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ポセイドンズ~海上保安庁特殊警備隊(SST)~  作者: 佐久間五十六


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第42話とある事件

 「ただいま。」

 「おかえり。いつ帰ったの?」

 「3日前。つーか、着信とLINEの数が尋常じゃねーんだけど?」

 神は結婚している妻の上本裕子(25歳)の待つ大阪の自宅に久しぶりに帰って来ていた。

 「スマホまた取り上げられたの?本当に心配したんだから。」

 「心配かけてごめんね。でもこれが俺の仕事だから。結婚する前にも話したけど、俺は特殊な海上保安官なんだ。サラリーマンの様に仕事の事は気軽に話は出来ないんだよ。幸いな事に裕子は5菅(第5管区海上保安本部)に勤める同じ海上保安官だ。SSTの事も理解しているはずだと思ってたけど?」

 「特殊な任務…。だったのね?」

 「ああ。詳しくは話せないけど。」

 3年前のある日の事だった。神が保大卒業を間近に控えた頃だろうか。神にとっては一種の事件であった。保大同期の上本裕子が突然神に告白して来たのである。その当時はまだSSTへ配属される事を知らず、生返事で交際を容認した。神は保大での寮生活に飽き飽きしていた為、裕子と結婚を前提に付き合う事にした。保大の卒業式辺りまでは本当にハッピーだったが、SSTへの内示が出た時は本当に落ち込んだ。厳しい訓練に厳しい行動制限。たまたま裕子が5菅に配属される事になり、営舎暮らしとはおさらば出来たが、保大卒の裕子もいつまでも同じ場所で働けない事は分かっていた。

 いつ配置換えになっても良いように神は結婚を急いだ。夫婦ならば転勤する可能性を少しは下げられると思っての行動であった。それから3年。裕子も2正に昇進して、神はSSTの隊長(1正)になった。夫婦の時間は少なかったが、二人の絆は固かった。たまに自宅(と言っても賃貸マンション)に帰ると、家守をしてくれている妻裕子が作ってくれる手料理に夫の神が舌鼓をうつ。そんな生活の繰り返しであった。

 だが、神がSSTの隊長になる頃には、月に2、3回しか家に帰れず、理解を示していた裕子の心情に変化の兆しが見える様になった。

 「海保ってこんなブラックなの?」

 と裕子は思った。そこで裕子は夫が働き過ぎて死ぬかもしれない事を上司に相談。切実な裕子の訴えは見事に働き方改革の追い風にのり、林次長の耳に入った。

 「何ィ?神、SSTはどうなっているんだ?」

 「24時間365日海の保安を保つ。それがSSTの理念ですが?」

 「そんな事は分かっている。しかしもっと休め。心身が健全でなければ正確な業務遂行は出来ない。君の妻の悲痛な訴えはよーく理解出来る。」

 「上本(裕子)がそんな事を訴えているのですか?」

 「これは命令だ神。特にだなSST出場の要件となる事案は滅多に起きない。4週8休を目安に業務をスリム化して無駄を省き法令にのっとり任務に当たれ。」

 「って事でSST全ユニットは非常時以外は8:00~17:00を勤務基本時間として残業はなし。土日休みとする。」

 「ちょっと、どうなっているんですか?仕事の鬼だった神隊長が働き方改革だなんて。」

 「家族サービスしようぜ?って簡単な話だ。まぁ、ちょっと俺もSSTのあしき伝統に縛られ過ぎていたかもしれないな多分。給料はその分だけ多少は減るかもしれないが、隊員のメンタルも休ませてやりたいからな。今までが不適切にも程があったんだ。」

 「勿論、非常時はフルスロットル火力全開でやる。と言う訳でシフト制にしたいと思う。」

 「SSTがシフト制…。時代の流れなのですかね?」

 「第5~第7ユニットは夜勤無いから。」

 「まぁ、ゲロッグの件も落ち着きましたからね。」

 「あぁ、まぁ、そう言う事だからよろしく。」

 「今追っている中国の動向はどうしましょう?」

 「全ユニットで協力して事にあたろう!」

 「了解しました‼」

 「ノムケン?ちゃんとシフトは全ユニットの班長と話し合い決めるんだぞ?」

 「え?隊長がシフト決めるのでは?」

 「生憎、俺は色々と忙しくてな。よろしく頼むわ。」

 「ノムケンさん、これは事件ですね?」

 「ああ、事件だゴッツ萎えるけどまぁやるしかないよね?」

 「良いじゃないすかそれ位。ど〜せ暇なんだし。」

 「何だその悪意に満ちた言い方は?まぁ、神隊長の命令なら仕方ない。」

 と簡単に諦めるノムケンであった。まぁ、それだけノムケンに対して神隊長の信頼が高いと言う何よりの証でもあった。

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