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ポセイドンズ~海上保安庁特殊警備隊(SST)~  作者: 佐久間五十六


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第7章・第61話限界を越えて

 ビービー。

 「118入電。大阪湾上にてケミカルタンカーの座礁事故発生。SSTにおいては出動待機せよ。」

 「SST了解。」

 「ケミカルタンカーの座礁?それはやべぇな。」

 「積み荷が何か気になるな。」

 「情報によると、大量のアンモニアを積んでるらしい。」

 「情報早いな。」

 「爆発炎上の可能性は高くないが、いつ沈没するか分からない船舶に100人以上の乗員がいるんだ。一刻も早く救助してやらねーと。」

 「つーか俺達出る幕無いんとちゃう?」

 「だから出動待機なんだろ。」

 「そっか。」

 「たた、火災が発生したらやべぇな。」

 「大量のアンモニアに引火してドカン。救助隊もろともあの世行きだな。」

 事故を起こしたのは、日本船籍、四井四菱造船(よついよつびしぞうせん)の第8光栄丸だいはちこうえいまる(12000トン)。情報が錯綜しているが、既に第5管区海上保安本部から巡視船やヘリが随時出動している。座礁理由は不明だが、現状燃料漏れや転覆の恐れは無いと言う状況だが油断は出来ない。。ただ、対象船舶がケミカルタンカーなだけに最悪のシナリオを想定しておかなければならなかった。幸い事故現場が大阪港から500メートルの浅瀬であった為、巡視船による、曳航が可能なのであった。

 「つーかさ、ケミカルタンカーがシージャックされたら、洒落にならねーよな?」

 「確かに。その時は長官も林次長もSST投入は渋るんとちゃう?」

 「何があってもSSTがポセイドンである事に変わりはいねぇからな。」

 「ノムケンさん、それ長官や林次長の前でも言えます?」

 「ボケ!言えるか。」

 「でもノムケンの言う通り、代わりはいねぇからな。そこはウィークポイントかもな。」

 「そんな事恐れて仕事が出来るか?死んじまったらその時はしょーがねーよ。悔いが残らぬ生き方をするしかないな。毎日。」

 「スーさんみたいに腹くくってる隊員の方が少ないだろ。」

 「仮にもセカンドユニットの副班長だぞ?当然だろ。」

 「恐れ入りました。」

 「おーい!出動待機解除だってよ。」

 「ケミカルタンカーの曳航えいこう上手く行ったみたいだな?」

 「特別警備隊のお陰で船員救助できたらしいぜ?」

 「それは特別警備隊を誉めるべきだろう。」

 「とは言え、あそこでSSTを投入したところで、状況の大幅な改善は望めなかっただろう。特別警備隊を投入した次長や長官の判断は間違いじゃない。」

 「SSTを投入したとしても解決出来ない案件もあるからな。今回は限界を越えて臨む案件ではなかったと言うだけの話だ。」

 「ま、健気に仕事をこなすのが一流のSST隊員でしょ?」

 「何が一流なのかはお前が決める事やない。」

 「例え世の中の人間がリミットオーバーしている我々SSTの戦いぶりを見ても、それが普通と思われる事もある。」

 「まぁ、ドローンやAIの代わりはあっても人間の代わりはいないからな。だから鍛えて訓練しているんじゃないか。」

 「確かにノムタカさんの意見は一理ありますね。」

 「時にはリミットオーバーしていても助けなくちゃならない場合もある。かもな。」

 「死、死にたくないっすよ。何て言いませんから。」

 「あのな、細谷?そんな事言ってたらSSTから外されるぞ?神隊長、そう言う所はめっちゃ厳しい人だし。」

 「えー!外されたくない。でも死ぬの怖い。」

 「この会話録音しておくべきだったぜ。」

 「とりあえず、通常任務に戻るぞ!」

 「はい!」

 こうしてSSTにとっては忙しくない待機ばかりの1日は終わった。しかし、この後に待ち受けるリミットオーバーな事態を想像できないセカンドユニットの面々であった。それは他ユニットも同じである。自らの限界など容易に想像出来るものではない。キャパオーバーになれば精強なSST隊員でもパニックになる。と、神も経験した事のない事態が待っていようとは誰も思っていなかったのであった。

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