第40話忍び寄る影
「最近、中国海警局の船見かけないな?」
「何か不気味だよな。」
「ゲロッグの壊滅があってから、領海侵入は0だ。」
「とは言え、一過性のものだろう。」
「確かにな。」
「あれだけボコられたら流石の中国も凹むだろうな。」
「にしても、もっと反発する事が予想される。皆、気を抜かずに行こう!」
「はい‼」
SSTセカンドユニットは、大山の死から少しずつ立ち直りを見せている所であった。その頃、本庁では…。
「長官!それは本当ですか?」
「あぁ、確かな筋からの情報だ。」
「で、Xデーはいつなんですか?」
「それが分かれば苦労しないよ。」
「中国が日本に戦争をしかける!?」
「マジかよ?」
「それ絶対ヤバイ奴じゃないですか?」
「それを知った所で何も出来ないがな。てっきりネオゲロッグを使って来るかと思いきや、本丸のご登場か…。」
「海上保安庁としては警戒レベルを最大限にするしか策はない。自衛隊と協力して情報共有する他にはないな。」
「海保として知っている事は、自衛隊も把握しているだろうな…。何かあればいつでも特別警備隊とSSTの出動が出来る様に準備をしておいてくれ、林次長。」
「はい、了解しました。」
「え!?出動用意ですか?」
「はい。林次長はそう言っておられました。」
「何故?」
「詳しくはよく分かりませんでしたが、中国がどうとかと…。」
「はぁ?」
「神隊長ちょっと良いか?」
「はい。」
「実はな…。」
「はぁ、なるほど。そう言う事ですか。でもそう言う事は自衛隊に任せるべきでは?」
「まぁ、そうなんだがな。喜望峰での作戦で味をしめた山久長官が勝手に前のめりになっておられてな。」
「SSTの役割を全く理解していませんね。」
「あぁ、だから釘をさしておいたよ。深入りはしないようにと。」
「でも山久長官は乗り気なんですよね?」
「あぁ、かなり前のめりだ。」
「困りましたね?」
「海保としてはトップがこの様な状況では隊員の安全を担保出来ない。とは言え海保の能力を越えた警備行動は出来ませんからね。」
「流石にそこは山久長官も理解しているだろう。とは言え危険な兆候だな。」
「米国にも注意喚起はしているらしいんだがな。」
「分かりました。現場が混乱しないようにと出動準備を進めておきます。」
「そうしてくれると助かる。頼んだぞ、神隊長!」
「隊長?林次長がいらしてたみたいですが?」
「あぁ、気にするな。大した事じゃない。手を休めるな。」
「はい。林次長ってそんなに偉い方なんですか?」
「馬鹿!てめぇ次長は海保制服組のトップだぞ?」
「事実上のNo.2って事ですね?」
「貴様海保校で階級を習わなかったのか?」
「そりゃあ習いましたよ。でも次長クラスのエリートが自分の目の前にいたら緊張するじゃないですか。第一実感わかないっすよ?」
「それは私も同じだ。緊張するし、出来る事なら会いたくない。」
「全くそんな感じしませんでしたけど?」
「それだけSSTが重要な部隊だと言う事だ。つーか無駄話してないで仕事、仕事。」
「はーい。」
「ノムケン?」
「はい?」
「セカンドユニットの事は任せたぞ。」
「はい!」
階級上もう神はセカンドユニットの班長を兼務していない。それでも元いたセカンドユニットに愛着はある。SST隊長になってから数ヶ月。慣れない隊長職を務めていた。入隊からわずか2年。かけ上がるようにキャリアを積み上げてきた神海人だったが、それは運が良かっただけだと言う自覚はある。信じていた上官がなんとまさかのゲロッグの内通者。未だに信じられない。保大同期の大山尊も若くして死んでしまった。だが歩みを止める訳にはいかない。未来がどうなっても、死が待っていても…である。




