にならんとはどう言う了見だ?」
「神隊長なら、現状どうすべきだと思いますか?」
「良いじゃないか。SSTがデスクワークに溺れている位の方が平和的で海保らしい。でも海保は日本の領海内で発生する全ての海難事案について責任を持つ。のが本来の海保の有り様だと思っている。ゲロッグや他のテロリストもその一つに過ぎない。だから本庁としては特別扱いしない。それが本庁の方針だろう。ペンは剣より強しとはよく言ったもんだ。とにかく時が来るまで我慢だ。もし、SSTに何かあれば海自がでばらなきゃなる。海上警備行動が発令された日には主権は海自に移ってしまう。一応そう言う所まで、頭を回してくれると、SST 隊長の私としても、指揮しやすいんだがな。」
「神隊長分かりました。でも射撃訓練はもう少し増やして下さい。」
「分かった。」




