第48話事の真偽
調査が本格的に進むと事の真偽が分かってきた。結果として矢部隆史はジャンと言うゲロッグのテロリストであり、ジャンは多額の金銭トラブルを起こしていた事も分かっていた。SSTでの給与等はゲロッグが実効支配する金融機関に送金されており、記録が残っていた。これでジャンがゲロッグのテロリストである事が証明された。
「なんだ、結局本物の矢部さんはとうの昔にジャンと言うゲロッグのテロリストと入れ替わってたのか…。」
「俺達騙されてたんやな。」
「どのみち矢部さんを語りSST隊長にまでなった、そのジャンと言うテロリストも死んじまったからな。証拠もほとんど残してないみたいだし、俺達の情報はゲロッグには筒抜けだったんだな。不覚にも。」
「本庁警備課としても、汚点だろうな?」
「まぁ、どんな理由にせよ、気付かなかった俺達にも責任の一端はあるよな。」
「矢部さんが入隊した頃はSSTの規模も、今より小さくセキュリティも甘かった様だな。矢部さんは優秀な学生で本庁からも信頼されていただけに、チェック機能も麻痺していたんだな。」
「調べによるとゲロッグも、当時は日本だけでなく諸外国に工作員を送り込み外貨の獲得と世界各国の戦力を確認していたらしい。」
「それを今ここで議論しても仕方無いと思いますが?」
「どんな形にせよ、俺達はゲロッグのテロリストと勤務してたのは紛れもない事実だ。」
「残念だがそれは認めざるを得ないな。」
と、SST隊員達は矢部の替え玉事件に無念さを滲ませていた。
「信じてたのによ!」
「いや、それ皆そうやろ?」
矢部の下で働いていたSST隊員達は、事の真偽が判明した今でも、その事実を受け入れ難かった。
「神隊長はそんな事無いですよね?」
「当たり前だ。まぁ、ジャン仕込みだがな。」
「でも神隊長は保大出のキャリアだから、いつまでもSSTの隊長ではいてくれませんよね?」
「まぁ、それはそうだな。巷ではSST改革をするって話も浮上している様だが。」
「え?マジすか?俺首をきられたら行くとこねーっすよ?」
「いや、そう言う事じゃなくて意識改革だろ?」
「再発防止っすよ。」
「保大出のキャリア組には関係無い話か?」
「ノムケン?軽はずみな事言ってると、セカンドユニットの班長職を解くぞ?その権限はあるんだからな?」
「あぁ、すみません。それだけは御勘弁を。」
「確かにスーさんの方が班長向いてるかもな?」
「貴史!実の弟でも言って良い事と悪い事があるぞ?」
「まぁ、待て。そう、あっちもこっちも人事をいじるべき時ではない。今は。いつ辞令が来てもおかしくはないんだ。ジャンの事は忘れろとは言わん。だがそれは心の中にしまっておけ。いいな?」
「そうですね!神隊長の言う通りですね。」
「いつまたゲロッグが工作に走るか分からん。総員24時間365日非番の時も気を抜くな!」
「はい!」
神隊長の言う通りであった。これ位の事で内部分裂する様では敵の思う壺である。例え情報が漏れていても、そんな事は関係無い。俺達はポセイドンズなんだ!殺れるものなら殺ってみろ!それに本庁警備課の話ではあるが、ジャンに指示をしていたゲロッグのテロリスト(幹部)は、全員殺害したとの事である。だから、必要以上に敵を恐れる事は無いと神隊長は主張した。




